<2017年12月31日>2017年を振り返って(後半)

6月17日、女川町などの復旧・復興の状況を視察に訪れ、女川の須田善明町長や女川青年会議所の方にお話しを伺いました。
7月21日、エーゲ海沖でマグニチュード6.7の地震があり、津波も発生しました。この地震で、震源に近い島では崩れた建物の下敷きになって外国人2人が死亡したほか、合わせておよそ470人が負傷しました。
8月21日~インドネシアで国際津波シンポジウムが開催されました。今回は、1992年フローレス島地震・津波の調査研究の紹介を中心に、今年6月・7月に発生したギリシャ・トルコでの地震・津波の調査結果、ニュージーランド、ギリシャなどでの津波避難プログラム、インドネシア・ジャワ島南部の空港建設でのアセスメントなどが発表されました。
11月25日から開催された「世界防災フォーラム / 防災ダボス会議@仙台 2017」が、成功裏に閉幕。44の国と地域から947名と当初の見込みをはるかに上回る関係者が参加し、同時開催の「防災推進国民大会2017」「2017防災産業展in仙台」と合わせますと、国内外から述べ1万人以上の皆様が会場に足を運んでくださいました。多種多様な立場の関係者から活発かつ有意義な議論が交わされ、「仙台防災枠組2015-2030」の推進及び「BOSAI」を世界に発信することを掲げたキックオフにふさわしい成果が得られたように思います。アジア・環太平洋地域における定期的な国際会議開催の重要性に期待が寄せられ、2018年8月にスイスで開催される防災ダボス会議へ大きな弾みをつけることができました。

<2017年12月24日>2017年を振り返って(前半)

2月25日、大船渡津波伝承館が中心となり、防災・減災の活動に対するコンテスト「被災地と共に考える防災・減災コンテスト」を開催しました。
3月4日、東日本大震災のかたりつぎ、第6回「語りつぐ記憶」~朗読と音楽の夕べ~(朗読・竹下景子さん)。白河文化交流館コミネを会場に、福島県で初めて開催されました。
3月12日、仙台防災未来フォーラム
防災の担い手たちが自分たちの取り組みを共有・継承することで、新たなネットワークを生み出し、未来の防災に貢献することを目指して開催しています。東北大学「結プロジェクト」出前授業の3年間の成果報告として、代表校3校~亘理町荒浜小学校、岩沼市玉浦小学校、角田市東根小学校の皆さんが活動報告を行い、注目を集めました。
また、東日本大震災の経験を後世に伝え、活かすための小冊子「じぶん防災プロジェクト」の作成、青木孝文教授の研究室が中心となって進めてきた生体認証(バイオメトリクス認証)を活用した災害犠牲者の身元確認システムの開発、また、5月には、2008年に発生した四川省ぶん川(ぶんせん)地震への復旧・復興支援のために設立された四川大学・香港理工大学連携の災害復興管理学院を訪問しました。

<2017年12月17日>気仙沼浪板虎舞について

先月25日、第1回世界防災フォーラムの前日祭が東北大学川内萩ホールで開催されました。第1部では、被災地の若者たちからの活動報告と南海トラフへの備え、そして第2部では、伝統芸能と音楽を楽しんでいただきました。総合司会は、板橋恵子さんに担当頂きました。この第2部で紹介され大きな反響があったのが、気仙沼浪板虎舞でした。この浪板虎舞は、獅子舞と並ぶ伝統芸能で宮城県の無形民俗文化財に指定されています。笛と大小の太鼓が奏でるテンポのよい打囃子にあわせて、約15メートルの大梯子に、虎バカシ(虎の先導役)と3人立ちの虎が登って演じる勇壮な舞いが特徴です。
 東北地方での虎舞は、岩手県大船渡地域を中心とする三陸沿岸に広く伝承されていますが、とりわけ気仙沼市域には7つの虎舞が伝わっており、県内で最も虎舞が盛んな地域です。この虎舞は、浪板地区の郷社である飯綱神社の例祭に航海安全・大漁祈願として奉納されてきたもので、地域社会と結びついて発展してきた芸能です。そのため地区一体となった保存会が組織されており、次世代へしっかり継承されています。今回は、保存会の会員約30人に演じていただきました。笛と太鼓の打囃子に合わせ、虎が会場内を練り歩き、さらに、はしごに上り、「防災で世界に幸せを」と書いた垂れ幕を掲げて頂きました。小野寺優一会長は東日本大震災の津波で保存会の会員約20人が犠牲になったことを報告し、虎舞があったからこそ地域が復活できたと語られました。民俗芸能など文化の力が、復興に大きく寄与したことを痛感させられました。

<2017年12月10日>世界津波の日イベント:世界津波博物館会議とスペシャルゼミ in 本郷

11月5日、「世界津波の日」の普及啓発活動及び津波博物館の記録を後世に残すための連携を強化することを目的に、「明和の大津波」(1771年)で多くの犠牲者を出した沖縄県石垣島で、世界津波博物館会議が開催されました。津波による甚大な被害を受けた経験と教訓を後世に広く伝えるため、世界各地の津波博物館(Tsunami Museum)の関係者が集まりました。津波防災教育の拠点として博物館間の連携を図るとともに、過去に津波を始めとする自然災害の被害を受けた経験とその経験から得た教訓を共有し、これを後世に伝え、将来の津波に備えるための方途について議論を深めました。※太平洋津波博物館(アメリカ・ハワイ)、アチェ津波博物館(インドネシア)、パンガー県博物館(タイ)、南部テルワッタ村津波博物館(スリランカ)、リスボン市立博物館(ポルトガル)、ブルサ防災館(トルコ)及びチリ・国家緊急対策室(ONEMI)、シアクアラ大学(インドネシア)、国内博物館関係者らが参加。
もうひとつのイベントが、「津波防災スペシャルゼミin本郷~津波について学ぼう~」です。津波に対する正しい防災知識と理解・関心を深めるため、東京大学伊藤国際学術研究センター内の伊藤謝恩ホールで開催しました。このイベントでは、第一線の研究者を招き、最新の科学的研究成果を講義スタイルで披露し、津波に関する科学的な理解と関心を深めてもらいました。私が校長を務め、津波のメカニズム、津波に強い地域づくり、ビルド・バック・ベターなどについての講義を行いました。

<2017年12月3日>2017年のYUIプロジェクト活動についいて
地震津波リスク評価寄附研究部門プロジェクト講師 保田真理さんからの報告


今年度はこれまで岩手県、宮城県、福島県内21校を回りました。北は岩手県一戸市立一戸南小学校、南は福島県いわき市立江名小学校です。津波危険地域の学校だけではなく内陸の学校にも行くため、その地域ごとの地形が持っている自然災害リスクを説明して、一緒に災害による被害を減らす「減災」を考えます。これまでの災害の経験によって、防災意識が高い地域とそうでない地域があります。児童の皆さんはどこの地域も同じように授業の後は対策しようと意識が向上しますが、防災意識が高い地域ではその意識が持続する傾向があるのですが低い地位では減少して行く傾向があります。
家庭への働きかけも大切であることがわかります。家庭への働きかけのツールとして、減災ポケット(黄色いハンカチ)や防災減災スタンプラリーが活躍します。児童が聞いた話をそのまま伝えられなくても、2種類のツールを家族と一緒に見ることによって、学習内容を共有することができます。出前授業の中で日本だけではなく世界中の子供たちに「あなたの大切なものはなんですか?」と尋ねます。この答えがなんと世界共通なのです。全員が「家族」と答えます。児童の命、大切な家族をどんな災害からも守ってほしいと思います。

<2017年11月26日>防災3イベントの開催 本日、開催です。
防災のためにできること、一緒にかんがえませんか?


世界防災フォーラム、ぼうさいこくたい、2017防災産業展が仙台国際センターで同時開催されます。国内外から多数の防災の専門家が集まり、セッションや展示、プレゼンテーション等を通して、防災の世界的な課題に対する具体的な解決策を考えます。一般公開セッションはどなたでも無料で参加いただけます。誰でも楽しく防災を学べる機会(公開講演会、セッション、展示ブース、ポスター発表)になります。本日は、仙台市で作成した防災3イベントガイドブックを中心にご紹介します。
http://sendai-resilience.jp/bosai3events/
(1)国際センター駅においては、せんだい防災パビリオンが設置され、「青葉の風テラス」での特設ステージ(防災レンジャー、減災絵本リオン、ぼうさいダンス)、野外テラスでは防災カルタ、災害対応ゲーム「クロスロード」など
(2) 仙台市主催・共催セッション
http://sendai-resilience.jp/bosai3events/session/
○「より良い復興」の実践的な取り組みと今後の方向性
仙台防災枠組では、災害リスク削減等に向けた多様なステークホルダー(担い手)の関与の重要性が強調されるとともに「より良い復興(Build Back Better)」について考えます。
○ 市民協働と防災「多様な主体による協働を防災につなげ―平時からの取り組みのすすめ―」
国連の世界防災キャンペーンにおいて「市民力」が高く評価され、ロールモデル市に認定された仙台市。仙台の「市民力」は、東日本大震災からの復旧・復興の過程で最大限に発揮され、その後も進化・発展を続けています。
○ 心の復興を支える「文化力」の仕組みを探る ~心をつなぎ、力をつなぐ~
文化芸術による被災地支援の代表的事例から、これらが果たしてきた社会的役割を検証するとともに、心の復興に求められる長期にわたる継続的な支援を可能とする社会や組織の仕組みについて考えます。
(3)指定国立大学の災害科学分野キックオフイベント
「災害科学の学際研究の推進と国際社会への貢献」(東北大学-APRUが主催)総長、原理事、海外関係機関、大学の方々も参加される予定です。

<2017年11月19日>世界防災フォーラムおよび前日祭について

世界防災フォーラムがいよいよ25日前日祭、26日から28日までの4日間で開催されます。会場は仙台国際センターで、26日及び27日はぼうさいこくたい、2017防災産業展も同時開催になります。国内外から延べ2万人を越える参加が見込まれます。
 世界防災フォーラムは2015年国連防災世界会議後に提唱された仙台防災枠組の推進を目指す国際会議で、今年初めての開催です。スイスのダボス防災会議と隔年に開催する定期的な会議となりました。約50のセッション、100近くのポスター発表、15の展示、26のFlashTalk(ミニプレゼンテーション)発表が予定されています。
 ぼうさいこくたいは正式には防災推進国民大会2017と言われ、昨年第1回が東大本郷キャンパスで開催されました。今年のテーマは、「大規模災害に備える~みんなの連携が力になる防災」であり、小テーマとして、①地域での連携、②防災について学ぶ、③誰もが参加する、を掲げています。
 2017防災産業展は、日刊工業新聞が主催で、企業・大学など約60団体による合計100以上のブースが出展し、多様な災害に備えるための最新の防災技術や製品に触れることができます。出展者によるワークショップ・セミナーも開催。

[前日祭](11/25(土)13:00-17:00 川内萩ホール)
「被災地からの国内外発信」に関する目玉イベントです。一部は青少年からのメッセージ、第2部はSENDAI BOSAI文化祭です。多くの市民も参加するできるイベントで、被災地の復興や一体感を感じられる機会となるかと思います。
http://www.kahoku.co.jp/imadeki-bosai/
[合同オープニング](11/26(日)10:00-12:00 国際センター会議棟大ホール)
政府や県・市などからの要人が参加し、ぼうさいこくたいとWBFのオープニングが開催されます。「大規模災害に備える連携」と題したハイレベル・パネルディスカッションが行われます。
[WBFオープニング](11/26(日)12:10-12:50 国際センター会議棟大ホール)
合同オープニングに続き、フォーラムのオープニングを行います。里見総長による開会宣言に続き、フォーラム実行委員長や国連事務総長特別代表(防災担当)ロバート・グラッサー氏による挨拶、パネルディスカッション(ユネスコ、世界銀行、国際赤十字連盟、グローバルリスクフォーラムの幹部、仙台市長等が参加予定)が予定されています。

<2017年11月12日>東北大学が指定大学法人の認定を受けました

 文部科学省は、国際的な競争環境の中で世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人を「指定国立大学法人」として定める制度を創設しました。国立大学法人法の一部を改正する法律によるものです。全国には、各都道府県に1大学を置き、現在86の国立大学があります。指定国立大学法人制度は、日本の大学における教育研究水準の向上とイノベーション創出を図ることを目的にしています。文部科学省は、6月30日、東北大学、東京大学、京都大学の3法人を指定したことを発表しました。「研究力」「社会との連携」「国際協働」の3つの領域において、すでに国内最高水準に位置し、かつ大学の将来構想とその構想を実現するための道筋や必要な期間を明確化することが要件でした。東北大学は、「材料分野」「スピントロニクス」「災害科学」「未来型医療」という強い分野を確実に伸ばし、段階的に新分野を育てる戦略が明確となっている点などが評価されました。この中で、災害科学は、今後期待される研究分野になります。ここでは、災害対応サイクル理論を適用することで4つの科学分野を融合させ、学内での学際連携を基盤とした「災害科学」の学問研究領域の創成、さらに、災害科学研究ネットワークを発展させ、国際共同研究の強化や国際学術会議の開催を通じて「災害科学」の体系化を図り、世界をリードする国際的なジャーナルを創刊したいと考えています。また、国連開発計画と連携して設立した「災害害統計グローバルセンター」等の活動を通じ、世界各地の防災・減災の現状を把握した上で、世界の防災能力の向上に貢献し、さらに、世界防災フォーラム等で国連機関や国際社会と議論し、数値指標による評価を通じたレジリエンス社会の構築を先導したいと思っています。

<2017年11月5日>2度目の世界津波の日
津波工学研究分野准教授 サッパシー・アナワット先生からの報告


11月5日が世界津波の日に制定されて2年目、今回はこの世界津波の日に関する活動を紹介します。
1) UNISDR(国連国際防災戦略事務局):昨年は過去400年間の地震に基づく津波ハザードを評価しましたが、今年は空白域による津波ハザードが加えられました。これによって、たとえば、これまで遠地津波により被災しているニュージーランドでは、実は、近い場所での地震発生が懸念され、すぐに津波が来てしまう危険性が示されました。また、最近メキシコやトルコ等で発生した津波は、この地震空白域の近くにあることもわかりました。
2) UNDP(国連開発計画):日本政府のサポートを受けて、UNDP経由で東南アジア・太平洋諸島諸国における津波避難訓練及び津波防災教育を実施する活動を行っています。来年までに、対象18カ国で各国5カ所(合計90カ所)で実施することを目的としています。私は、妥当な対象地域・学校を選択すること(来年は津波浸水マップ作成を支援する予定)、津波防災教育の教材の作成に関して支援しており、現在はバリ島等、インドネシアを中心に活動を行っています。
3) 世界津波博物館会議:世界津波の日に、沖縄県石垣島で開催されます。1771年に発生した明和大津波を経験し、沖縄には津波石、津波に関する伝承等が残されています。日本からは和歌山県広川町(稲村の火・世界津波の日の由来場所)、北海道奥尻島、岩手県大船渡市、宮城県気仙沼市・東松島市、兵庫県神戸市・淡路市、海外からはアメリカ、インドネシア、タイ、スリランカ、ポルトガル、メキシコ、トルコ、チリの博物館が参加することになっています。会議では各博物館からの報告後に、津波の恐怖を伝える方法、野外博物館、データベース、博物館の役割等について議論が行われる予定です。

<2017年10月29日>日仏防災イベント週間について②

10月5日からは、会場を仙台に移し、災害科学国際研究所多目的ホールで災害研主催の最後のセッション“Session 4 Crisis management and reconstruction/BBB (build back better)”が開催されました。このセッションでは私が司会を務め、ボレー・セバスチャン助教(災害アーカイブの役割)、東北大学名誉野家啓一名誉教授(防災と宗教の観点)、福島大学理事・副学長小沢教授(福島県の復興)、アスヘノキボウ代表理事小松洋介氏(女川町の復興)、東北大学地域復興プロジェクト“HARU”(学生ボランティア活動;石巻や山元町)による発表が行われました。その後のサッパシー准教授による討論では日仏の学生交流、福島と女川の復興について教訓の共有、これからの連携・交流について意見交換と議論を行いました。各地域や活動での課題を解決するために、互いに連携し、協力することの重要性が議論されました。さらに、6日には、仙台平野の津波被災地巡検が行われました。サッパシー准教授が巡検参加者を案内し、各訪問場所について説明しました。巡検のルートは多賀城市末の松山~仙台市津波避難タワー~旧荒浜小学校~荒浜海岸~名取市閖上地区~岩沼市千年希望の丘でした。巡検参加者は理工学的及び歴史・社会学的な観点で見学し、都市型津波の特徴及び多重防御対策、現在の復興状況に関しての知見を被災地で得られ、これからの防災研究についても現場で意見交換できる機会が設けられました。
詳細:http://www.fri.niche.tohoku.ac.jp/workshop2017/index.html
https://www.mfjtokyo.or.jp/events/co-sponsored/20171002.html

<2017年10月22日>日仏防災イベント週間について

 今月2~6日、東京のフランス大使館と日仏会館で「日仏防災イベント週間」が開催されました。東北大学としても災害科学国際研究所が中心となる3つの主催セッションを設け“Scientific Advancement for Sendai Framework for Disaster Risk Reduction Contribution from Tohoku University”と題して、日仏会館と災害科学国際研究所で開催しました。
 日本やフランスを始め世界各地では、自然災害の危険性が人々や発電所、交通網などの重要インフラ設備を脅かす脅威となっています。災害を予測・管理・最小化するためには、科学・技術を通じた日仏両国の経験と教訓を共有化させた上での協力が必要となります。さらに、2015年3月に仙台で行われた第3回国連防災世界会議では、「仙台防災枠組2015-2030」が採択され、国際的な防災指針をまとめる上で重要なステップとなりました。そこで、在日フランス大使館は、災害科学国際研究所の協力の下、この防災イベント週間を開催することにしたものです。様々な領域の日仏研究者が一堂に会する防災関係としては初めての企画になりました。その一環としてTsunami and DRR Innovation Workshop2017も開催されました。2012年から始まったこのWSは、今回で4回目を迎え、東北大、リヨン大学を中心として日仏の専門家が防災・減災に向けてのディスカッションを続けています。今回は、4つのセッションで、15発表と約80名の参加をいただきました。
http://www.fri.niche.tohoku.ac.jp/workshop2017/program.html

<2017年10月15日>オンライン講義MOOCについて

オンライン講義MOOC(massive open online course)をご存じでしょうか?
大学や教育期機関が提供するもので、基本的に無料であり、国内外で関心を集めています。東北大でも昨年、高度教養シリーズとして、「死生観」「オーロラ」の二つのテーマで開講しましたが、来年2月には、防災にも関係する講義が始まります。
「東日本大震災の教訓を活かした実践的防災学へのアプローチ~災害科学の役割」として、災害科学国際研究所の今村文彦、後藤和久、佐藤翔輔、安倍祥が講師を務めます。
講義では、東日本大震災における調査研究、復興事業への取り組みから得られる知見や、世界をフィールドとした災害科学研究の成果を社会に組み込み、複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し、苦難を乗り越え、教訓を活かしていく社会システムを構築するための試行を紹介します。コースは4つの構成で形成されています。第一週では,事前の取組の紹介も入れた被害実態と今後の教訓を概説、第二週では、人間・社会科学的な側面を入れた被災地での復旧と復興を紹介する。第三週で、自然科学と防災への役割に視点を置きながら地震・津波のメカニズムと過去の履歴さらに将来予測についての研究事例を紹介する。最後に、仙台市で開催した2015年国連防災世界会議での議論と仙台防災枠組の取組、防災啓発・防災教育の現状、記録・伝承にいどむ取組、被災地などでの避難訓練事例などを紹介して実践的防災学の事例と将来を議論する予定です。https://mooc.tohoku.ac.jp/contents/

<2017年10月8日>津波時の自動車避難といわき市の取り組み

地震・津波リスク評価寄附研究部門 安倍祥さんからの報告

 2016年11月の福島県沖地震では、発生直後に津波警報が発表され、テレビやラジオでは「今すぐ逃げてください!」「津波がすぐ来る」のように、緊迫した強い表現で避難を呼びかけました。その結果、車で避難する人が多く、各所で渋滞が発生しました。この渋滞を経験した福島県いわき市では、避難に関する検討会議を重ねて、津波時は「原則徒歩」とした一方、高齢者や障害者等の避難には車が使えるというガイドラインをまとめました。先月、ガイドラインに沿って、徒歩と車による避難訓練が行われ、住民は徒歩の避難に協力して、車の利用が最小限に抑えられました。避難の際に支援が必要な人を助け合えるように、今後は小さな地域単位で話し合い、避難のローカル・ルールの検討が進められるということです。

<2017年10月1日>宮城県津波対策ガイドラインについて

平成15年に宮城県では、沿岸市町と地域住民による津波避難計画の策定、沿岸市町の避難体制の促進、津波防災意識の高揚、津波防災情報等の収集・伝達体制のために、「津波対策ガイドライン」を作成しました。これに基づき、平成17年には旧志津川町でユニークな津波誘導標識の作成、平成22年には、GPS波浪計などのネットワーク化などの検討をしていましたが、その翌年の東日本大震災の経験を受けて、沿岸市町における津波避難計画、地域ごとの津波避難計画などの改定が策定されました。特に、避難の方法は原則徒歩とし「徒歩による避難が可能な方は、自動車で避難しないこと」を徹底することが盛り込まれました。また、昨年の台風10号や福島県沖地震・津波などの実態を踏まえて、避難準備情報、避難指示、避難勧告という用語がわかりにくいという議論があり、今年1月には、内閣府で避難勧告等に関するガイドラインが策定されました。ここでは避難指示を「避難指示(緊急)」、避難準備情報を「避難準備・高齢者等避難開始」などと変更しています。さらに、津波の場合(大津波警報・津波警報・津波注意報が発表された場合)には、危険な地域からの一刻も早い避難が必要であることから、避難準備・高齢者等避難開始、避難勧告は発令せず、基本的には避難指示(緊急)のみを発令するという内容です。しかし、避難指示(緊急)のみの場合には、オオカミ少年効果も懸念されるため、宮城県は、自治体や関係者にアンケートを取るなど、現状や課題の整理を行っています。

<2017年9月24日>災害科学とメディアに関するシンポジウムについて

「国立大学附置研・センター長公開シンポジウム~枠を超えた、知の冒険」
http://shochou-kaigi.org
テーマ:災害科学とメディア~大災害時代を生き抜くために
日時:平成29年10月7日(土)10:30~13:30(10時開場)
場所:東北大学片平キャンパス さくらホール2階
趣旨:21世紀に入り地震・津波、豪雨、高潮などにより多大な災害が生じ地域社会に大きな影響を与えている。地震活動の活発化、気候変動の激化に加えて、社会生活の変化を反映し被害像も変貌し、人類の脅威であり続けている。この中で災害を軽減するためには、科学的評価や予測技術を向上することに加え、過去の災害文化の継承、災害アーカイブの整備、市民の防災意識向上やリスク認知、さらにはリアルタイムなどの災害情報の活用を進めなければならない。東日本大震災などを経験した我が国での災害科学とメディアの役割を整理し、将来への協働のあり方を議論したい。

御厨貴(みくりやたかし)東京大学先端科学技術研究センター客員教授の基調講演(「歴史と災害-アーカイブの役割(仮)」)のあと、①災害科学とメディアへの期待と課題、②課題解決のための提案、③次世代に繋ぐために(教育・人材育成)をテーマにパネルディスカッションを行います。
コーディネータ:京都大学防災研究所教授 矢守克也
パネリスト:
 東京大学地震研究所教授(日本地震学会前会長)加藤照之
 新潟大学災害・復興科学研究所教授 福岡浩
 東北大学災害科学国際研究所教授 今村文彦
 NHK放送文化研究所 山口勝
 毎日新聞科学環境部 飯田和樹

<2017年9月17日>1992年に発生した2つの地震・津波について

 『1992年9月ニカラグア地震・津波』
9月2日にニカラグアで津波が発生し、170人の犠牲者が出ました。沖合い約200kmにあるプレート境界で地震(Ms=7.2)が発生したことになります。この地震は津波地震と呼ばれるものであり、陸上部での震度は1~2でしたが、最大10m、平均4~5mの津波が来襲してきたのです。日本から6名の調査団が派遣されました。阿部邦明教授が団長、私も参加しました。津波の高さ、被害の状況について調査、現地の方からのヒアリングによると、津波地震の特徴として、破壊が1分以上かけて、ゆっくりと起こり、続いたそうです。プレート境界に付加帯と呼ばれる海底泥の堆積層があることが原因と言われています。しかしながら、そのメカニズムは解明されている訳ではありません。過去、明治三陸津波(1896)、アリューシャン津波(1946)、根室沖津波(1975)がありますが、津波地震はこれまでに6個しか確定していないためどういう場所で起こりやすいか特定できていないためです。

 『1992年12月フローレス地震・津波(インドネシア)』
12月12日にインドネシア東部のフローレス島で大規模な地震(Ms=7.5)と津波が発生し、1,713名の犠牲者が出てしまいました。津波地震であるニカラグア地震よりはるかに揺れは大きかったようです。震源はインド-オーストラリア・プレートのユーラシアプレート下部に沈み込む(Java Trench)より約100kmユーラシアプレート側(北側)でした。孤島背後でのイベントとして日本海中部地震の発生機構と類似しています。島の北東部を中心に津波が襲い、津波の高さは、最大26m(クロコ)に達した。また、他の地域での平均の高さは2~5m程度でした。バビ島では島の裏側で局所的に津波が大きくなった(高さ7.2m)。島の裏側は本来、高潮や波浪に対して安全な場所であったため、集落が固まっていましたが、この津波で被害が大きくなったようです。政府はこの地区の住民を移住させましたが、残念ながら、2年後に別の所から人(津波を経験していない)が移り住んでいます。

<2017年9月10日>インドネシアで開催された国際津波シンポジウムについて
本日は、8月に開催された国際津波シンポジウムについてお話し致します。このシンポジウムは4年に一度開催されていますが、間に関連の会議がありますので、2年に一度の開催になります。IUGG(国際測地学・地球物理学連合)は8つの協会と3つの委員会から構成され、それぞれの協会で国際学会を開催しています。1960年フィンランドのヘルシンキで津波委員会が承認されました。「津波」という言葉が国際語になった訳です。1961年には、第1回国際津波シンポジウム(ITS)がホノルルで開かれました。そこからIUGGの総会時も含め、2年に1回の割で地震津波の多い関係国で開かれています。津波委員会は、津波関係研究の推進、テーマを持ったワーキンググループの設置、このような国際会議の開催に加え、地震・津波災害が発生した場合のコーディネーションを行っています。現在、委員長は、米国NOAAのTitove博士、副委員長は私と中東工科大学のAhmet教授が務めています。今回は16回目(56年)になります。前回のITSは4年前にトルコ・イズミットで、2年前にIUGG総会はプラハで開催されました。今回は、8月21-26日に開催され、会議はインドネシアのバリ島で3日間、その後、フローレス島への3日間の巡検となりました。25年前の1992年にフローレス島で大きな地震および津波が発生しましたので、現在までの被災地の復興や現在の防災や啓発・教育活動の現状を視察する目的でした。私からキーノートレクチャーとしてフローレス島地震・津波の調査研究の紹介をし、さらに、今年6月・7月に発生したギリシャ・トルコでの地震・津波の調査結果、ニュージーランド、ギリシャなどでの津波避難プログラム、インドネシア・ジャワ島南部で空港建設でのアセスメントなどが発表されました。空港予定地には地震空白地域があり、津波のリスクが懸念されています。また、数百年前の津波堆積物も発見されています。東日本大震災では仙台空港も被災しているため、被害状況、復旧、今後の津波対策などについて共有化していきたいと思います。
IUGG津波委員会 http://research.jisao.washington.edu/tsunamicommission/

<2017年9月3日>将来の地震・津波対応について―特に南海トラフ地震
9月1日は防災の日でありました。この日は、台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備することとし、防災の日を含む1週間を防災週間として、避難訓練、講演会・シンポジウムなどが開催されています。 現在、我が国で最も大きな影響を与える災害と考えられているのが、南海トラフ沿いの地震および津波で、これについても様々な対応や対策が検討されています。その中の1つが、「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」であります。平成28年9月9日に始まり、第6回の平成29年7月3日まで検討が進められています。目的としては、すでにこの地震に関連し地殻変動等の観測が実施されていますが、そのデータと評価に基づいて、防災・減災のために、大地震発生前にどのような防災対応を実施すべきであるのか等について検討をすることです。
先日、以下の典型的な4つのケースを想定し、現在の科学的知見をもって評価できる内容について検証されていますので紹介したいと思います。
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taio_wg/pdf/h281122shiryo2-2.pdf
(ケース1) 南海トラフの東側の領域で大規模地震が発生し、西側の領域でも大規模地震の発生が懸念される場合 → 西側の領域の大規模地震の発生について、その規模や発生時期等について確度の高い予測は困難であるが、発生可能性については定量的な評価が可能であり、統計的な経験式に基づく確率は東側の領域の大規模地震の発生から3日以内に10%程度、4日から7日以内に2%程度。
(ケース2) 大規模地震と比べてひと回り小さい規模の地震が発生し、より大規模な地震の発生が懸念される場合 → より大規模な地震の発生について、その規模や発生時期等について確度の高い予測は困難であるが、発生可能性については定量的な評価が可能であり、統計的な経験式に基づく確率は、最初の対象地震の発生から7日以内に2%程度。
(ケース3) 2011年の東北地方太平洋沖地震に先行して観測された現象と同様の現象が多項目で観測され、大規模地震の発生が懸念される場合 → 長期的な観点から評価されるものが多く、大規模地震の発生につながると直ちに判断できない。
(ケース4) プレート境界面でのすべりが観測され、大規模地震の発生が懸念される場合 → 現在の科学的知見からは、地震発生の危険性が相対的に高まっているといった評価はできるが、現時点において大規模地震の発生の可能性を定量的に評価する手法や基準はない。

<2017年8月27日>鹿児島での地震活動について
鹿児島湾では、昨年12月から地震活動がみられ、消長を繰り返しながら今に至っていますが、7月11日のM5.3の地震は、震源の深さが10kmと浅いことから大きな揺れを伴いました。鹿児島市で震度5強を観測したのをはじめ、指宿市、南九州市で震度5弱の揺れを観測しました。土砂崩れによる被害や交通機関など影響が出ました。火山活動との関連については、周辺の火山活動に変化は見られず、また、火山に関連する深さ1~2km程度の非常に浅い震源の地震は発生していないなど、火山活動に直接影響を及ぼすデータは見られていないことから、現段階では火山と直接的に関係しているとは考えられていません。7月以外にも、5月に南の領域内で同様の地震活動が見られるなど、この付近は地震の発生する可能性のある場所であり、その状況下で全体の地震活動が活発になったことにより活動が目立ってきたという傾向はあります。鹿児島県に被害を及ぼす地震は、主に陸域や沿岸部の浅い場所で発生する地震と、日向灘や種子島、奄美大島の東方沖の海域での地震と、南海トラフ沿いの巨大地震です。 島嶼部(とうしょうぶ)を除く鹿児島県での地震は、薩摩半島など県西部で多く発生しています。ここでは九州地方で最大といわれる1914年の桜島の地震(M7.1)が発生、1997年3月26日にはM6.6の地震が発生し、薩摩川内市、阿久根市及びさつま町宮之城で震度5強を観測し、負傷者31名、住家全壊4棟などの被害がでました。その後、4月3日に薩摩川内市で震度5強の最大余震が発生し、負傷者5名、住家半壊6棟などの被害が生じました。

<2017年8月20日>トルコでの地震・津波の危険性
先週、エーゲ海沖で地震・津波について報告いたしましたが、トルコにおいて、地震および津波の危険性が高い地域として、北アナトリア断層帯があります。1939年に東端部で地震が発生したのを皮切りに断層破壊が少しずつ進行しているのです。地震の発生間隔やマグニチュードに規則性はありませんが、確実に震源は西へ移動していると報告されています。最近では、1999年にイズミットでマグニチュード7.4の大地震が発生し、約1万7000人以上が犠牲となったのです。この時、黒海とエーゲ海の間に位置するマルマラ海では小さな津波も発生しました。今後、地震発動はさらに西側に移動すると考えられ、次の地震が発生すれば、前回よりも大きな津波が沿岸のイスタンブールを襲う可能性が高いとの指摘があります。そのため、我が国でもSATREPSというJICAとJSTが協力した『マルマラ海域の地震・津波災害軽減とトルコの防災教育』のプロジェクトが活動しています。「地震の空白域」マルマラ海を調査し、巨大地震・津波に強い社会を実現するための国際協力事業です。ここでは、海底観測等の地震と津波研究成果をシミュレーションで“見える化”する研究も実施され、注目されています。海底や周辺地域での地震観測と、シミュレーションによる災害リスクの可視化を行い、地方自治体等との「地域防災コミュニティ」構築やメディアを通じた情報発信等により、社会に防災対策の意識を根付かせる狙いです。さらに、科学的根拠を基に防災教育を進展させ、その成果を日本の地震研究にも応用可能としたいという計画です。

<2017年8月13日>先月発生したエーゲ海沖での地震・津波について
エーゲ海にあるトルコとギリシャの国境を挟んだ付近で、地震と津波が発生しました。この地域は、大陸側のアフリカプレートがエーゲ海プレートに沈み込む断層帯で、クレタ島・ロドス島などギリシャ南部、トルコ沿岸へと伸びる弓のような姿からヘレニックアークと呼ばれている地震帯があります。地中海における津波の発生頻度は100年に平均1~2回であり、対策は非常に脆弱であります。地中海でも特にエーゲ海での人口は沿岸部に集中しており、夏には多数の観光客が訪れています。その付近で、先月7月21日午前1時半ごろ、マグニチュード6.7の地震があり、津波も発生しました。地震のメカニズムはプレート境界型です。震源の深さはおよそ10キロと推定されています。この地震により、ギリシャ南東部のコス島では多くの建物が崩れ、観光で訪れていたトルコ人の男性とスウェーデン人の男性の2人が建物の下敷きになって死亡したほか、あわせておよそ470人のけが人が出ました。ギリシャ気象当局は島の沿岸部で高さおよそ60センチの津波を観測したと発表しましたが、津波の専門家が現地を調査した結果、最大の津波遡上高さは最も被害が出たGumbet湾で1.7mであったそうです。浸水範囲も沿岸から280m奧で痕跡が確認されています。甚大な被害ではありませんでしたが、船舶が沈没したり、車・バスなどが流されたりしていました。また、地震による建物の被害や液状化による陥没も報告されています。今月21日から、インドネシア(バリ島)で開催される国際津波シンポジウムで、この地震津波に関する特別セッションが予定され、警報や避難情報、さらには、直接被害・間接被害、避難状況などの報告が行われます。

エーゲ海地震津波_メディア情報http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170721/k10011067531000.html

<2017年8月6日>書籍『実践 地域防災力の強化』の紹介
東北大学で法学研究科公共政策大学院と災害科学国際研究所の教授を兼務なさっている島田明夫先生が、7月に『実践 地域防災力の強化―東日本大震災の教訓と課題―』という書籍を発刊されました。大学院WORKSHOPプロジェクトを実施する中で、精力的にヒアリングを実施し課題を整理、さらに、運用の改善、制度の改正を提案してこられましたが、熊本地震において十分教訓が活かされていない現状に鑑み、自治体職員などが理解しやすい書籍が必要なのではないかと、出版を決意されたということです。東日本大震災から6年、そこから浮かび上がった課題に対して自治体の新しい災害対策を提案、得られた貴重な経験を、①『実情』②『ヒアリング結果』③『教訓』④『課題』に見やすく整理されています。また、実際にそれらを踏まえて改定された「加美町地域防災計画」を例に、自治体が行うべき制度や防災計画などの改善方法を詳細に解説しています。災害発生時の応急対策から復旧・復興に向けた取り組みまでを網羅した、自治体の防災力向上に役立つ実践的なマニュアルです。
第1章 災害応急―東日本大震災における応急対策
第2章 災害復旧―東日本大震災における復旧対策
第3章 災害復興・予防―東日本大震災における復興・予防対策
第4章 地域防災力の強化―東日本大震災を契機とした地域防災力の強化
出版社:ぎょうせい

<2017年7月30日>海岸林の津波減災効果に関する研究について
(災害科学国際研究所・地震津波リスク評価寄附研究部門 林晃大さんの報告)
東日本大震災において津波による被害を受けた仙台平野沿岸域の建物および海岸林を対象に、海岸林の存在が建物被害程度へ及ぼすプラスマイナス双方を含む影響を検討するために、建物被災区分と海岸林の林帯幅との関係性を評価しました。海岸林の林帯幅と建物の被災区分(全壊、半壊、一部損壊など)の関係性を、仙台平野沿岸部の仙台市~相馬市の7市町の建物約44,000棟余りを対象に、構造種別(木造、鉄筋コンクリート造、など)・汀線までの距離・標高などを考慮して整理しました。 結果として、
(1)海岸林の林帯幅が広い箇所の背後地に存在する建物ほど、全壊(流失)・全壊といった建物の再使用が不可能と判定される建物数の割合が減少し、軽度な被災区分と判定された建物の割合が増加する傾向にあることがわかりました。
(2)海岸林の林帯幅とその背後地における建物被災区分の関係を統計的に検討したところ、林帯幅が広い地域で海岸林の存在による減災効果が現れていることを示しました。林帯幅が広く確保できている箇所では、津波流体力の軽減による建物被害程度の軽減効果の影響を受けていると考えられます。
(3)一方、比較的海岸線から近く(0.5~1.0 kmほどの距離)、林帯の幅が狭い(0~200m)地域では、海岸林の流失に伴う流木や、流失家屋等による漂流物が建物被害程度へ影響しているケースも散見されます。
といった知見が得られました。今後は海岸林の津波減災効果の詳細を把握するべく、津波に対する多重防御手段における海岸林の津波防災・減災施設としての影響度の大きさや、今回得られた海岸林の林帯幅と建物被害の関連性を用いて、国内外の他地域における減災効果の検討を実施する予定です。

<2017年7月23日>女川町の復興について(2)
須田善明女川町長へのインタビュー「あたらしいスタートが世界一生まれる町へ。」(女川町まちなか交流館にて収録)

<2017年7月16日>女川町の被害実態と復旧・復興について
女川町は牡鹿半島に位置し、その中心市街地は西に万石浦、東に女川湾にはさまれ、さらに、周辺部の海岸や島嶼に小規模な漁村が散在しています。この地域では、過去、昭和三陸津波の経験があったり、1960年チリ津波の際にも浸水し被害を出しています。東日本大震災では、津波浸水区域が300ha(3k㎡)、被害区域は240ha(2.4k㎡)にも達しました。女川町の総面積は65.79km2ですので、それぞれ約4.5%、約3.6%にあたることになります。人的被害では、2016年3月時点で、死者613人、行方不明者259人計872人、女川の人口が10,051人ですので、割合としては8.68%にも達しました。死亡率=(死者数+不明者数)/(死者数+不明者数+避難者数)×100としたとき、女川町では55.9%にも達し、東日本大震災で最も高い死亡率となりました。津波の高さは公式には14.8mですが、局所的には30mにも達しました。また、住家・非住家あわせて6511棟のうち、全壊は4432棟、全体の68.1%と7割近くの建造物が全壊してしまいました。このように甚大な被害を出した女川町では、震災から一日も早く復興し、町民が安心して暮らすことができるよう、復興計画を策定し、街づくりを進めています。中心部に町役場等の公共施設や、高齢者が利用する公益施設の集約拠点を整備、女川駅周辺や国道398号沿いには商業・業務エリアを設け、居住地は安全な高台に整備します。女川駅周辺部は女川の玄関口にふさわしい象徴的な空間をめざしています。駅前広場の整備に加え、新たに計画されているプロムナード沿いにテナント型商店街、物産センター、まちづくり拠点施設を整備しています。女川フューチャーセンター、シーパルピア女川、地元市場ハマテラス、そしてまちなか交流館があります。さらに、沿岸部にはメモリアルゾーンを設置し、被災した経験を継承する役割を持たせるそうです。

<2017年7月9日>北海道南西沖地震津波から24年
1993年7月12日午後10時17分12秒、北海道奥尻郡奥尻町北方沖の日本海海底で発生した地震になります。マグニチュードは7.8、推定震度6(烈震)で、日本海側で発生した地震としては最大規模になりました。震源に近い奥尻島を中心に、地滑り、火災や津波で大きな被害を出し、死者202人、行方不明者28人を出しました。さらに、ロシアでも行方不明者3人を出しています。震源域が島のすぐ近くであったため地震発生から数分で奥尻島(青苗など)に津波が到達したことがこの地震の特徴となりました。当時、青苗地区には4.5m程の防潮堤(日本海中部地震津波の後に設置)がありましたが、津波は軽々乗り越えました。また、島の対岸にある北海道南西岸の瀬棚町(現・せたな町)や大成町に到達しました。遡上高は、震源からの津波の直撃を受けた島の西側で特に高く、藻内地区で最大遡上高31.7mを記録、奥尻島の各地区における津波の高さは、稲穂地区で8.5m、奥尻地区で3.5m、初松前地区で16.8mに達しました。
北海道では、今年2月9日に、津波防災地域づくりに関する法律に基づき、北海道日本海沿岸の津波浸水想定(最大クラスの津波を想定して、その津波があった場合に想定される浸水の区域及び水深を設定するもの)を設定しました。津波浸水予測図では、最大津波高や津波浸水面積が多くの自治体で2010年の道予測の2倍以上となり、自治体の担当者から戸惑いの声も上がりました。国が対象外とした断層を独自に加えて津波想定を出したことに、過小評価しない姿勢が表れています。そのために、津波到達までかなり短時間のため、避難が難しい地域の対策が重要になります。今後は、既存の対策をステップアップさせることが必要であると思います。

<2017年7月2日>グリーンランドでの地滑り性(?)津波
デンマーク国グリーンランド西部で6月17日夜、小さな島の海岸沿いにあるヌーガーツィアクという村に津波のような波が押し寄せ、現地の警察によりますと、これまでに住民4人の行方がわからなくなっています。デンマークの地質調査所や現地からの情報によると、地震が発生した後に地滑りが発生し、その波が引き起こされたと見ていて、今後も続くおそれがあることから現地の警察が住民に避難を呼びかけていました。但し、地震の規模はM4と推定され、大変に小さなものでした。デンマーク軍の現地の司令部は今回の波に関連すると見られる地滑りの跡を見つけたとして、フェイスブック上に写真を投稿し、山肌が1100メートルにわたって大きく崩れているとしています。一部は海岸にも押し寄せたとの報告もあります。2001年にも津波発生の報告はありますが、グリーンランド周辺ではかなり珍しく、情報もなかったと考えられますので、住民が素早く避難するのは難しかったのではないかと考えています。現地のニュースでは、目撃情報により、大きな煙や、何か山から海へ入り込んだとのことが書かれています。
https://www.thelocal.dk/20170621/experts-uncertain-cause-of-greenland-landslide
地滑りが起こったと思われる場所のビデオ http://sermitsiaq.ag/node/197686
他の津波が発生した時のビデオ http://nyheder.tv2.dk/2017-06-20-tre-voksne-og-et-barn-formodes-doede-efter-klippeskred-i-groenland
世界では過去にも地滑りなどによって大量の土砂が海に流れ込むことで海面が大きく変動し津波が発生したことがあります。また海底で起きた地滑りや氷河の崩落によって津波が起きたこともあり、今後、詳しい原因の解明が必要になります。

<2017年6月25日>引き波の恐ろしさと今後の対策
地震津波リスク評価・寄附研究部門助教 山下啓さんからの発表「津波の引き波は恐ろしい」とはよく言われます。東日本大震災の特に三陸地方では、その津波の引き波の恐ろしさを、改めて思い知らされました。漂流物や瓦礫等、あらゆる物が海域へ引き込まれ被害が拡大したのです。こうした東日本大震災の被害実態を踏まえると、南海トラフ巨大地震津波においても引き波による被害拡大が懸念されるため、今後に引き波対策を充実させることが求められます。
ところで、引き波の強さは、押し波のピークから次の引き波への変化が大きく影響すると考えられます。例えば、特に引き波被害が大きかった陸前高田市や女川町の沖合津波波形(GPS波浪計)は、他地点のGPS波浪計で取得された津波波形と比較して押し波の後の水位低下量が大きく、強い引き波を生じさせ得る津波波形でありました。そこで、沖合津波波形に基づく引き波影響度の評価手法を提案し、南海トラフ巨大地震津波の引き波影響度の評価を試みたところ、高知県や東海地方の広い範囲の沖合津波波形が、震災時の三陸地方と同程度またはそれ以上の引き波を伴う可能性があることがわかってきました。こうした地域では、従来の津波対策とあわせて引き波対策も重要課題となります。

<2017年6月18日>長谷川昭先生の恩賜賞・日本学士院賞受賞について
東北大学名誉教授の長谷川昭先生の恩賜(おんし)賞・日本学士院賞受賞についてご紹介させていただきます。長谷川先生は、理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センターで長年地震に関する研究を実施され、今回「沈み込み帯物理学の構築と新展開」という研究が高く評価されました。 典型的なプレートの沈み込み帯である東北日本では、過去に地震・津波、火山などの活動が活発に発生しています。高感度・高精度の地震観測網を構築し、緻密な解析手法を開発することにより、この地域の特性を明らかにされました。地震活動と沈み込み帯の地殻・マントル構造を世界のどこよりも高い解像度で明らかにされたのです。まず、プレートのスラブ内で二重に地震が発生している面を発見されました。次に、スラブの微細構造の解明を行われました。また、火山フロントに向かうマントル境界でのマントル上昇流の検出、地殻中を上昇する溶融体と地震・火山活動との関連の解明などを行われました。さらに、内陸地震・プレート境界地震が低応力下でも発生する事なども示されたのです。これらが、東北日本だけでなく世界の沈み込み帯に共通する現象であることが確認された例は数多くあります。さらに、「プレートの沈み込みに伴って移動する水」をキーワードにして説明するなど、この分野の重要課題の解明に大きく貢献しました。将来的に地震発生予測の高精度化につながると期待されています。3年前には、津波工学で首藤伸夫先生も日本学士院賞を受賞されおり、地震および津波の研究分野で我が国最高の学術賞を受けたことは、東北大学にとってもたいへん名誉なことです。

<2017年6月11日>宮城県沖地震について
宮城県沖地震は、1978年(昭和53年)6月12日の17時14分)に発生しました。マグニチュード7.4(Mw7.5)の地震になります。最大震度は仙台市などで観測した震度5(強震)であり、東京でも震度4(中震)を記録しました。当時の観測システムの下ですので、実際の揺れは、さらに大きかったと考えられます。その被害は、死者28名(ブロック塀などの下敷き18名)、負傷者1325人、建物の全半壊7400戸、停電70万戸、断水7000戸にも及びました。初めての都市型地震と言われ、都市インフラに大きな影響を与えました。その後、我が国の耐震基準が大きく見直されました。この宮城県沖地震は、世界で最も発生頻度の高い地震になります。過去、400年間では平均37.1年の間隔で複数回起きています。日本海溝(海洋プレートと大陸プレートの境界部分)の大陸プレート側を震源として周期的に発生しているのです。陸よりと海溝よりの2つのアスペリティがあると考えられています。これが高頻度で発生している原因と言われます。また、宮城県沖地震には1930年代の地震のように時間をおいて複数のアスペリティが別々にすべる場合と、1978年の地震のように同時にすべる場合があります。以上が単独型ですが、連動型で発生する場合もあります。三陸沖南部海溝寄りの地震と連動した場合、M8.0前後の地震になると言われます。このタイプの地震は、過去の記録などから1793年等に起きたと考えられています。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、地震予知連絡会や国の地震調査研究推進本部も「想定される宮城県沖地震も同時に発生した」との見解を示しています。しかし、また、40年前後で次の地震が発生することが考えられ、最近の研究ではその間隔が短くなると予想されています。

<2017年6月4日>2013年四川地震の被災地を訪問
2013年四川地震とは、4月20日、四川省雅安(があん)市で起きた地震(M7)です。2008年の四川大地震と同じ龍門山断層帯で発生しました。死者は200人を越え、負傷者は6000人以上になりました。先月5月17日、この四川地震(芦山または雅安地震)の被災地を訪問し、その後新しく建設された雅安市第二小学校における防災対策・活動について紹介を受けました。2008年の四川大地震後の混乱の教訓を受け、今回は、震災直後から小学校や中学校に対しては政府からの支援がいち早く届き、授業の再開がスムーズになされました。雅安市第二小学校は、地震後に新たに移転・建設された学校で、十分な広さの避難経路や集合場所が備えられていました。水や食料、防火用水などの備蓄も充実しています。コンクリート2階建てで、広い敷地に、中学校や幼稚園が隣接しています。当時300名だった生徒数もいくつか統合され、1000名の規模になりました。「防災体操」など独自の防災教育が取り入れられており、年に最低3回は避難訓練などを実施しているということです。防災教育については、兵庫・神戸の皆さんからの支援があり、特に、舞子高校からの協力があったそうです。また、2016年4月には「4.20芦山強烈地震記念館」が開設され、当時の災害対応や復興の様子を示す様々な写真や資料が展示されていました。被害実態や支援・復興などを体系的に整理し、地震の記憶、経験、教訓を将来へ残そうとする大きな努力がうかがえました。ここにも、日本の防災の科学技術と経験が活かされており、博物館の展示には、日本の業者(丹青社)が支援したということです。

<2017年5月28日>四川大学を訪問
四川大学-香港理工大学の災害復興管理学院を訪問しました。
2008年に発生した四川省ブンセン地震への復旧・復興支援のために、自然災害の防止・減災や災害後の復興を専門に研究する中国初の学院として、四川大学と香港理工大学が連携して設置されました。四川大学には看護専門科が、香港理工大学には健康回復治療専門分野があり、多くの研究・教育活動をされています。2008年5月12日に発生した四川大地震(M8)は、死者6万9197人、負傷者37万4176人にのぼり、中国政府にも中国社会にも大きな衝撃を与えました。さらに、この南部で、2013年4月20日に四川芦山(ろざん)地震(雅安地震)(M7)が発生しました。これも大地震でありましたが、また、2008年の記憶が新しく、復興の途中にあるなかで、対応は迅速であったようです。震災以前からの西部大開発計画事業や、震災後の対口支援方式により支援の競争も加速しました。また、中国でのボランティアやNGO活動が始まった事例となります。現在、東大を退官された小出名誉教授が在籍されており、空間分析、戦略評価、10年間復興効果検証などを研究されています。若い教員も多く、京大や九州大で学んだ方もいました。学部・大学院での教育の他に、短期・中期の研修プログラムもあり、災害に対応できる専門人材の育成を行い、災害後の早い復旧・復興そして他の地域での予防防災を目的にしています。今回、学院長の招待で訪問し今後の研究・教育の連携について協議するとともに、学生や教員に、当研究所の紹介と東日本大震災の被害実態、APRUマルチハザードプログラムの活動(泉准教授)について講演しました。その後、活発な意見交換も行われました。

<2017年5月21日>災害犠牲者の身元確認とICT
大災害と身元確認についての続きです。実は、東北大学大学院情報科学研究科・青木孝文教授の研究室では、震災前から生体認証(バイオメトリクス認証)に関して研究を推進されていました。その内容は、高精度画像認識の技術を応用し、東日本大震災で遺体の歯科所見をデータ化し、身元特定を迅速化するシステムを開発・無償提供したことになります。また青木先生は、長期にわたって宮城県警で照合作業に尽力されたことを高く評価され、平成25年度の河北文化賞を受賞されております。ITを活用して身元確認作業の効率を高めました。

(1)歯科医師による歯科記録の採取(デンタルチャート、口腔内写真、歯科エックス線画像等)について解説し、災害時のみならず平時にも重要な歯科情報を活用するために必要な「歯科診療情報の標準化」を行っております。
(2)ポータブルX線撮影装置や、防塵・防水・耐衝撃デジタルカメラ等の歯科検死標準機材の「パッケージ化」の概念を発案し、これに基づく具体的な標準機材パッケージを整備しました。
(3)Dental Finderを提案しました。この主要機能としては、(i)ご遺体の検視(検死)によって得られる歯科情報をデータベースとして管理する機能、(ii)行方不明者の診療録などから得られる歯科情報をデータベースとして管理する機能、(iii)2つのデータベースに格納された歯科情報を照合し、身元の特定に有効な情報を提示する機能です。
本ソフトウェアは、主として宮城県において、警察および歯科医師会との連携のもと、犠牲者の身元検索のために活用されています。また、岩手県、福島県の警察・歯科医師会にもご協力いただき、被災3県における犠牲者の統合データ(同一形式に変換された歯科情報)に基づく身元検索にも利用されています。
参考文献;災害と身元確認 ICT時代の歯科情報による個人識別/江澤庸博・青木孝文・柏崎潤・小菅栄子著 医歯薬出版より2016年10月に出版https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=444680
災害犠牲者の身元確認とICT/青木孝文・伊藤康一・青山章一郎https://www.jstage.jst.go.jp/article/essfr/9/2/9_119/_pdf

<2017年5月14日>大災害と身元確認①
本日は、大災害での身元確認について話題を紹介します。2年前に、この番組で警察歯科医会全国大会が開催されたことを紹介させていただきました。災害が発生したとしても、すべて人命を助ける努力をしておりますが、東日本大震災のような大災害で、残念ながら多数の犠牲者が出てしまう場合があります。今後、どのような対応が必要なのかを紹介したいと思います。今回のお話しは犠牲者の方の身元確認になります。大規模な災害や事故あるいは平時における各種の事案が原因で亡くなられた方について、そのご遺体からその方が誰であったのかを特定すること、すなわちご遺体の個人識別のことを言います。故人と残された家族や仲間の絆を再確認するという重要な役割であり「正確さ」と「迅速さ」が求められます。身元確認は遺体の引渡だけを目的としているのではなく、その人の法的権利主体が死によって消滅した証明にも必要になります。これは戸籍の抹消も含んでおり、その影響の大きさは明らかであると思います。今回のような震災では、身体特徴である顔貌、指紋、掌紋、DNA 型などを用いた各種の個人識別手法の中でも、 特に歯科的個人識別(歯の所見)が有効であったと報告されております。全国から派遣された歯科医師は述べ1095人にもなります。一方、医師には人の死を判定・確認し、死亡診断書・死体検案書を交付する義務があります。この検死(警察が行うのが検視)と身元確認の対応が連携して行われます。まず、災害時には死体の安置所・死体の保存について対処しなければならないのですが、当時、広い場所の確保は困難きわまりない状況でした。当時、宮城県だけで43の検案所が確保され、一日辺り1000体の収容を越えた時期もありました。身元確認(個人識別)では、歯科医学的検査が有用でしたが、この検査をさらに効率的に行う必要があるのです。さらに、これまで経験した災害を教訓にするために、公式の記録を残しておかねばなりません。

<2017年5月7日>JAL東北創生室について
日本航空(株)東北創生室代表の菊池康文さんにゲストとしてお越しいただきました。昨年7月、仙台に東北創生室を開設し、活動を始められています。「日本航空は、7年前の破たん後の再生の過程で、多くのご支援をいただきました。私たちは、社会の皆様への感謝の気持ちを忘れることなく、社会貢献へ取り組む責任があり、とりわけ地域創生への貢献は大変重要であると考えています。」という理念のもと、今後、全国に創生室を開設していく予定です。東北創生室は、まだ、開設後1年も経っていませんが、現在、東北の地域の皆様のニーズに沿って、インバウンド拡大へ向けた観光資源魅力創造や地域物産の知名度向上、販路拡大等のお手伝いを目指して活動しています。今後はさらに地域経済活性化につながる長期レンジの地方創生事業、具体的には、被災地の復興・再生への貢献を目的として、震災学習旅行や学校交流のしくみ作りなどにも取り組んでいく予定です。

<2017年4月30日>津波による農業被害について
我が国では様々な自然災害が発生していますが、風水害を中心に農業への大きな被害を生じさせています。最近の地震災害では、直下型地震である阪神淡路大震災では都市部を中心に、中越地震では山間部を中心に影響を与えており、農業被害も生じています。一方、東日本大震災は強震、津波、土砂災害、液状化・火災さらに原発事故による複合災害であるため、農業被害を考えても被害像は多様であり放射線の影響は現在まで深刻な状況です。そのため、今回の実態は今後の災害対応や減災への取り組みを検討する際に、包括的にも検証し教訓を残していく必要があります。この大震災による農林水産関係の被害額は、全国で約2兆3,800億円と阪神・淡路大震災(約900億円)の約27倍となり(原子力災害は除く)、特に被害が大きい岩手・宮城・福島3県の農林水産関係の被害額は約2兆3,340億円(全国比98%)と被害の大部分を占めました。その中、農業関係は8,588億円、水産関係は13,469億円、林野関係は1,342億円であり、農業関係では、岩手688億円/宮城5,5055億円/福島2,395億円で、宮城県での被害が大きいことが分かります。さらに、被災3県の農地の津波被災面積は、全国の被災面積2万1,480haのうち2万530?ha(全国比96%)を占め、そのうち宮城県が1万4,340ha(全国比67%)を占めたためである。このほか、農業用施設では、宮城県沿岸部の排水機場を中心とする施設や、福島県内のダムやパイプラインなどに大きな被害が発生しているのです。
震災直後にまとめられた復興の3つの柱です。
a)高付加価値化……6次産業化(第1次産業と第2次、第3次産業の融合による新事業の創出)やブランド化、先端技術の導入などにより、雇用の確 保と所得の向上を図る戦略
b)低コスト化……各種土地利用計画の見直しや大区画化を通じた生産コストの縮減により、農家の所得向上を図る戦略
c)農業経営の多角化……農業・農村の魅力を活かしたグリーンツーリズム、バイオマスエネルギー等により、新たな収入源の確保を図る戦略
さらに400年前に、慶長奥州地震津波の際にも伊達政宗が中心になり、様々な工夫をこらした、先を見た発想の下、復興事業が進められました。

<2017年4月23日>熊本地震被災支援の活動~1年間を経て
昨年4月14日以降に断続的に発生した熊本地震では、熊本大学などの教育施設を含め、各地で甚大な被害が出ました。災害対応の経験と教訓を持つ東北大学が被災地や関係大学に寄り添った支援や協力を展開すると同時に、被害調査を実施し、地域の新生に寄与することは、使命であると考えます。この使命を果たすため、本学の経験と教訓(東日本大震災対応記録等)を発信し、本学教員・スタッフ・学生による被災地への総合的な支援と協力を行ってきました。地震直後の緊急調査に始まり地震特性断層活動構造物・家屋・地盤の被害可能性津波の評価などの工学的観点の調査や分析に加えて事業継続(BCP)被災者の行動NPOの活動避難所運営ボランティア活動報道動向などの社会的観点でも調査を実施し、現状分析による問題点の整理を行いました。 また医学分野からは本研究所のスタッフが災害時派遣医療チーム(DMAT)として現地医療支援に参加するとともに地震後の医療や保険の実態に関して調査や分析を実施しました。さらに仮設住宅など復興過程についても継続的に調査や分析を実施しています。特に熊本大学とは、研究に加えて教育の双方の観点で協力して活動を展開しており本学のグローバル安全学トップリーダー育成プログラムとの連携により共同講義や事業を実施しており地震から半年後に東北大学と熊本大学の協力体制の下で市民公開講座を実現しています。これらの活動により得られた成果は各分野において学術論文として公開する準備が進められており、A研究所全体の活動や調査時に撮影された写真が収録された報告書(DVD形式)も作成しています。

<2017年4月16日>地震1年を迎えた熊本地震について
2017年4月14日前震、16日に本震、それ以降も活発な余震が発生し地域に大きな被害を引き起こしてしまいました。長い間眠っていた活断層(日奈久断層帯や布田川断層帯)が突如として活動を始めた直下型地震であり、一連の地震活動において、震度7が2回観測されたのは観測史上初めてのことでありました。余震活動も現在まで続き、内陸地震では中越地震を超え我が国最大発生数となりました。ここでは、注目すべき課題と取り組みを紹介します。

○ 震災関連死
避難生活によるストレスや持病の悪化などで亡くなる震災関連死も相次いだ。2017年2月21日現在、直接死50名に対して、震災関連死と市町村に認定された人は149人に上っています。エコノミークラス症候群などにより車中泊後に死亡した人が少なくとも33人、病院や高齢者施設が被災して転院・移動中に死亡した人が少なくとも27人、などとなっていました。今回の大きな課題の1つです。

○「熊本型デフォルト-応急仮設住宅計画」熊本大学桂英昭先生の活動紹介
http://touron.aij.or.jp/2016/08/2438
応急仮設住宅の供与については、災害救助法(平成25年内閣府告示第228号)で定められており、談話室や集会所などの建設も一定の基準が設けられていました。国土交通省住宅局住宅生産課がまとめた「平成24年の応急仮設住宅建設必携(中間とりまとめ)」などからは、応急仮設住宅における建設主旨と基準だけではなく、阪神淡路大震災や東日本大震災での教訓を踏まえた柔軟な対応の可能性が示唆されていました。今回、新しい仮設住宅が建設され、使用されています。要点を箇条書きに整理すると
・ゆとりある配置計画(150m²/戸)隣棟間隔(プレハブ棟:5.5m、木造棟:6.5m)
・住民コミュニティなどに配慮した住戸タイプ配置
・仮設住民が集いやすい集会所と談話室の配置、塀やベンチを設置
・各住戸の遮音、ペアガラス、網戸、掃出し窓と濡縁の設置
・木造仮設棟の基礎はRC造、住宅入居後の住環境整備カスタマイズを想定

<2017年4月9日>地震や津波の予見性
先月、3月17日に、前橋地方裁判所でひとつの判決が出されました。これは、東京電力福島第一原子力発電所の事故で群馬県に避難した人などが起こした裁判です。前橋地方裁判所は「津波を事前に予測して事故を防ぐことはできた」として、国と東京電力の責任を初めて認め、3,800万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。原発事故の避難をめぐる全国の集団訴訟では、今回が初めての判決になります。この裁判は、原発事故の避難区域や、福島県のその他の地域から群馬県に避難した人たち137人が、生活の基盤を失うなど精神的な苦痛を受けたとして、国と東京電力に、総額およそ15億円の慰謝料などを求めたものです。争点は4つありました。東電の過失の有無、国の責任の有無、賠償額の妥当性、自主避難の妥当性になります。前橋地方裁判所の原道子裁判長は、平成14年7月に政府の地震調査研究推進本部が発表した巨大地震の想定に基づき、国と東京電力は、その数か月後には巨大な津波が来ることを予測できたと指摘しました。また、平成20年5月には東京電力が予想される津波の高さを試算した結果、原発の地盤を越える高さになったことを挙げ、「東京電力は実際に巨大な津波の到来を予測していた」としました。こうした予測に基づいて、配電盤や非常用の発電機を高台に移すなどの津波対策をしていれば、原発事故は発生しておらず、こうした対策は期間や費用の点からも容易だったとしています。しかしながら、地震調査研究推進本部が発表した巨大地震の想定と3.11の地震とは違うタイプの地震であること、また、原発事故の原因解明は途上であり、配電盤や非常用の発電機を高台に移すなどの対策が事故防止にどのように役立ったのかについては検討中であります。今後、千葉地方裁判所や福島地方裁判所などでも今年中に判決が言い渡される見通しです。

<2017年4月2日>第3回世界防災研究所連合(GADRI)会議の紹介
GADRI(世界防災研究所連合)とは、世界各国の災害研究・防災研究を標榜する研究機関の研究ネットワークです。https://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/gadri_secretariat/http://gadri.net
情報、知識、経験、さらには、理念を共有し、学術面から災害リスク軽減と災害レジリエンスの向上に貢献することを目的としています。京都大学の防災研究所が幹事を務め、現在、世界から91の機関と組織が参加しています。以下の五つの目標を掲げて活動を展開しています。
①学術研究の地球規模ネットワークを形成すること
②災害研究のロードマップ、研究計画、研究組織の組成に資すること
③災害研究を進める研究機関の能力向上を目指し、研究者や学生の交流を推進すること
④地球規模で学術研究のためのデータや情報の共有化を進めること
⑤意思決定に影響を及ぼせるように、統一した声明を発信するための調整を行うこと
2011年に世界防災研究所サミットが開催され、GADRIが産まれるきっかけとなりました。このサミットでは、防災研究を推進してきている世界各国の研究機関に呼びかけ、世界14の国と地域、52の機関から135名の防災研究者が参加し、 相互交流ネットワークを形成することを目的とした会議の開催や防災研究機関のネットワーク作りにむけた合意が形成されました。その後、2015年3月に第2回、先日、2017年3月19日から第3回の会議が開催されました。参加数は150名を超え、大学・研究機関に加え、国連、国際機関(世銀など)、政府(内閣府やJICAなど)も参加され、学術的な成果の発信に期待が寄せられました。

<2017年3月26日>かたりつぎ~東日本大震災の「語りつぐ記憶」について(2)
3・11祈念事業「かたりづき~朗読と音楽の夕べ~」は、震災後6回目にして初めて、福島県(白河文化交流館コミネ)で開催されました。東日本大震災巨大水彩画「飯舘村」を背景に、竹下景子さんの朗読と、東北の音楽家(高塚美奈子さん大竹うららさん)に演奏をしていただきました。震災から6年という月日の経過の中で被災者の心に変化がありました。次第に内省化していく中で深い哀惜が浮かび上がってくる証言となりました。発災当時の生々しい感情や忘れることのできない衝撃が抑制的に語られました。みちのく震録伝が収集・整理・保存した膨大な口述記録(オーラル・ヒストリー)の中から、後世へ語り継ぐべき記憶・教訓を学術の視点から選び出しています。この口述記録は、ライターにより詩(またはものがたり)のかたちに落とし込み、語り主と何度も書き換え仕上がったものです。内容は、防災・減災教育としてのメッセージ、記憶風化への防止、新たに生まれる課題の紹介などがあります。時間の経過と共にしっかり受け止めて伝えていくものになります。今回は、以下の7つのお話が朗読されました。
「津波、てんでんこ」(岩手県)[2]「この地球はどうなったの?」(宮城県)[3]「帰ってきたバイオリン」(宮城県)[4]「100年たったら」(福島県浪江町)[5]「までいな心で」(福島県飯舘村)[6]「外れたチェーン」(福島県)[7]「ドアをくぐり抜けて」(福島県富岡町)

<2017年3月19日>かたりつぎ~東日本大震災の「語りつぐ記憶」について
3・11祈念事業「かたりづき~朗読と音楽の夕べ~」は、震災から6回目の開催でした。朗読は女優の竹下景子さんです。竹下さんは阪神淡路大震災復興支援のメモリアルコンサートで、詩の朗読を続けてこられましたが、この企画が、東日本大震災をきっかけに東北に引き継がれました。今回は初めての福島県での開催(会場:白河文化交流館コミネ)でした。かたりつぎの朗読は、東北大学災害科学国際研究所のアーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」が取材した被災者の今と思いを詩にしたものです。本日は、第一部の講演についてご紹介します。平川新先生(宮城学院女子大学学長・歴史学者)による「地震と戦う城と石垣~小峰城と仙台城と熊本城」という興味深い内容の講演でした。城は戦国時代には,特に要塞としての機能が中心でしたが、江戸時代に入り権威の象徴となり、建物や石垣には職人さんの遊び心もあったそうです。石垣作りには、大量の石が必要ですが、周辺から石を運ぶ作業も至難で、牛や筏などを使って運搬したそうです。広瀬川は国見・八幡辺りから石を切り出し運搬する役割を担っていたようです。また陸路は牛が重要な役割を果たし、いまでも「牛越橋」や「うなり坂」などの名称が残っています。一方、自然災害は城にも影響を与えました。地震による強い揺れで、しばしば石垣に被害が出たそうですが、そのため,より安定した強固なデザインの石垣が積まれるようになりました。表面はきっちりと石がかみ合っていますが、裏面には隙間を作り、土や小石をつめて、地震の揺れを吸収していたようです。また、そり返しを入れるかと地震の揺れを分散できるそうです。仙台城址の本丸大石垣は、高さ17m、約70°の急勾配ですが、ここにも工夫を確認することができます。

<2017年3月12日>児童に芽生えた減災意識(寄付研究部門:保田真理さんからの報告)
今年1/21に「ともに考える防災・減災の未来フォーラム」を開催いたしました。「私たちの仙台防災枠組講座」の特別講座で、東北大学「結プロジェクト」出前授業3年間の成果報告として、代表校3校が活動報告をしてくれました。学校や地域が被災しましたが、現地で校舎を修復して授業を継続してきた亘理町荒浜小学校、岩沼市の玉浦小学校も校舎の1階が浸水被害にあいましたが、校区の中に震災復興住宅エリアがあり、環境が大きく変化しつつも市内の防災拠点校として活動中、角田市東根小学校は阿武隈川沿いの谷合に位置する小学校で、住民の数が少ないこともあり、とても絆の強い地域です。結プロジェクト実施にあたって、大きな3つの目標がありました。
@災害のメカニズムをサイエンスとして誇張することなく正しく伝える
@いつ起こるかわからない災害に対して被害を少なくするための減災活動の推進
@災害リスクを判断し行動できる人材を育成し、児童から社会に拡散させる
児童が自ら過去の災害を調べて、その教訓をまとめる活動、地域の人に自分たちの学区内のハザードマップを作成し、想定される被害を説明するパンフレットを作るなどの活動報告がありました。出前授業は単発の講座ですが、そこからの気づきや疑問、好奇心を十分に自宅や地域の減災対策に生かしてくれていることがわかりました。また、児童に理解を深めさせる先生方の努力があるからこそ、児童が伸びやかに活動できるのです。3/12仙台防災未来フォーラムでも、この代表校3校の子供たちが活動報告をします。

<2017年3月5日>仙台防災未来フォーラムについて(2)
http://sendai-resilience.jp/mirai-forum2017/symposium.html
・10:15~12:00 ともに考える防災・減災の未来~「私たちの仙台防災枠組講座」、「『結』 プロジェクト」合同報告会~[主催]東北大学災害科学国際研究所、仙台市
・10:00~12:00 震災から6年・教訓伝承と防災啓発の未来~連携と発信の拠点づくりに向けて[主催]みやぎ防災・減災円卓会議
・10:00~12:00 インクルーシブ防災をめざした地域づくり[主催]東北福祉大学、障がい者の減災を実現するイニシアティブ研究会、仙台市障害者福祉協会
・13:00~15:00 “地域のきずな”が生きる防災まちづくり~仙台市の事例から学ぶ~[主催]仙台市
・13:00~15:30「次世代が語る/次世代と語る~311震災伝承と防災~」[主催]河北新報社
・13:00~15:00「もしものそなえ SENDAIと世界のつながり~伝えよう、共有しよう、継承しよう~」[主催]独立行政法人国際協力機構(JICA)
ともに考える防災・減災の未来~合同報告会~での前半は今年度実施した「仙台防災枠組 連続講座」の受講生から、講座での気づきや、今後の地域の防災・減災の取り組みへの仙台防災枠組の活用等について発表します。後半は、「『結』プロジェクト」の参加小学校3校による実践活動の報告会を行います。UNISDR駐日事務所松岡由季代表をお招きし、ご講評をいただきます。産学官民、報道機関の連携組織「みやぎ防災・減災円卓会議のセッションでは、被災地発の教訓伝承と防災啓発の未来を議論します。

<2017年2月26日>2月26日 仙台防災未来フォーラムについて(1)
仙台防災未来フォーラムは国連防災世界会議の仙台開催から1周年を機に昨年3月に初めて開催され、今年で2回目となります。仙台市では、子供から高齢者まで、また、性別や国籍の違い、障害の有無などによらず、地域のすべての関係者が自助・共助を担う地域づくりを進めています。本フォーラムは、こうした防災の担い手たちが自分たちの取り組みを共有・継承することで、新たなネットワークを?み出し、未来の防災に貢献することを目指して開催しています。そして今年仙台防災未来フォーラム2017が開催されます。震災から6年を迎える今、震災の経験と教訓を地域や世代を超えて、どのように「伝える」かが改めて問われています。このフォーラムでは、震災経験の伝承、地域防災の次代の担い手づくり、人々の多様性と防災などのさまざまなテーマから、「伝える」ことの大切さや今後の課題について理解を深め、経験や教訓を世界へ、そして将来へどのように受け継いでいけばよいのかを考えます。クロージングも重要な内容になります。フォーラムのまとめとして、それぞれのテーマセッションでの議論結果の報告をもとに、震災の経験や教訓などを「伝えること」の大切さやその課題について考えるとともに、多様な主体(マルチステークホルダー)による防災・減災の取り組みの今後の方向性などについて参加者で共有します。[コーディネーター]東北大学災害科学国際研究所 所長 今村文彦 氏[コメンテーター]UNISDR駐日事務所 代表 松岡由季 氏 立花 貴(予定) ほかミニプレゼンテーション 12:20~14:20 会場/仙台国際センター展示棟 展示室1・2展示出展団体や防災・復興関連団体によるプレゼンテーションやミニトーク(各団体10分程度)があります。事前申し込みは不要ですので、是非会場にお越しください。

<2017年2月19日>ドローンを利用した被災把握と津波避難(広報)伝達
「ドコモ・ドローンプロジェクト」の3つの目的の1つをご紹介します。「世界津波の日」の昨年11月5日、仙台市若林区荒浜地区の海岸で、NTTドコモと仙台市が、津波避難の広報に小型無人機「ドローン」を活用した実証実験を行いました。津波を想定した避難広報でドローンを使う実験は全国で初めてのようです。実証実験は、津波発生時の行政による災害広報活動における被害把握があります。従来の定点カメラからの情報取得や車の巡回による広報対応では難しかった沿岸部があるためそこから離れた災害対策本部からの広域被災状況の即時確認と避難広報実施の2点について検証されました。上空を飛行するドローンから、沿岸の状況を撮影、ブイキューブロボティクスの映像共有システムを経由して、海岸と仙台市青葉区にある仙台市災害情報センターのモニターへリアルタイムで伝送されました。さらにもう1つ今回新しい試みとして、高出力スピーカーを搭載した大型ドローンを使って、ドローンが上空を移動しながら避難広報を行うことで、避難広報担当者が危険地域に近づくことなく、対象地域内へ避難広報を行えることも確認されたそうです。今後の利用拡大への期待があります。2016年8月には仙台市とICTを活用したまちづくりに関する連携協定を締結されており災害発生時の被災状況の確認や生活インフラの点検などを想定しドローンを活用した映像ソリューション導入等を検討されていました。

<2017年2月12日>津波に関する国際的な活動について(津波工学研究分野准教授 サッパシー・アナワット先生からの報告)
津波災害は、他の災害と違って、国境を超えるため、世界のさまざまな国と一緒にその対策を考える必要があります。東日本大震災からまもなく6年、インド洋大津波から12年3か月が経ちました。世界の国々では、過去の津波の経験・教訓に基づいて、これまで津波防災対策が進んでいます。津波災害を軽減するため、東北大学災害科学国際研究所が世界の国際的な機関と共同で行っている活動を紹介します。一つ目は災害統計グローバルセンターです。これは国連開発計画(UNDP)、環太平洋大学協会など、世界各国の政府と連携し、世界レベルで災害に関するデータベースを作成する活動です。このデータベースが出来ることによって、災害軽減の為の災害統計解析ができるようになります。二つ目は2015年6月の国際会議に世界中の津波研究者が集まり、「グローバル津波モデル」というプロジェクトが始まりました。高精度の津波数値解析、津波脆弱性評価、防災教育、情報発信等について、世界レベルでの共同研究が進んでいます。我々は東日本大震災から得られた教訓やデータ等に基づいてこのプロジェクトへ貢献しています。三つ目は去年から始まった11月5日・世界津波の日に関する活動です。我々は去年、国内はもとより、ハワイ、インドネシア、クウェート等で津波防災意識を向上する活動を実施してきました。これからも世界津波の日を通じて、世界レベルでの活動を続けたいと思います。

<2017年2月5日>「じぶん防災プロジェクト」(小冊子)が出来ました。
「じぶん防災プロジェクト」という小冊子は、読むだけのものではありません。ここでは、東日本大震災での経験をもう一度振り返り、そもそも津波とは何かを知り、そして今度津波が襲ってきたら、自分たちはどのように行動できるのかを考えるためのものです。これが、自分のための防災プロジェクト(ある目的を達成するための計画の策定とその遂行)になります。大切なのは、皆さん一人一人が防災プロジェクトの主人公になると言うこと。そして、津波から生き抜くために必要な自分なりの方法を発見する事です。*東日本大震災を津波災害の視点から振り返ろう *津波のきほんを理解しよう *津波から生き抜くための出来ることを今しよう。そして、スクリプト、避難認知マップ、町歩き、まとめなど、7枚のワークシートがあります。工夫した点は、KPDCA(+knowを入れました)サイクルを導入、繰り返しワークシートへの記入をお願いしています。これを手元に置いて、実際に自分の町を歩くという経験を積み重ねていただきたいと思います。私たちが暮らす町は、時間と共に変化していきます。現在考えた避難場所や避難方法が、将来にわたって最適な場所や方法とは限りません。今回経験したプロジェクトを終わりとせずに、定期的な取り組みをすることで、常に確認してください。

<2017年1月29日>津波ものがたり
東日本大震災の経験を後世に伝え、活かすために、いろいろ考えております。その中で、各人が、それぞれ自分の津波に関するものがたりをつくってみることは、どうでしょうか?と考えるようになりました。東日本大震災の教訓を知り、津波に関する基礎知識をあらためて持っていただき、次への備えに、さらに、得られた知見と知識を活用して後世のために「津波ものがたり」を創りませんか?まず、テーマを決め、シナリオとスクリプトを作ります。表現方法はいろいろあります;たとえば、絵画、映像、作曲、劇、お祭り、イベント、避難訓練企画など・・・。これらの創作活動は、単に津波について知を得るのではなく、アクティブ・ラーニング(思考を活性化する学習スタイル)として、知を身につけることができると考えます。実際にやってみて考える、意見を出し合って考える、わかりやすく情報をまとめ直すなど、いろいろな活動を介してより深くわかるようになります。東日本大震災は、巨大地震、津波、そして原発事故が加わり、人類にとって今までに経験のない複合災害になりました。なぜ、大きな被害が生じたのか、1つ1つ見直す必要があります。津波の来襲により、地域に残された災害文化(石碑、伝承、地名)などの意味を再認識しました。便利な社会の中で、過去の教訓が覆されたと言っても過言ではないと思います。石碑や伝承の役割と限界、見えない被害への対応が必要であると思います。

<2017年1月22日>地震の余震について
大きな地震の後には、多くの場合、その近くで引き続いて多数の地震が発生します。最初の大きな地震を本震、その後に引き続き起こる地震を余震といいます。また、このような地震活動のパターンを「本震-余震型」といいます。現在、気象庁では大地震後の地震活動の見通しに関する情報に注意し、地震から身を守る情報を提供しています。 地震活動のパターンには「本震-余震型」の他に、「前震-本震-余震型」と「群発的な地震活動型」があります。「前震-本震-余震型」は、本震-余震の地震活動に先行して本震よりも小さな規模の地震活動(前震)がみられるパターン、昨年の熊本地震が事例です。この熊本地震では4月14日の地震発生後、気象庁は、14日の地震(M6.5)を本震とみなして余震確率を発表しましたが、実際には16日により大きな地震(M7.3)が発生して、時間とともに当初の地震活動域が拡大する経過をたどりました。また、「群発的な地震活動型」は、目立って大きな地震はないものの、地震活動が激しくなったり穏やかになったりしながら、一定期間続くというパターンになります。余震の原因は、本震時に解放されきれなかったエネルギーが放出されるためとみられますが、昨年の11月22日福島沖地震さらには12月28日茨城北部地震は、東日本大震災の広義の余震と見られています。地震メカニズムも正断層型であり、本震により地下の歪み方が変わったりすることによって地震が誘発されたと考えられます。この変化を本震による余効変動とも呼びます。余震による被害・影響としては、以下が考えられます。地震災害が発生した後は建物の耐久性が落ちている可能性があり、規模の小さな地震でも損壊や倒壊の危険があるのです。2004年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震のように余震でも震度6弱以上の揺れがある場合もあります。また余震が続くと、被災者は不眠症や地震酔い、精神的なストレスに悩まされます。本震によるストレスよりも、長く続く余震によるストレスのほうが大きいと報告されています。

<2017年1月15日>「被災地と共に考える防災・減災コンテスト2016」
本日は、防災・減災の取り組みに関するコンテストを開催し、表彰しようという活動の紹介です。中心となっているのが、大船渡市赤崎町の大船渡津波伝承館(斉藤賢治館長)です。今年度初めて、防災や減災の実践的な取り組みを発表し合う「被災地と共に考える防災・減災コンテスト2016」を開催します。趣旨としては、東日本大震災後、支援活動に携わった事例などを募集し、次の災害への備えや命を守る知恵を発信するものです。特に、岩手県や宮城県などを中心に、両県内の団体と両県で復興支援活動実績のある団体、企業、学校などが対象になります。復興支援活動事例をまとめた資料やマップ、冊子などの製作物を1月30日まで募集します。書類による1次審査を通過した団体は、2月25日に東北大災害科学国際研究所で開かれる2次審査でプレゼンテーションを行い、最優秀賞など各賞を選ぶ予定です。大船渡津波伝承館ホームページにある応募用紙に応募作品を添え、「〒022-0005 大船渡市日頃市町関谷54の2 防災・減災コンテスト事務局」へ郵送かメール(oft.tsunami.museum@gmail.com)で応募してください。
■大船渡津波伝承館ホームページ:https://ofunato-tunami-denshokan.jimdo.com
問い合わせ先:同館事務局0192-47-4408。

<2017年1月8日>和歌山県での地震・津波シンポウム
南海トラフ地震への備えなどについて考えるシンポジウムが昨年12月17日に田辺市で開催され、参加してきました。このシンポジウムは、海洋研究開発機構が文部科学省の委託事業として行っている「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」の一環です。過去の教訓をもとに、今後の発生が想定される南海トラフの巨大地震に備えるためで、約400名の参加をいただきました。2013年のプロジェクト発足から毎年開催され、昭和南海地震からちょうど70年となるのを前に、地震で被害のあった田辺市で開催されました。終戦直後の1946年12月21日午前4時19分過ぎに潮岬南方沖(南海トラフ沿いの領域)78 kmM8.0(Mw8.4)の地震でした。過去に発生した南海地震と比較して、被害の規模は小さかったものの、被害は中部以西の日本各地にわたり、高知・徳島・和歌山県を中心に死者・不明者1330名(高知県679名、和歌山県269名、徳島県211名)が出ました、さらに、家屋全壊11591戸、半壊23487戸、流失1451戸、焼失2598戸になりました。津波が静岡県から九州にいたる海岸に来襲し、高知・三重・徳島沿岸で 4 - 6 m に達しました。このシンポジウムでは、2人の研究者が基調講演し、その後パネルディスカッションを行いました。京都大学平原和朗教授は最近の地震活動について、私の方は東日本大震災の教訓を活かした津波防災対策について基調講演しました。避難することの重要性、さらに、避難訓練などを行う場合にも、工夫しながら具体的な課題を見出すことが重要と述べました。パネルディスカッションは、京都大学防災研究所牧紀男教授の進行で、和歌山県の危機管理監と全国でも先進的な防災教育に取り組んでいる田辺市立新庄中学校の校長がパネリストとして参加し、議論を深めました。これまで地域学習と防災学習を並列で考えてきたが、地域の学習の中に防災学習を組み込むことが最もふさわしいことを紹介していただきました。

<2017年1月2日>2017年を迎えて
2016年は、東日本大震災の余震として福島県沖での地震・津波が発生、また、西日本においても、熊本・鳥取・和歌山で地震が発生し、被害や影響が出ました。東日本大震災での経験をいま一度しっかり確認し、きちんとした対応(避難、BCPなど)を実施していきたいと思います。さらに、その教訓を首都圏や西日本、海外にも伝え、同じ被害を繰り返さないことを、行政、地域、個人で取り組んでいく必要があると思います。そのために、忘れない努力を行う、家族や地域、企業で話し合い、できる取り組みを始める。サバ・メシの取り組みなどもよい事例であると思います。その活動を周辺に伝えていくことが大切であると思います。
今年の主な予定を紹介します;
3月12日 第2回仙台防災未来フォーラムが仙台国際センターで開催
テーマは;-経験を伝える・共有する・継承する-
5月 国連防災グローバル・プラットフォーム会合がメキシコで開催
仙台防災枠組の実践、グローバルターゲット指標、世界津波の日の活動などが話し合われる
8月 国際津波シンポジウムがバリ島で開催
世界各地で発生している津波およびその被害の実態、メカニズム解明、減災のための技術開発や取り組みが話し合われます。2000名以上の犠牲者を出した1992年のインドネシア・フローレス島で地震・津波から25年を迎えることから、バリで開催。
11月 第2回防災推進国民大会、第1回世界防災フォーラム(仙台国際センター)
「大規模災害への備え~過去に学び未来を拓く」というテーマで実施した東京での第1回をさらに発展させる大会に。そして、2年ごとに仙台で定期開催される「世界防災フォーラム」初開催。海外からも多くご参加いただき、仙台防災枠組等を議論したいと思います。