<2016年12月25日>平成28年を振り返って<後半>
8月27/28日 第1回防災推進国民大会「ぼうさい国大」が、大規模災害への備え~過去に学び未来を拓くというテーマで東大の本郷キャンパスを会場に開催されました。シンポジウム、ワークショッフ?、各種展示・体験型出展等があり、子供や家族連れから専門家まで幅広い来場がありました。来場者約1万2千人、動画の生中継の閲覧者約1万2千人になりました。我々は、東京海上グループと協賛し、産学連携フォーラム「安心・安全を未来につなぐ~東日本大震災等で得られた教訓は活かされているか?」を開催しました。
8月28日 スイス・ダボス防災会議で2017年世界防災フォーラム開催を宣言、今後、隔年でダボスと仙台で開催されます。8月31日 台風10号が発生、日本の南で複雑な動きをし、数日間南寄りの進路をとった後、再び東寄りに進路を変えました。18時前には岩手県大船渡市付近に上陸、暴風だけでなく豪雨が伴い、記録的な降雨が発生しました。気象庁が統計を取り始めて以来初めて東北地方の太平洋側に上陸した台風となりました。岩手県や北海道で洪水や土石流被害が発生し、高齢者などの犠牲者を出してしまいました。避難準備情報などの出し方などが課題に挙がりました。10月「みんなの防災手帳」が、24時間テレビチャリティー委員会の宮城県震災復興チャリティー事業として、今年度は岩沼市、東松島市、亘理町、さらに、埼玉県鴻巣市の全世帯に配布されました。これを受けて、「『みんなの防災手帳』使い方講座」を開催しました。10月21日鳥取中部地震、11月13日NZでの地震が発生、11月22日には、福島県沖での地震・津波が発生しました。これは、東日本大震災での余震であり、正断層型の地震でした。仙台港で1.4mの津波を観測、これを受けて、午前8時9分に津波注意報が警報に切り替えらました。津波警報の出し方等で課題がありました。11月5日、初めての「世界津波の日」WorldTsunami AwarenessDayを迎えました。世界各地で、キャンペーンやシンポジウム、避難訓練などが行われました。

<2016年12月18日>平成28年を振り返って<前半>
平成28年を振り返りたいと思います。災害事例に加えて、地域での様々な活動も紹介したいと思います。まず、3月11日に震災5周年を迎えました。各地で様々な活動が実施されていますが、このあとの継続が課題となっています。メモリアル事業も活動が始まり、復興祈念公園、震災遺構の保存などの議論が進められております。
・3月12日には、『仙台防災未来フォーラム』が開催され、国内外から約1200人が参加、展示などへの参加はのべ2500名になりました。国連防災世界会議で採択された国際行動指針「仙台防災枠組」に基づき、「東北の経験を共有し、世界的な教訓とするため貢献する」議論を実施しました。災害科学国際研究所でも、『東日本大震災5年「震災を忘れない」フォーラム~ともに築く、災害に負けないまち~』を開催しました。
・4月8日、多賀城高校に、防災を専門的に学ぶ「災害科学科」が新設されました。兵庫県立舞子高校(神戸市)に継いで、全国で2校目となります。防災科学を取り入れたカリキュラムや様々な活動を連携して実施しています。多賀城高校の活動は国内外から注目を集めています。
・4月14日、熊本県でM6.5、16日にはM7.3の地震が発生、震度7を2回記録しました。複数の活断層帯(日奈久断層帯、布田川断層帯)での地震になります。その後の余震活動は最多数を記録しています。一連の地震で、倒壊した住宅の下敷きになったり土砂崩れに巻き込まれるなどして、熊本県で合計50人の死亡(直接死)が確認。9月30日時点で、住宅の全壊が8,204棟、半壊が30,390棟、一部破損が139,320棟、になります。災害研では、熊本大学と連携しながら、調査チームやDMATを派遣しました。東北大学災害科学国際研究所は発足から4年が経過し、新しい戦略研究体制~エリア・ユニット制~を構築し、新たなステージへと踏み出しました。教員・研究者個々が蓄積してきた防災・減災の知見を、行政・市民のために活用できるパッケージにして地域に還元していきたいと思います。
・7月16日気仙沼サテライトでの活動が3年目を迎え、「津波研究のいまとこれから」と題した防災文化講演会を実施しました。

<2016年12月11日>みんなの防災手帳、関東地方で初めて配布
『みんなの防災手帳 鴻巣市』は、東北大学災害科学国際研究所の実践的な知見に基づき、各地で展開されてきた実績のある『みんなの防災手帳』に、鴻巣市で特に注意が必要な災害に関する情報を加えてカスタマイズしたものです。また、家族で話し合い、書き込みながら防災力を高めていけるよう工夫されているのも特徴です。さらに、『みんなの防災手帳』の別冊として発刊した『鴻巣市防災マップ』は、「地区別避難所・避難場所マップ」と「地震・洪水・土砂災害ハザードマップ」の2つのパートからなり、日頃生活している地域にどのようなリスクが隠れているかを意識することに役立つものです。鴻巣市は、荒川、利根川という二大河川にはさまれていることから、台風や集中豪雨による風水害に注意を払う必要があります。また、東京湾北部を震源とする地震が、今後30年間に70%の確率で発生するといわれており、鴻巣市でも最大で震度5強の揺れが予想されています。このような災害が発生した際、その被害を最小限に抑えるためには、自助・共助・公助の役割分担と相互連携により、災害対応力を高めることが必要です。11月12日に講演会と使い方講座を開催、200名以上の方に参加していただきました。終了後には、多くの質問もいただき、関心の高さがうかがえました。

<2016年12月4日>福島県沖を震源とする地震及び津波について
・地震メカニズム
2016年11月22日午前5時59分、福島県沖を震源とするM7.4の地震が発生し、福島県・栃木県・茨城県の16市町村で震度5弱を観測。2011年東北地方太平洋沖地震の余震と考えられます。震源の深さは25km、発震機構は北西―南東方向に張力軸を持つ正断層型、日本海溝より陸域側のプレート内にて発生した地震になります。
・津波について
いわき市小名浜で午前6時29分に第一波の引き波が観測され、その後、仙台港で午前8時3分に最大の観測値である1.4m(第2波)が観測されました。2011年東北地方太平洋沖地震以降、東北地方沿岸域において最大の津波を観測した地震となりました。震源の福島県沖に近い福島県沿岸部より遠地の仙台港において最大の津波を観測した原因として、今回の地震の断層の向き(走向)が原因と考えられます。今回の走向は東北東―西南西の走向であり、走向の直行方向に向かって地盤は大きく変動するのです。災害研の数値解析(暫定解)によれば、福島沿岸に沿って伝播する第2波の押し波が仙台湾に侵入し、仙台港付近で増幅を見せていたことが確認できました。
・津波警報の実態と課題
当初、宮城県に発表されていたのは「津波注意報」でしたが、仙台港で午前8時3分に津波の最大の観測値である1.4mが観測されたことを受けて、気象庁は宮城県に発表していた津波注意報を津波警報に切り替えました。我々は津波注意報や津波警報において発表される予想津波高にとらわれず、今回のように局所的に予想よりも高い津波が来ることも考えて、避難行動を実施する必要があると言えます。
・津波避難での実態と課題
今回、自動車避難による交通集中に伴う渋滞の発生が確認されています。また、地震の発生が早朝だったこと、また、午前8時9分に津波警報に切り替えられたこともあり、津波からの避難により発生した交通量に、通勤による交通量が加わったことで渋滞が発生したと思われる事例も確認されています。

<2016年11月27日>神奈川県藤沢市での津波等対策について
先日、藤沢市で防災講演会と沿岸での対策の視察させていただきましたので報告いたします。藤沢市は東京からほぼ50キロ、神奈川県の中央南部に位置し、周囲は6市1町に囲まれ、相模湾の中央部に位置しています。過去、大正関東地震などによる津波を経験し、さらに大きな津波災害の発生も懸念されているため、東日本大震災によって得られた教訓や知見を生かし、津波による犠牲者を減らす取り組みを実施されています。平成26年9月に、地域防災計画の中で津波避難計画が改訂されました。津波災害予防の推進、避難対策計画、避難先、 避難路などが再検討されています。第1波の到達時間が最も早く規模の大きかった「南関東地震」と、到達する津波高が最も高く浸水区域が最大となる「慶長型地震」を想定、さらには房総沖での内閣府モデルなどを対象としています。最大の浸水範囲は4.7km2にもなり、ここには約5万名以上の住民がおります。さらに、観光シーズンには多くの来訪者(恐らく5万名)がおります。対策の主なものは、・津波一時避難場所・津波避難ビルの指定(従来、50箇所程度から210箇所以上に)避難ビルには、簡易トイレなども配布、江ノ島には避難タワー設置、江ノ島水族館屋上(1,000以上)、幼稚園の屋上(1,000以上)。分譲マンションなどにも協力依頼。ただし課題としては、オートロック解除、日常の安全・防犯管理など・電柱やカーブミラーに海抜表示を設置・津波避難路等の指定・設定については、住民が考える津波避難検討を実施、自治会・町内会及び自主防災組織の参画の下、住民との協働により、まちあるきやワークショップ、津波避難訓練等を行いながら避難経路と避難場所の検証を行っています。・災害時に災害情報を迅速に配信するほか、平常時は「普段使い」を前提として地域情報や行政情報などを配信するスマートフォンアプリ「ふじさわ街歩きナビ」を今年2月1日にリリースしました。

<2016年11月20日>特別セッション「世界津波の日」
昨年12月に、国連総会は11月5日を世界津波の日World Tsunami Awareness Dayを制定し、今年初めての日を迎えました。インド・ニューデリーで第7回アジア防災閣僚会合が開催され、その中で特別セッションが開催されました。主催は国際防災戦略事務局であり、日本政府やユネスコ、IOC(政府間海洋学委員会)が共催しました。津波は、過去100年で58を数え、26万人の犠牲者を出しています。1つの災害で平均約4600名もの犠牲者を出している災害であり、他に類がありません。津波は国境を越えて伝播し影響を与えますので、まさに、国際的な協力が不可欠であります。このセッションは2つに分かれており、前半は、警報システム、訓練、科学的な研究および成果、後半は、犠牲者を軽減させるための具体的な事例について議論を行いました。 津波警報システムについては、2004年インド洋大津波で多くの犠牲者を出したインド国での紹介があり、現在では、周辺国と連携し、地震や津波の観測を行いながら警報をリアルタイムに出せるセンターが設置され、その活動が紹介されました。ただし、5年経過した今津波に関する意識も低下しており、自然災害の中でも、情報を出したり避難を呼びかけることが難しい災害であることも報告されました。 さらに、セーシェル共和国での津波避難訓練の紹介がありました。 観光産業国として治安もよく、災害の経験も少ない地域ですが、2004年インド洋大津波の時は津波が到達しており、沿岸部に被害がありました。そのため今回、津波避難訓練を初めて実施しています。ヨーロッパ圏からの観光客が多く、土地観のない観光客に向けた避難誘導標識の設置、緊急時の避難所の設置、避難用ハザードマップの作成などを行っていきます。私からは、グローバル津波評価(過去400年間)を実施した結果を報告しました。過去 400 年間に、リスボン、チリやアメリカ西海岸でも大きな津波被害が発生していたこと、今後、広範な地域で津波の危険性に対し注意する必要があることを示しました。最後に、仙台市の伊藤副市長が、現在の仙台市での復興状況を報告し、避難タワー、浸水マップの作成、訓練の実施などの具体的な報告をされました。

<2016年11月13日>アジア防災閣僚会議について
世界で過去30年間(1982~2011年)に発生した災害のうち、件数で約4割、死者数で約5割、被害額で約5割、被災者数で約9割がアジア地域で発生しています。そのため、2005年からアジア地域における「兵庫行動枠組」の推進を図るため、各国が持ち回りでアジア防災閣僚会議を開催しています。今回は、アジア地域における「仙台防災枠組」の推進をはかるため、11月2日~5日、インドのニューデリーで、第7回アジア防災閣僚会議が開催されました。インドのモディ首相のほか、日本の二階自民党幹事長らが出席し、防災や減災への取り組みの向上を目指すデリー宣言の採択に向けて議論しました。アジア・太平洋地域など約60カ国からの代表や防災専門家ら約1100人を含む計約4000人が参加しました。二階幹事長は演説で「アジア諸国は、津波をはじめ多くの自然災害の脅威にさらされている。今後も災害の発生の可能性があり、多くのつらい経験とそれを乗り越えた知見を蓄積、共有化し、少しでも被害低減を図る必要がある」と述べました。そのため、「世界津波の日(World Tsunami Awareness Day)」を提唱し、昨年12月に国連総会で制定されました。この11月5日には、世界各地で様々な活動が実施されました。モディ氏も演説し、昨年3月の国連防災世界会議(仙台市)で採択された国際行動指針「仙台防災枠組」の推進などを訴えました。災害研では、東日本大震災などで得られた知見を元に、津波数値解析技術などの研究を行っているグローバル津波評価(過去400年間)の成果を特別セッションで発表しました。(解析結果レポートはIRIDeSのHPに掲載、過去の津波ハザード評価結果をWEB上(地理情報システム:GIS)でも詳細に見ることが出来るシステムを開発した)

<2016年11月6日>津波複合被害の予測・評価研究の動向
東日本大震災の被害実態の教訓から、津波による浸水被害のみならず、津波に伴う複合的な現象の影響評価の重要性が益々高まっています。たとえば、津波に伴う土砂の侵食・堆積は、復旧・復興の弊害や景観破壊に繋がるばかりではなく、土砂移動に伴う地形変化によって、津波そのものの勢いが増大していたことが、スーパーコンピュータ「京」を活用したシミュレーションでわかってきました。また、船舶などの漂流は建物破壊・瓦礫化・燃料流出や津波火災の要因ともなり得ます。スパコン「京」プロジェクトでは、こうした津波複合被害の予測・評価手法を高度化するために、プロジェクトグループの知見を結集して、津波氾濫・漂流物移動・土砂移動を複合的に予測・評価する津波統合モデルを世界で初めて開発し、気仙沼市の複合被害の再現に成功しました。津波統合モデルの開発により、複合的な影響を考慮した津波被害予測の可能性が大いに高まりました。複合被害の予防措置や事後の対応計画の策定に貢献するデータを提供することや、津波複合被害に対するハザード・防災マップの作成を支援するとともに、リスクコミュニケーション・防災啓発・教育へも活用できると期待されます。そして、本年度10月に、プロジェクトグループが再び発足し、津波統合モデル解析の更なる高度化を目指しています。

<2016年10月30日>2016鳥取中部地震について
10月21日午後2時7分ごろ、鳥取県中部で地震が発生し、震度6弱を観測した倉吉市、湯梨浜町、北栄町で家屋の被害がありました。被害の届け出は、1,500件を超えました。大半は瓦屋根が崩れるなどの一部損壊とみられます。23日には、公的支援を受けるために必要な「全壊」「半壊」などを判定する罹災(りさい)証明書発行の手続きも行われています。3市町ではボランティアの受け付けが本格的に始まり、住宅の修理や片付けなどの作業に当たっています。今回の鳥取県中部の地震は「これまで知られていない長さ10キロ以上の断層がずれて起きた」とする見解が示されています。周辺にはM7以上の大地震を起こす恐れがあるとされる長さ20キロ以上の主要活断層はありません。ただし、2000年に発生した鳥取西部地震(M7.3、負傷者182名、全壊435棟)も、同様に地震前に断層の存在が知られていない場所で起きています。地震調査委員会は、今年7月中国地方の活断層を対象に、今後30年以内にM6.8以上の地震が起きる確率を公表し、同県など北部区域の確率を40%と高く算定していました。過去の地震を振り返りますと、第二次世界大戦中の1943年9月、鳥取地震が発生、震源が極めて浅く、鳥取市で震度6、遠く瀬戸内海沿岸の岡山市でも震度5を記録しました。翌1944年12月には昭和東南海地震、続いて三河地震、南海地震と1945年の敗戦前後にかけて4年連続で1,000名を超える死者を出した4大地震が発生しています。

<2016年10月23日>「みんなの防災手帳」の活用講座など
災害科学国際研究所では、産官学のプロジェクト推進のひとつとして、「生きる力」市民運動化プロジェクト活動を展開しています。この活動の一環・成果として開発している「みんなの防災手帳」が、24時間テレビチャリティー委員会の宮城県震災復興チャリティー事業として、今年度は岩沼市、東松島市、亘理町の全世帯に配布されました。これを受けて、3日間(のべ5回)、「『みんなの防災手帳』使い方講座」を開催しました。8月18日には悠里館(亘理町郷土資料館)、19日に東松島市役所、21日に岩沼市役所全3会場で行われ、約250名以上の参加をいただきました。講師は、災害科学国際研究所の佐藤翔輔助教や大学院生が務めました。「みんなの防災手帳」は、「防災家族会議」を行うためのツールでもありますが、それぞれの地域でさまざまな活用方法が考えられると思っています。そこで、自主防災組織のリーダーや行政職員の方々に参加していただき、地域で「防災家族会議のやり方」を広めてもらうことを意図して企画されました。参加者からは、「地域の自主防災会で早速実践してみたい」「これを使うと、家族会議が簡単に行える」「講座を受けて、はじめて便利さに気づいた」などのご感想をいただきました。

<2016年10月16日>「みんなの防災手帳」の近況報告
以前もご紹介した「みんなの防災手帳」について近況を報告いたします。被災者の声を聴き、自治体情報と連動した、初の“実践的防災手帳”になります。「みんなの防災手帳」は、東日本大震災をはじめとする様々な自然災害の研究成果を活かしながら、災害意識の啓発を行うともに、発災後の迅速な復旧・復興につながる“実践的”なツールです。時間軸に沿った全7章で構成され、そのうち6章は汎用性の高い防災・減災対策情報を盛り込み、別冊として各自治体のオリジナル情報を挟み込んで完成します。平成25年に立ち上げた「『生きる力』市民運動化プロジェクト」から、学術的に明らかにされた6つの生きる力をベースに「みんなの防災手帳」という成果が生まれました。
【1】地震や津波などからの避難方法を紹介する「10時間」、けがの応急手当てやトイレの確保などが必要になる「100時間」といったように、災害の発生前から復旧・復興までが時間軸によって編集され、それぞれの段階で必要な情報が盛り込まれています。
【2】被災した時でもすぐに読めるようにイラストを多用し、文章は約140文字で簡潔にまとめられています。
【3】ほとんどのページに、東日本大震災の教訓を伝える被災者の声を短くまとめたコラムを掲載するという工夫を行っています。
平成26年3月に宮城県多賀城市で全戸(6万戸)に配布され、現在は、宮崎県高鍋町(9千戸)、岩手県全自治体(沿岸部11万戸および内陸41万戸)、埼玉県鴻巣市(5万戸)、そして、今年、宮城県東松島市・岩沼市・亘理町(合計で5万戸)に展開され、配布戸数は70万戸を超えました。岩手および宮城での配布は24時間テレビチャリティー委員会からのご支援をいただいております。最近も過去に経験のない災害が発生し、尊い命が失われています。自然災害の脅威を科学的知識として理解し、それに対する事前の備えを行うこと、そしていざという時に、生きぬくための正しい判断と行動ができる知力・気力・体力・コミュニケーション能力を高めることが不可欠であります。これらの能力こそが“災害と共存して「生きる力」”であると考えます。

<2016年10月9日>慶長年間の地震・津波について
東日本大震災発生後に、熊本で地震が発生し、専門家の中には、慶長の時代の一連の地震と重ねる方がおられます。慶長年間(1596年-1615年)に起こった一連の地震は「慶長大地震」とも呼ばれています。(正確には慶長伊予地震、慶長豊後地震、慶長伏見地震発生は文禄5年であり、その後、これらの天変地異を期に文禄から慶長に改元)。以下が慶長大地震になります。
【1】慶長伊予地震 - 1596年9月1日、伊予国をおそった地震。M 7.0、寺社倒壊等。中央構造線沿いで発生したと推定される地震。
【2】慶長豊後地震(大分地震)- 1596年9月4日、豊後国をおそった地震。M 7.0~7.8、死者700人以上。中央構造線と連続している可能性もある、別府湾-日出生断層帯で発生した(上記地震との)連動型地震とされる。
【3】慶長伏見地震1596年9月5日、近畿地方をおそった地震。M 7.0~7.1、京都や堺で死者1,000人以上。伏見城の天守や石垣が損壊、余震が翌年春まで続く。上記二つの地震に誘発されて発生した可能性がある。
【4】慶長地震- 1605年2月3日、南海トラフ巨大地震の一つとされてきたが、伊豆小笠原海溝付近震源説や津波地震、遠地津波説など異論もある。地震動による被害は少なかったが、現在の千葉県から九州に至る広範囲の太平洋岸に津波が襲来し、死者1?2万人を数えた。
【5】会津地震(慶長会津地震) - 1611年9月27日、会津地方をおそった直下型地震。M 6.9。寺社損壊、死者約3,700人。
【6】慶長奥州地震(慶長三陸地震津波)1611年12月2日に三陸沖を震源として発生した地震でM8.1(8.1-8.7の諸説あり)。ただし、津波痕跡の範囲などからこの従来の定説(三陸沖)に疑義があるとされ、さらに広い範囲である奥州に名称を変更している。北海道の千島沖での地震との連動も議論されている。

<2016年10月2日>台風10号の被害について
平成28年台風第10号は、日本の南で複雑な動きをした台風であり、数日間、南寄りの進路を通った後、再び東寄りに進路を変えました。8月30日18時前には岩手県大船渡市付近に上陸しました。暴風だけでなく豪雨が伴い、記録的な降雨が発生しました。気象庁が統計を取り始めて以来初めて東北地方の太平洋側に上陸した台風となりました。この台風の上陸で8月に日本に上陸した台風は4個となり、これは1962年(昭和37年)以来、54年振りの観測となったのです、北海道では、8月17日から23日の1週間で台風7号(17日上陸)、11号(21日上陸)、9号(23日上陸)が上陸し、更にこの10号でも大雨となりました。その結果、JR北海道の各線で路盤流出、橋梁流失、土砂流入、盛土崩壊、倒木、架線損傷・切断、電柱倒壊、護岸変状・崩壊が相次いで発生し、道東を中心に路線網が寸断されてしまいました。さらに、岩手県では岩泉町を中心に甚大な被害が出ました。岩手県内で20人の死亡が確認され、4人が行方不明となりました(9月15日現在)。岩泉町の高齢者施設の近くを流れる川が氾濫し、施設内に水が流れ込んだため、入居者の男女9人の死亡が8月31日確認されたのです。私は、9月4日に現場調査やヒアリングを実施させていただき、岩泉町向地区や乙茂地区、小本川沿いの地域の被災実態を調べてきました。浸水域は流木などが多く一部で洗掘もみられました。当日の濁流の勢いが推察されます。当日の情報の流れ、避難体制、復旧・復興のあり方などについて継続的に調べたいと思っております。

<2016年9月25日>防災功労者表彰と防災意識の現状
9月12日、総理大臣官邸で「平成28年防災功労者内閣総理大臣表彰式」に出席し、安倍総理大臣から表彰を受けました。防災功労者内閣総理大臣表彰は、災害時における人命救助や被害の拡大防止等の防災活動の実施、平時における防災思想の普及又は防災体制の整備の面で貢献し、特にその功績が顕著であると認められる団体又は個人を対象として表彰するものです。今年は、4個人、38団体が表彰されました。私につきましては、「低頻度大災害である津波災害に対して、発生・伝播メカニズムから予測さらには被害軽減までを総合化した学問分野である津波工学を立ちあげた。また、東日本大震災の発生から約1年後の平成24年4月に東北大学災害科学国際研究所の発足に携わると共に、第2期所長として広域大災害に対する知見と教訓をまとめ、被災地域での復興計画やや法律立案に貢献した。さらに、その成果を国内外に発信し、数値解析の技術移転、津波警報体制、ハザードマップ、総合防災対策などの支援を行い、世界各地での被害軽減に多大な貢献をした。」ことが評価されました。このように防災意識の啓発のための取り組みが進んでいますが、先日、大和ハウス工業から興味深いアンケート結果が発表されました。防災に関する知識が向上し、非常時のために非常持ち出し品や備蓄品は備えるようになりましたが、耐震化、避難訓練への参加など、費用のかかる対応や地域での取り組みなどへの行動は非常に低い結果になりました。実際に、被害軽減に資する対応を整理し、実行できるような啓発活動が必要であると思います。

<2016年9月18日>第1回防災推進国民大会での産学連携フォーラムについて
8月27日・28日に東京大学本郷キャンパスを会場に行われた第1回防災推進国民大会において、東京海上グループ・東北大学「産学連携フォーラム」を開催しました。「安心・安全を未来につなぐ~東日本大震災等で得られた教訓は活かされているか?」をテーマに、東日本大震災をはじめとした最近の我が国の災害の実態とそこで残された課題と教訓についてのパネルディスカッションを行いました。現在、我が国には防災に関わる多様なステークホルダーがおり、様々な交流・協力や情報交換がなされ、過去における問題の多くに対して解決が試みられています。しかしながら、各現場では防災・減災の担当者が少なく、人事異動等により当時の経験・ノウハウなどが継続されていない実態や、将来への投資(予防)が出来ない状況が報告されました。このような状況を改善するために、フォーラムで議論を重ね、得られた提言を以下にまとめました。
・ 防災分野において、災害についての知識・知見を深めて対応力を向上するために産学連携をさらに高め、行政のサポートだけでなく先導的な役割も担って行く。
・ 我が国での自然災害リスク評価の下に軽減を具体的に図るためには、各事業体や組織のトップ・リーダーが先導してBCPやBCMなどの策定を行うことが不可欠である。将来でのリスクに対する対応を明確にし、それに相当する投資を行わなければならない。
・ 現場では防災を担う人材を配置し、過去の経験や教訓を継続して防災意識の維持・向上や将来の災害に対する対応の中核に置く。リスクマネジメント・災害対応の実務経験を積むことに加えて既存の資格制度(日本防災士など)を活用し、担当者がキャリアアップや昇進できるような制度を整備する。
・ 国民の防災意識向上のためには、一日前プロジェクトやみんなの防災手帳など経験・教訓を分かりやすく伝える工夫が必要であり、メディアと連携した情報発信が不可欠となる。

<2016年9月11日>昨年の9.11豪雨災害
9月7日に発生した台風18号は9日に東海地方へ上陸したのち、同日夜に日本海で温帯低気圧になりましたが、その後、豪雨災害を生じさせました。いわゆる、線状降水帯が発生し、関東地方北部から東北地方南部を中心として24時間雨量が300ミリ以上の豪雨とそれに伴う大規模な被害をもたらしたのです。気象庁は、「平成27年9月関東・東北豪雨」と命名しました。気象庁は、10日0時20分栃木県全域に、さらに7時45分には茨城県のほぼ全域に大雨特別警報を発表しました。常総市では鬼怒川と小貝川に挟まれた市の約1/3の面積に相当する約40km2が浸水し、常総市役所も孤立したのです。堤防決壊の主な要因は堤防を「越水」した洪水により、堤体が削り取られたことであり、助長した可能性のある要因としては、堤防下部の砂質土に「浸透」した水により発生するパイピングが挙げられています。宅地及び公共施設等の浸水が概ね解消するまでに10日を要し、避難の遅れ等により、多くの住民が孤立し、約4,300人が救助されました。その後、雨の範囲は次第に東北地方に移り、11日3時20分、宮城県にも大雨特別警報が出されました。東北での特別警報発令は2013年8月の制度開始後初めてです。県内では川の氾濫や崖崩れが各地で発生し、栗原市では1人が死亡、1人が行方不明となりました。大崎市では渋井川の堤防が決壊し、住宅地が冠水、救助を求める住民からの通報が相次ぎました。仙台市は一時、約41万人に避難勧告を出しています。今後、温暖化により短時間強雨の頻度の増加が見込まれることから、一層の防災力の強化が望まれます。

<2016年9月4日>世界防災フォーラム、仙台で定期開催へ
2015年3月の第3回国連防災会議では延べ15万人を超える参加があり、市民参加の国際会議として評価され、今後15年間の世界の防災戦略の規範である仙台防災枠組が採択されました。これを受けて、市民と「共に考える防災の未来‐私たちの仙台防災枠組講義シリーズ」も始まりました。さらに2年に一度、防災枠組を議論する定期的な国際会議の開催が検討されています。特に、東日本大震災の教訓を世界と共有するため、防災を幅広く議論する国際会議を仙台市で定期開催する構想です。東北大災害科学国際研究所、仙台市、それに国際組織「グローバルリスクフォーラム」(GRF)などが実行委員会を組織し、2017年11月下旬に初開催で、その後は隔年で開く予定です。GRFはスイス・ダボス市に拠点を置き、国連会議とも連動した世界的な防災会議「国際災害・リスクフォーラム」(IDRC)を2006年からダボスで隔年開催しています。仙台開催の新しい国際会議は、IDRCを誘致する形でダボス非開催年に開くことになります。新設の世界防災フォーラム(仮称)は、責務に応え、被災地と世界の交流、知見の集約と発信を継続的に担う場としたいと思います。特に、専門的な議論だけでなく、産学官民の団体や市民が広く参加する防災啓発行事も計画されています。仙台防災枠組の柱である、防災投資やより良い復興「Built Back Better」の考え方を含めた包括的な取り組みの推進を目的とします。さらに、防災の主流化を実現していきたいと思います。

<2016年8月28日>ダボス防災会議について
毎年1月に開催される世界経済フォーラム(World Economic Forum)年次総会はダボス会議として有名です。ここでも防災・減災についての関心は高まり、グローバルリスクレポート2015が出されています。今回は防災関係のダボス会議を紹介します。ダボスでの国際防災会議「国際災害・リスクフォーラム」には、約100か国から政府高官や防災の専門家ら1000名以上が参加します。2006年から2年に一度開催され「変化する世界における統合的リスク管理」をテーマに、災害管理とリスク軽減に関するさまざまな分野における最先端の知識や戦略、優良事例などを交換しています。
実施組織:Global Risk Forum (GRF Davos)、共催機関:大学や連携機関を中心に7機関(デンバー大、バージニア工科大、EUR-OPA(欧州の各国および国連機関が加盟)、スイス再保険、東北大災害科学国際研究所、主なテーマは、都市における自然災害、技術リスク、重要なインフラ、テロ、観光対策、生態系保全、災害による産業事故リスク(原発など)、防災保険、防災と気候変動対策の調和で、横断的テーマとしては、脆弱性(Vulnerability)と強靭性(Resilience)、安全対策とセキュリティー、教育・訓練、防災における包括的な対策などがあります。この会議では、以下の3つの場が設定されています。①Plenary Session:特定の機関の企画により、テーマに沿ったセッション②分科会(Parallel)Session:特定のテーマで集まった小規模なセッション③基調講演(Keynote Lecture):事務局サイドでの決め、参加を招聘し講演。

<2016年8月21日>第1回防災推進国民大会について
我が国の防災力を高めるには、政府による対策に加え、国民の防災意識の向上、避難行動の定着等を図ることが重要です。国民一人一人、地域レベルでの防災意識の向上等を図るため、国民各層の多様な団体・機関等が一堂に会し、防災に関するシンポジウムや展示等を行う「第1回防災推進国民大会」が開催されます。開催日は8月27日(土)~28日(日)、会場は東京大学本郷キャンパス(主催:内閣府、防災推進国民会議、防災推進協議会)「大規模災害への備え~過去に学び未来を拓く~」をテーマに、さまざまなシンポジウム、ワークショップ、各種展示・体験型出展等が行われます。経済、教育、行政等の各界代表者による災害への備えと連携に関するシンポジウムが多く企画されていますが、いくつかご紹介いたします。
・全国ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)/多様化する避難の形態に即した支援と連携のあり方について考える。
・災害看護グローバルリーダー養成プログラム/いのちとくらしを支える災害看護- 地域をつなげる防災へのチャレンジ -
・MALCA・旭硝子(ガラスパワーキャンペーン)/マンションは在宅避難の時代へ~マンションの防災力強化と安心安全を実現するために~管理組合等のマンション関係者を対象に、マンションの防災力強化・向上について啓発し、南海トラフ巨大地震等への対策強化を促進し、大地震に負けないマンションライフを実現するための基礎知識を学び、マンションの安全安心を促進するためのセミナーを開催します。

<2016年8月14日>産学で取り組む減災意識啓発活動
本日は、寄附研究部門を兼務している保田真理助手にも来ていただきました。東京海上日動とのコラボレーションについてお話しいただきます。安心安全の社会のためには市民一人一人の、災害に対する理解と日々の備えが欠かせません。そのために、東北大学も東京海上日動も減災意識の啓発活動に取り組んでいます。
*「東京海上日動のぼうさい授業」
東京海上日動グループの社員の皆さんがボランティア活動として、自分の担当する地域の小学校に出向いて、ぼうさいの授業をしています。最初は、メカニズムやこれまでの災害事例の紹介とランドセルを使った身の守り方などの指導が中心でしたが、最近は実際に災害による被害を経験した方が学校のある地域でのエピソードを紹介したり、大学とのコラボでコンピュータグラフィックや実験映像を使って分かりやすく解説しています。4人くらいのリレー方式で授業を進めていて楽しいです。
*東北大学の減災ポケット「結」プロジェクト減災教育出前授業
東北大学が実施している減災ポケット「結」プロジェクト減災教育出前授業も今年で3年目になります。今年からは岩手県の小学生も対象となりました。これまで、約9,000名の児童と一緒に減災を考えてきましたが、児童一人一人が本気で減災活動に取り組むように道筋をつけるためには、言葉でたくさん説明するのではなく、どういう危険が考えられるのか?どうしたらその危険を取り除くことができるのか?そのためにはどうすれば良いのか?など気づきをもとに設計図を描かせることが有効であることがわかってきました。現在実施しているアンケート調査では、災害の経験がある児童は減災意識が高まっていく傾向にあります。これをもとに、災害のイメージをしっかりと持たせる工夫をしていきたいです。

<2016年8月7日>気仙沼での防災文化講演会~沿岸部での防災対応のこれから~
津波研究のいまとこれから、今後何に取り組むべきか・・・。やはり、情報(内容と提供方法)、理解と認知(知識と判断力を向上)、避難計画の作成などが重要になってきます。アナワット准教授とナット研究員は、東日本大震災による気仙沼市における被害データを利用したモバイルアプリケーション(津波防災ツール)を開発中です。今後の津波避難訓練、復興計画、津波リスク評価、避難施設設計等に貢献し、これまでの研究成果を一般に広く活用してもらうことを目的としています。次に、保田真理助手による「災害に靭い地域づくり-災害への理解と備え-」では、防災教育で、知識と判断力の向上をはかることの重要性が語られました。科学技術をほとんど持たない祖先は災害とどう向き合ってきたのでしょうか?低い土地から高台に移住し、石碑を建てて子孫に警鐘を鳴らしました。日頃から助け合い小さな自然の変化に気を配り、自分たちの力で生きる努力をしてきたのではないでしょうか?過去の歴史を知ることも大切です。最後に、安倍助手と大学院生の牧野嶋さんによる「気仙沼市での津波避難シミュレーションと、地域でつくる津波避難計画」。当時の映像や写真などから渋滞状況を明らかにし、車と歩行者が混在する状況下の人と車の避難行動シミュレーションを行い、渋滞の様相などのコンピューター上での再現に取り組みました。気仙沼市内では、各地で震災後の津波避難計画を議論するワークショップが開催され、避難のための新しいマップが作られていますが、避難計画とシミュレーションの将来の接点について考えました。講演会に参加された方々からも質問や要望、体験の紹介などを頂きました。

<2016年7月31日>気仙沼サテライトと防災文化講演会
東北大学災害科学国際研究所は、東日本大震災の被災地での復興や防災・減災対策の推進に貢献するため、被災された地方自治体と包括的連携協定を締結し、地域連携の取り組みを強化しています。気仙沼市とは2013年7月に協定を締結し、同年10月には、市内に本研究所初のサテライトオフィスを開設しました。本研究所は、気仙沼分室(通称:気仙沼サテライト)を拠点として、最新の研究成果等の発信(定期的な防災文化講演会の開催や、調査研究成果の展示等)と、復興や防災・減災対策に関わる実務者・住民・研究者等との人的交流・情報共有を推進しています。主な活動内容は、■防災対策・津波避難計画への協力 ■震災アーカイブ活動(気仙沼市内の復興状況を記録する活動)■防災教育への協力 ■防災文化講演会の開催です。防災文化講演会では、これまで、大災害時の水産業の事業継続・早期復旧のポイントについて、気仙沼市防災フォーラム~津波防災研究の最前線~、歴史津波と災害伝承、三陸沿岸の津波被害と住居移転-岩手県唐丹村を事例に-、これからの自主防災組織を気仙沼から考えるなどをテーマに行ってきましたが、今月16日には、「津波研究のいまとこれから~東日本大震災はどこまでわかったか、今後何に取り組むべきか~」をテーマに実施しました。「最近の災害等を経験した中での東日本大震災の教訓を繋ぐ役割」「自動車を用いた避難はどこまで有効か?」「津波土砂移動がもたらした津波被害拡大の実態-京コンピューターを活用した数値シミュレーションで明らかに-」など、3つの話題提供を行いました。

<2016年7月24日>津波被害の評価と軽減
本日は、津波工学研究分野のサッパシー・アナワット准教授に来ていただきました。津波による被害は直接被害(人的被害、建物被害、漁船被害など)と間接的な被害(環境被害、風評被害など)に分類できます。2004年インド洋大津波、2011年東日本大震災のような災害により、多面的に多くの被害が発生していますが、津波外力と被害の関係が分かれば、被害の軽減や今後の防災対策に役立てることができます。これまでの研究論文によると、インド洋大津波の時は、浸水深が2mを超えると犠牲者率が急に100%に近いほど上がりましたが、東日本大震災では、過去に発生した津波の経験や津波防災対策の効果により、犠牲者率はそれほど高くありませんでした。建物被害についても同様です。大規模災害が発生した場合でも、被害を軽減することは可能なのです。津波に弱い建物や場所を把握することができれば、より安全な避難場所や避難経路を選定するなどの事前対策ができます。現在、世界各国で適用でき、一般の方でも情報が入手できるモバイルアプリケーションを開発中です。浸水深、建物の構造、階数等を入力すると、想定被害が出てくるしくみです。また、2011年の津波浸水域に入ると画面に注意・警報メッセージ・浸水深・標高が出てくるモバイルアプリケーションの開発にも取り組んでいます。

<2016年7月17日>北海道南西沖地震・津波について
北海道南西沖地震は、1993年(平成5年)7月12日午後10時17分、北海道奥尻郡奥尻町北方沖の日本海海底で発生した地震でした。マグニチュードは7.8(Mw7.7-7.8)、推定震度6(烈震)で、日本海側で発生した地震としては近代以降最大規模になります。震源に近い奥尻島を中心に、火災や津波で大きな被害を出し、死者202人、行方不明者28人を出しました。こうした人的被害のほか、約664億円の甚大な被害を出しました。この震災からの復興については以下のように実施されました。*1993年10月1日 災害復興対策室設置 *1994年(平成6年)度を復興元年と位置づけた各種事業の実施~ここでは、雲仙普賢岳被災地の事例を参考に義援金による見舞金の配分、復興基金が設立されました。主な復興事業は以下の通りです。*津波高により求められた防潮堤の設置、後背地の盛り土とインフラの整備*青苗五区の防災集団移転促進事業による高台移転*当時は、仮設住宅の入居期限2年を越えた例がなく、2年以内に仮設住宅を出られるために逆算して計画を立てられました。

<2016年7月10日>リュックサック型(救命)人命補助アイテム
先週、非常持出品の紹介をしましたが、これを運ぶリュックサックの新しい製品を紹介したいと思います。リュックサック型(救命)人命補助アイテムになります。東日本大震災では、巨大津波により多くの方々が亡くなりました。様々な工夫や対応で命を守ることを実践しなければならないと思っております。その中、一般社団法人DSC(自衛隊応援クラブ)が開発した防災グッズが、フロートバック「子供の笑顔を守る リュックサック型人命補助アイテム」です。特に幼稚園から小学校までの子供たちは身体的に不利な状況が考えられるため対策が必要であります。以下の3つが重要な要素になっています。①浮くこと:津波に押し流されても 体が浮き上がることで窒息死に至らないようになります②簡単装備:地震発生から津波到達までの短い時間内に 誰でも簡単に素早く装着できることが多くの人命を救うことになります③位置情報:目立つ色を使うことで視認性を上げ、夜間には水に反応するライトで存在をアピールすることで早期発見を促すことができます。現在、商品化に向けて、準備が進められています。

<2016年7月3日>災害時に備えたい非常備蓄品と持出品
◎非常備蓄品:非常備蓄品は、救援物資が届くまでの数日間を自給自足できるよう家庭で備蓄しておきましょう。・飲料水(1人1日3リットルを目安に。食べることより飲むことが重要)・非常食(乾パン・アルファ米・レトルト食品・カップめん・菓子類・粉ミルク・離乳食など)・生活用水(ふろの残り湯を利用)・調理用品(カセットコンロ・ガスボンベなど)・その他の生活用品(毛布・ポリタンク・マッチ・ろうそく・トイレットペーパー・雨がっぱ・笛など)
■こんな点に注意:家族の人数×必要日数分が備蓄できているか・定期的に中身を点検しているか(非常食や飲料水の賞味期限など)◎非常持出品:非常持出品は、災害が発生して避難するとき、まず最初に持ち出すべきもので、持ち出しやすいリュックサックなどに入れておきましょう。・飲料水(ミネラルウォーターなど。食べることより飲むことが重要)・必要日数分の非常食(火や水を使わずにすぐ食べられ、保存がきく缶などに入ったもの)・衣類(長そでの上着・下着・靴下など)・応急医薬品(アレルギー体質や持病がある人は常備薬・目薬・傷薬・胃腸薬・風邪薬・消毒液・包帯など)・貴重品類(現金・小銭・印鑑・預金通帳・健康保険証など)・携帯ラジオ、懐中電灯(1人1個必要)予備の乾電池・生活必需品(洗面用具・タオル・眼鏡・入れ歯・生理用品・紙おむつ・ティッシュペーパー・軍手・ビニール袋・代替トイレなど)
■こんな点に注意:持ち出せるか(男性は15キロ、女性は10キロぐらいが目安)・持ち出した時両手が自由になるか(リュックサックなどが好ましい)・定期的に中身を点検しているか(非常食や飲料水の賞味期限、乾電池の使用期限など)・お店で物が買えない状況を想定して、すぐになければ困るものが不足していないか?

<2016年6月26日>海岸林の津波減災効果に関する研究
2011年東北地方太平洋沖地震津波の教訓を踏まえて、多重防御による津波対策の重要性が益々高まっています。このような状況の中で、海岸林などを活用した多重防御の津波防災地域づくり整備事業が沿岸各地にて進められていますが、海岸林が有する津波減衰・減災機能や他の機能との組み合わせを評価した上で展開している整備事業は少ないといえます。これらの状況を踏まえて我々は岩沼市を対象に海岸林を含む多重防御整備事業の減災効果の評価を行いました。海岸林の諸元等に応じた浸水深や津波到達時間の変化を検討し、既往の被害推定手法を用いることで、海岸林の諸元等に応じた建物・人的被害評価を実施、海岸林の津波減災効果を検討しました。
評価結果の一例ですが、
・現況の計画で浸水域や流速の低減効果、到達の遅延効果が十分にある(沿岸から2~3km地点で約2分)
・浸水範囲の低減はみられないが、増設避難丘による流速・流体力などの低減効果を確認
・樹齢を重ねるほど、建物・人的被害率は減少傾向
・建物被害率・・内陸部の地区ほど減少傾向が大きい
・人的被害率・・沿岸地区にて最大約4%減少
ということが確認できました。
こうした現況事業を様々な観点に基づいて評価してこそ、今後、津波が想定される地域において、多重防御整備や海岸林の植林をするときのための基礎情報になることが期待されます。

<2016年6月19日>国連大学(ボン)への訪問について
国連大学は、東京に本部を置く国連の自治機関で、英語の略称はUNU(UN University)
国連およびその加盟国が関心を寄せる、緊急性の高い地球規模課題の解決に取り組むため、共同研究、教育、情報の普及、政策提言を通じて寄与しています。今回は、国連大学環境・人間安全保障研究所(ドイツ・ボン)を訪問しましたが、世界各地に研究所があります
。 国連大学地域統合比較研究所 (UNU-CRIS):ベルギー・ブルージュ
国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所 (UNU-FLORES):ドイツ・ドレスデン
国連大学高等研究所 (UNU-IAS):日本・横浜市
国連大学国際グローバルヘルス研究所 (UNU-IIGH):マレーシア・クアラルンプール
5月25日、東北大学、国連大学、ボン大学の共催によるワークショップ「東日本大震災での教訓と今後の防災・減災への考え」を行いました。ボン大学地理学教授Julia Verneのボン大学での教育研究の紹介から始まり、国連大学副学長Jakob Rhyner教授の挨拶があり、その中で、ヒューマンセキュリティーや自然災害への対応についての東北大学との連携の紹介がありました。話題提供として、東日本大震災の実態と今後の対応について私の方で報告し、その後、地震津波のサイクルについての評価の限界や、防潮堤も含めた津波レジリエンス社会づくりにいての質問がありました。小森大輔准教授から、アジアでの水災害や持続的な地域開発についての話題提供、江川新一教授が過去の災害での医療対応や災害医学の役割についての紹介、ボン大学のWolfgang Hoisgreve病院長からは、トリアージや災害・事故対応の医学・医療についての紹介がありました。翌日、国際共同大学院などの協力(共同講義や共同スパーバイズドスシステム)について議論を行いました。

<2016年6月12日>より実践的な防災訓練・避難訓練を目指して
本日は、災害科学国際研究所 地震津波リスク評価寄附研究部門助手の安倍祥さんにも参加いただき防災訓練・避難訓練の話題を紹介いたします。宮城県では、1978年の宮城県沖地震をきっかけとして、6月12日が「県民防災の日」になりました。今年も、この日、県内各地で防災訓練や避難訓練が行われます。東日本大震災後、防災訓練や避難訓練の重要性が見直され、実際の災害で役に立つように、新しい訓練や、様々な工夫をこらした訓練に取り組むケースが増えています。私たちも、各地で津波避難訓練を展開してきた「カケアガレ!日本」のプロジェクトの中で、様々な防災訓練や避難訓練の「やり方」を集めてきました。避難場所に集まるだけの避難訓練ではなく、夜の暗闇の中で避難する訓練や、避難した場所が避難所になってその運営までも行う訓練、自動車を使って避難する地域では高台に車が実際に集まり、高台に何台駐められて、どう誘導したらスムーズに多くの車が駐車できるだろうか、などのように防災訓練や避難訓練を通じて成果を確かめるような取り組みを見聞きしてきました。これらの訓練の取り組みでは「たくさんの住民に参加してもらう」ことだけが目標ではなく、「夜中でも避難できる」「(津波から逃れるためにいっとき避難した後の)避難所の運営方法を確認する」「車でどれだけの台数が高台に避難できるか確かめる」など、具体的な目標を持って、その目標を確認・検証するような取り組みが見られます。今後も9月の防災の日や、11月の津波防災の日に向けて、様々な防災訓練や避難訓練が行われると思いますが、何かひとつでも、毎回新しい「目標」を持って計画を立てたり、実際に参加して訓練の機会を通じて検証していただきたいと思います。すでに防災訓練などが終わった地域では「次の訓練はどんなことに挑戦しようか」ふり返って話し合われるとよいと思います。そうした積み重ねが、災害時に役立つ、より実践的な防災訓練・避難訓練になると考えています。

<2016年6月05日>避難訓練について-概要
避難訓練とは、突然発生する災害や犯罪、さらにテロや戦争に対して、危険から遠ざかり、命を守るための避難を訓練することになります。避難は、危険から遠ざかる、または避けると言うことですので、まず、どのような状況が危険なのか?または、安全なのか?という知識や情報が重要です。しかしながら、実際に避けるという行動を伴わなければなりませんので、それには訓練が必要になります。建物中で、または野外で、危険を想定して、臨機応変な判断力をつけることが最も大切になります。時間帯や季節さらに天候を上手に選定することも大切です。さらに、個人の場合と集団で行なう行動は異なりますので、それぞれの場合で各自の判断基準を整えておくことが大切です。学校では避難時の心構えをまとめた標語が作られており、「おかしも」などといった標語を用いて、慎重な行動をするように促しています。ちなみに、「おかしも」は「押さない、駆けない、喋らない、戻らない」の頭文字をとったものです。これらの標語は地域や教える学校によって違いはありますが、基本的には「焦らず、冷静に行動・判断を促すこと」が重要なのです。しかし、避難訓練が逆効果になった例があります。東日本大震災で、岩手県釜石市で拠点避難所(津波が収束した後の二次避難所)として指定されている「鵜住居地区防災センター」に避難した住民のうち54名が、津波にのまれて亡くなっています。2010年5月と2011年3月3日(震災のちょうど1週間前)には、高台にある一次避難所(津波発生時の緊急避難所)でなく、この二次避難所を避難先として避難訓練が行われていたのです。高齢者への負担軽減のための配慮だったのですが、逆に誤った刷り込みをうむ結果となってしまいました。

<2016年5月29日>近年の災害で東日本大震災等で得られた教訓は活かされているか
東日本大震災から5年が経ち、これまでに、地震(ネパール、台湾、熊本)、豪雨、火山噴火などが発生しています。災害科学国際研究所では、最近の災害において東日本大震災等で得られた教訓がどのように活かされたのか?活かされなかったのか?という議論をしております。その一部を紹介したいと思います。今回は熊本地震を中心に紹介します。

教訓が活かされた事例は?

(1)食料等の支援物資:発災後数日経過以降、輸送に民間企業の協力を得、避難所に物資輸送を開始 (2)被災者の手続等の特例措置の適用:大規模災害復興法適用による国の業務代行が円滑に実施。国による物資の購入・輸送などが、東日本大震災と類似体制で早期に開始 (3)DMAT、DPAT、慢性医療対応の医師派遣などの医療支援:早期から体系的に実施 (4)自衛隊、テックフォースの派遣など、国の人的支援:早期から実施

教訓が活かされなかった事例は?

食料等の支援の課題:発災直後、膨大な避難者が発生し、指定避難所以外にも避難所ができたこともあり、数日間、行政の手が回らず、民間事業者の活用も早期にできず、避難所で食料が不足する深刻な状況が生じたこと(その後、教訓を活かして改善) (2)避難所での、トイレなど衛生環境の改善、男女別トイレ・更衣室、間仕切りパーディションの導入などが遅れた(その後、教訓を活かして改善) (3)車の避難の解消が遅れ、エコノミー症候群が発生してしまった(新潟県中越地震の教訓があまり活かせていない?) (4)建物の罹災判定・罹災証明の着手が遅くなった(その後、大量の応援で改善へ向かっている)。建物の耐震補強、家具の耐震固定の重要性の教訓があまり活かされていなかった (5)廃棄物処理の広域的な支援体制の実施の遅れ (6)災害ボランティアの需要に見合った募集について (7)本庁舎そのものが被災し、機能低下に陥った (8)メディア情報の偏りやSNSによるデマなどでの情報面の混乱

<2016年5月22日>熊本大学 減災型社会システム実践研究教育センター(IRESC)の紹介
熊本で連続地震が発生して1か月以上経ちました。大きな被害が出ましたが、この地域では、産学官連携の取り組みもあり、その活動は大変に意義のあるものです。まず、熊本大学では実践研究教育センターが立ち上がっていました。災害に柔軟かつ迅速に対応可能な減災型社会の早期実現とその持続的な展開を目的として、幅広く防災・減災に関する研究・教育活動を推進しています。特に、地域社会を実践の場~フィールド・キャンパス~とし、減災型社会システムの構築に資する人材の育成を展開しています。また、熊本政令指定都市内の4大学(熊本大学、熊本県立大学、熊本学園大学、熊本保健科学大学)の連携により「地域の知の拠点」を構築することで継続性のある地域への貢献が始まっていて、平成24年12月に、第1回合同会議が開催されています。ここで、今回の地震災害で活躍している防災リーダーの方々が研修を受けています。熊本地震発生後は、さまざまな被害調査を実施しており、さらに、「被災時の学びの記録」として、地震が発生してから現時点までに感じたことで、(1)「これ、やっておけば良かった」 (2)「これ、やっといて良かった」ことはどんなことかの調査や今回の震災に関連した写真等を広く収集、分類・整理し、今後の震災復興・防災研究・防災教育へ活用を目指しています。

<2016年5月15日>津波解析の応用~生態系への影響評価について
東日本大震災では、宮城県南三陸町志津川湾の藻場は甚大な被害を受けました。特に、大津波の影響により砂場に生息するアマモ場の殆どが消失し、水産業の復興を遅らせる一因ともなっています。ところで、藻場が有する、水質浄化といった水圏環境の調節機能の経済的価値は、約$20000/ha/year であると見積もられています。こうした藻場は浅い海域に生息しているため、高頻度で津波被害を受ける可能性があります。現在、津波外力と藻場被害との関係は明らかにされておらず、藻場被害の予測・評価手法や津波対策は構築されていないのです。そこで、津波土砂移動モデルを用いて、志津川湾の藻場被害に及ぼした津波土砂移動の影響を調べました。アマモの根は約10cm であるため、侵食深が10cm 以上で流失します。現地調査によると、志津川及び戸倉地区の汀線付近に存在したアマモ場の殆どが流失していました。当該地域の侵食深の計算値は10cm 以上であり、侵食が流失原因でありました。このため、アマモを含んだ土砂と一緒に種苗も流失し、アマモ場の再生遅延に影響したと考えられます。現在も志津川湾で生じた藻場被害と津波土砂移動との関連性を調べるとともに、数値モデルの適用可能性について検討しています。本計算による流れ・浸食・堆積の空間分布と藻場の消失・残存の傾向が一致していることがわかり始めました。また、その殆どが流失したアマモ場は、浸食によって土砂と一緒に種苗も流されたため、アマモ場再生の遅れに影響したと考えられます。砂場と岩場を区別した津波土砂移動計算モデルで津波土砂移動が及ぼす藻場への影響評価を検討していきたいと思います。

<2016年5月8日>リアルタイム津波予測研究の動向
文部科学省は、スーパーコンピュータ「京」を開発し、社会的・学術的に大きなブレークスルーが期待できる分野(戦略分野)の検討を行い、以下の5つの分野を決定しました。(1)予測する生命科学・医療および創薬基盤 (2)新物質・エネルギー創成 (3) 防災・減災に資する地球変動予測 (4)次世代ものづくり (5)物質と宇宙の起源と構造。平成21年度に各戦略分野の戦略機関を公募、各戦略機関は平成22年度に準備研究を行い、平成23年度から5年間を本格実施期間として、研究・開発に取り組みました。 防災・減災に資する地球変動予測分野での、スーパーコンピューター「京」を活用したリアルタイム津波予測の研究事例を紹介します。「リアルタイム波源推定の高度化」に関しては、スパコンのパワーを活用することで南海トラフや千島・日本海溝沿いの津波波形グリーン関数の構築に成功し、沖合津波波形の推定精度が格段に向上しました。また、「高速浸水計算」に関しては、たとえば、仙台平野を対象とした浸水予測を2分以内に終了することが可能になりました。今後、これらを避難に必要な情報として活用できるよう、研究成果を社会実装していくことが重要になります。

<2016年5月1日>熊本地震の調査等について
国の地震調査委員会では、すでに2回の臨時委員会を開催しています。(http://www.jishin.go.jp/evaluation/seismicity_monthly/) 4月16日の地震のメカニズム、余震などの活動状況、2つの断層系の今後の動き、大分県での地震活動の活発化、阿蘇山の活動 との関係などを議論しています。災害科学国際研究所でも、さまざまな対応をさせていただいております。4月14日緊急調査ワーキンググループ情報収集チームが活動開始、専用HPを立ち上げました。翌15日、緊急対応会議を開き災害調査対応本部を設置、夕方には、第1チーム(森口、村尾、柴山)を派遣、16日には第2チーム(遠田、岡田)、17日、DMATチームが大分県へ向かいました。活断層調査ク?ルーフ?は、今回の地震によって地表断層か?出現したのを確認しました。この地表断層は、右横す?れ2m、走向はN50°E、布田川断層に沿っており、16日午前1:25に発生した地震によって出現したものと思われます。強震動・建築被害調査チームは、古い建物に被害集中/新しい建物は軽微な被害/活断層沿いに被害が集中/特に瓦屋根の被害が多い/直下型被害地域が拡大/広域化などを指摘しています。災害研の果たす役割は、被災実態調査(活断層、建物被害、医療対応、大学BCP)、2次被害抑止(余震、土砂被害、避難所、衛生での対応)、復旧・復興への支援(広域・地域支援体制、仮設住宅、経済・メンタル支援、古文書などのレスキュー)、熊本大学をはじめとする大学支援(BCP)などを検討しております。特に、東日本大震災の教訓が活きたのかについて注目しています。

<2016年4月24日>平成28年熊本地震について
4月14日21時26分頃に、熊本県熊本地方でマグニチュード(M)6.5の地震が発生しました。この地震で、熊本県益城町で震度7、3か所で震度6弱を観測しました。さらに、16日午前1時25分頃に、熊本県熊本地方で M7.3の地震が発生し、震度6強(のちに7に訂正)を観測したほか、広域で震度6弱~1を観測しました。この時点で、気象庁は14日のものを前震、16日のものを本震としております。過去に当初の発表から訂正され、本震と余震が入れ替わったことは、海溝型地震の東北地方太平洋沖地震においても起こっていますが、地震の観測が開始された1885年以降、内陸型(活断層型)地震で前震がマグニチュード6.5以上となるのは、かつてない異例の事態になります。近接するものだけでなく距離が離れたものと合わせて断層帯が影響しあっているため、前震・本震・余震の区別が難しいという見方もあります。<人的被害> 熊本県内では14日の前震により、益城町と熊本市で計9人の死亡が確認されています。16日の本震では、33人が死亡し、前震とあわせて42人の死亡が確認されました。前震・本震・余震、合わせての死傷者は1100人を超えました(4月19日時点)。<文化財被害>熊本城では、天守閣の屋根瓦が崩れた上にしゃちほこが落下し、石垣が少なくとも6か所で崩れ、塀が100mに渡って倒壊しました。熊本洋学校教師館ジェーンズ邸は、14日の前震で壁が崩壊する被害があり、16日の本震では建物が崩落、阿蘇神社では、重要文化財の楼門と拝殿が全壊しました。

<2016年4月17日>平成28年熊本地震

<2016年4月10日>災害科学国際研究所の新体制「エリア・ユニット制」について
東北大学災害科学国際研究所は発足から4年が経過し、新しい体制(戦略研究体制)を構築することにより、新年度新たなステージへと踏み出しました。「実践的防災学」の確立を掲げて2012年4月に発足した災害研にとっては、基礎研究から本来目標への飛躍の段階になります。教員・研究者個々が蓄積してきた防災・減災の知見を、行政や市民のために活用できるパッケージにして地域に還元していくことになります。研究体制を、 6つのエリア■場/情報/人・組織/もの(システム)/心と体の健康/減災システムと15ユニット(プロジェクト研究)に整理しました。従来の部門分野体制は、基礎研究体制として現状維持し、今までの課題を整理する中、発展的な再編について時間をかけて検討していきます。一方、概算要求(特別研究費)は時限付きプロジェクトであり、新しくエリア・ユニットの体制を整え戦略研究体制とし運営していきます。

<2016年4月3日>震災関連イベントのご紹介
3月13日(日)には、仙台・東北の各地で震災関連イベントが開催されました。いくつか紹介させていただきます。まず、東北大学災害科学国際研究所において、『東日本大震災から5年「震災を忘れない」フォーラム~ともに築く、災害に負けないまち~』を開催しました。本フォーラムは、災害に負けないまちを実現するために、産学官連携による防災啓発・教育の充実、保険・リスクマネジメントの活用、継続的な復興支援の必要性を発信することを目的として行われました。フォーラムでは、まず基調報告「災害科学を起点とした産学官連携による復興・再生」を行い、当研究所および寄附研究部門でのこれまでの取り組みを紹介しました。続いて、国際航業株式会社代表取締役会長の呉文繍氏から、(1) 震災直後と復旧段階における活動(2)災害に負けないまちづくり:インフラ整備・エネルギーマネジメント・コミュニティ形成(3)防災・減災における民間企業に期待される役割:防災の主流化、以上3点を中心とした講演が行われました。さらに、パネルディスカッションでは、「災害に負けないまち」を主題に、各自の震災後5年間の取り組みや課題、今後の防災啓発の在り方について活発な議論が行われました。ここ では、震災時の記録・証言などから得られる教訓を風化させないこと、災害時に必要な被災箇所に適切にボランティアを派遣する仕組みが重要であるといった意見が出ました。また、せんだいメディアテークでは、『JET参加者の震災経験~東日本大震災から5年』というシンポジウムが開催されました。板橋惠子さんをコーディネーターに東日本大震災を経験したJETプログラム参加者による震災経験から復興の取り組みまでを話し合うパネルディスカッションが行われました。

<2016年3月27日>仙台防災未来フォーラムについて
昨年3月の第3回国連防災世界会議から1年となるのを記念し、仙台市が主催する「仙台防災未来フォーラム」が仙台国際センターを会場に開催されました。国内外から約1200人 が参加し、展示などを含めた参加者は、のべ約2500人になりました。オープニングでは、ロバート・グラッサー国連事務総長特別代表(防災担当)の記念講演がありました。グラッサー氏は「震災では、津波が福島の(原発事故による)状況を招いた。世界的に、複合災害/災害の連鎖への対応が防災のポイントになっている」と指摘。防災会議で採択された国際行動指針「仙台防災枠組」に基づき、「東北の経験を共有し、世界的な教訓とするため貢献してほしい」と訴えました。また、女性による防災活動や、震災の教訓の伝承などをテーマに、11のセッションが行われました。東日本大震災を踏まえた海外での災害対応事例を報告するセッションでは、JICA(国際協力機構)の中村明社会基盤・平和構築部長が昨年大地震が起きたネパールへの支援について報告し、「10年以内にさらに大きな地震が予測されており、次のリスクに備えて復興を進める必要がある。世界の災害からともに学び考えていくことが重要だ」と提言。会場には防災・減災に関する大学や企業の取り組みを紹介したり、震災で被災した女性たちが作ったアクセサリーなどを販売したりする55のブースが設けられ、熱心に質問する人の姿も見られました。クロージングでは、各セッションの討論結果を報告していただきました。私がコーディネーターを務めさせていただき、板橋さんにはアドバイザーをお願いいたしました。関西大の河田恵昭教授からもアドバイザーとして多くの助言をいただき、特に「兵庫県の『人と防災未来センター』のような教訓の発信拠点を岩手、宮城、福島のどこかに作るべきだ」との提言をいただきました。最後に「『自分たちの枠組み』を出発点に行動に移し、国内外と連携しながら取り組みの発信を続けていきたい」と総括しました。

<2016年3月20日>高知県での津波避難訓練に参加して
2月20日、高知市で津波避難訓練が実施されました。これは、河北新報が実施している「むすび塾」活動の一環(通算52回目)であり、高知新聞「防災プロジェクトいのぐ」との連携で開催されました。高知では、70年前の1946年に昭和南海地震津波が発生し、大きな被害を生じたことを受けて、今年から「いのぐ」プロジェクトが始まっています。場所は、高知市潮江南(ウシオエミナミ)地区です。一帯は南海トラフ巨大地震の津波被災想定地域で、周囲の高台への避難を想定しました。要援護者や親から離れた場所にいる児童の避難訓練をした後、潮江南小で住民と宮城県から来られた震災の被災者らが訓練の成果や課題を話し合ました。住民からは「車の渋滞が不安」、「大人数が逃げられる広場が高台にない」などの意見が出ました。避難路の沿道には、ブロック塀が目立っていました。震災の被災者からは「ブロック塀は地震で倒れる。対策を急ぐべきだ」との指摘がでました。以下がシナリオです。

9:35 要支援者の自宅に支援者2人が到着、自宅1階にいる車いすの男性を救出し、避難を開始する。<条件付与>自宅近くで火災、火の手が迫っている。→どこに逃げるか。学校か、山の避難所か?→3人で話し合い、避難場所を決める。 山の避難所の坂道は急で上がれなかった場合どうするか?

9:35 親子訓練スタート。主催者メンバーは姉妹の動きを追う。揺れの3分間は姉妹は公園から動かない。<条件付与>お父さんは疲れて家で寝ていた。近くの学 校に火の手が迫る→途中、親子が会えたらどう3人で行動するのか?

<2016年3月13日>東日本大震災から5年を迎えてー今後の動向
震災から5年、 防災・減災に関する現在と今後の活動を紹介します。
○ カケアガレ日本!
東日本大震災によって甚大な被害を受けた被災地・東北において、巨大津波災害の教訓や経験を活かした津波避難訓練プログラムを実施し体系化することを目的としています。東北以外への波及や協力も実施しています。実際に避難することで、津波避難における地域ごとの課題の解決を目指し、避難行動が記録や記憶だけでなく「習慣」として地域で代々受け継がれていく仕組みを構築したいと思っています。さらに、このプログラムを、今後巨大津波が想定される全国各地(国内外)に普及・拡大させていくことで、東日本大震災の教訓を活かした災害に強い社会を実現したいと考えています。
○災害伝承プロジェクトについて
災害伝承を行う上で、情報の収集、分析・要約、可視化までの一連からなる「効果的な災害伝承に関する編集モデルとは何か」を明らかにすることが大切です。継続的な利用者を確保するための「効果的な災害伝承に関するマーケティングモデルとは何か」を検討していきたいと思います。災害研の佐藤翔輔先生を中心に、石巻市や東松島市で検討が始まっています。最終的には、利用者の防災・減災意識の変化をもたらす「災害伝承による効果的な防災意識変容モデルとは何かを探っていきます。
○産学官民+メディアの連携
平成27年4月から「みやぎ防災・減災円卓会議」が始まりました。宮城県内の産学官と報道機関、市民団体などの防災関係者が研究や活動を共有する取り組みです。昨年3月に開催された国連防災世界会議の成功を受けて、ここで築き上げた連携を継続し発展していきます。現在、45団体、約80人の登録メンバーらが参加しています。

<2016年3月6日>震災から5年を迎える復興の状況・各地での取り組みについて
東日本大震災は、M(マグニチュード)9の巨大地震とそれによる巨大津波、そして原発事故と、広域で複合的な災害になりました。これは、人類で初めでの災害とも言えます。まもなく5年、復旧から復興へと取り組みが進んでいますが、その状況はさまざまです。いくつかの項目について紹介したいと思います。
○まちづくり
 震災を繰り返さないために、高地などへの集団移転、多重防御、コンパクトシティー化などの事業が進んでいます。防潮堤などをはじめ多くの事業が進み、住民間で議論をしながら実施されています。先進的に進められている地域としては、東松島市や岩沼市が挙げられます。東松島市は各地域の協議会と強い連携を図り、まちのデザインを主体的に実施しています。がれき処理においても、集約をする前に現場で処理をするなど、過去の災害の教訓を生かしています。岩沼市は、 障害者、高齢者を地域から切り離して仮設住宅や災害公営住宅に入居させたりせず、最後まで「集落単位」を貫きました。
○加速する集落営農
 津波で浸水した仙台市東部地区で最も復旧が遅れていた約200ヘクタールの水田で2014年には田植えが行われました。この地区では集落組合、農事組合法人、株式会社の計20団体が営農を再開、大区画化を進めています。
○水産~ハサップにも対応
 水産業は水揚げも施設再整備も震災前の水準に近づいてきました。しかし、販路については厳しいようです。その中で、再建された石巻魚市場の全面運用が始まりました。国際的な食品衛生管理方式「HACCP(ハサップ)」にも対応可能な高度衛生管理型施設です。高付加価値の水産物出荷を目指しています。
○メモリアル事業
 復興祈念公園、震災遺構の保存などが議論され進められています。また、被災地では語り部などの活動も続いています。2月13日には、「せんだい3.11メモリアル交流館」が、地下鉄荒井駅構内にオープンしました。交流・常設展示としては、仙台では初めての場所になります。2階展示室では企画展「分かち持つ記憶」が開催されており、多くの方が訪れています。訪問者のほとんどは、パネルや展示を丁寧に見られており、当時の状況に思いを馳せておられました。

<2016年2月28日>東日本大震災後の地震・津波研究の動向について
東日本大震災後に地震・津波研究に関する課題が残され、現在、さまざまなな活動が行われています。本日は、そのおもなものを紹介します。まず、地震についての課題としては、低頻度大規模地震を十分に考慮できていなかったということになります。過去の400年程度の繰り返しの中で、地震の予測と評価が行われましたが、M9クラスの巨大地震については、予測できませんでした。なお、地震動(震度)については、最大7も観測されましたが、揺れによる被害は最低限であり、耐震化や揺れによる対応の効果が出たものと考えます。今後は、海溝型地震を対象とした地震発生予測を高精度化すること、さらに調査観測することが指摘されています。また、仙台市などで発生した住宅造成地でのすべり被害への予測と対応が必要です。次に、津波についての課題は、地震発生後数分程度で津波警報が気象庁から発表されましたが、地震計で得られるデータに基づく推定のためその精度は必ずしも良いものではありませんでした。さらに、GPS波浪計が津波を直接検知し津波警報の更新に活用されましたが、沿岸から約20kmの 距離に設置されていることから、住民には十分余裕をもって情報を出せませんでした。今後の課題としては、地震発生直後に出される津波即時予測(津波予報警報)の信頼性の向上と地震が発生する前に提供する津波予測(将来)があります。前者については。S?NETなどのリアルタイム観測の充実があり、後者については、地震調査委員会、津波評価部会での検討(津波波源の特性化による津波の予測や評価)が進められています。ただし、迅速性と正確性は両立が困難であり、短時間での予測には推定誤差があるので、これに対してどのように周知し対応できるかが重要になります。

<2016年2月21日>JICAと連携した地震・津波研修を継続中(国際貢献)
国立研究開発法人建築研究所国際地震工学センター(IISEE)は、地震・津波災害軽減のために開発途上国の研究者・技術者に対して地震学、地震工学及び津波防災に関する研修を独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力して実施しています。現在、地震工学研修と中南米地震工学研修、グローバル地震観測研修、個別研修の4研修が実施されています。1960年に東京で開催された第2回世界地震工学会議の際に、地震学・地震工学を学ぶ途上国の若手研究者に対する地震工学研修の必要性が議論・認識されました。これを 受けて同年、第1回の国際地震工学研修が「地震学コース」と「地震工学コース」に分けて東京大学で実施されました。この研修成果が国際的な反響を呼び、政府は1962年1月に建築研究所の中に国際地震工学部(現在の国際地震工学センター:IISEE)を作り、海外技術協力事業団(現在の国際協力機構)と協力して継続実施することにしたものです。これまでの研修修了生は、2014年時点で99の国と地域から1,618名におよんでいます。このうち、地震学・地震工学研修については1960年の開始で1045名、津波研修は、インド洋大津波発生から2年後の2006年から開始し、33名になっています。修士研究を東北大で実施された方も多くおられ、先日行った津波研修には、フィリピン、エクアドル、ニカラグアからの研修生が派遣され、東日本大震災の影響を受けた地域の視察も行っています。

<2016年2月14日>北海道~関東地方の沖合で周期的なスロースリップを発見!
今年1月29日に、研究成果のプレスリリースがありました。この発表は、東日本大震災での地震メカニズム解明に重要なだけでなく、将来の地震発生の予測にもつながる研修成果です。東北大学大学院理学研究科また災害科学国際研究所の内田直希助教、日野亮太教授、JAMSTECの飯沼卓史研究員らのグループは、 カリフォルニア大学バークレー校のRoland Burgmann教授、 Robert Nadeau博士とともに、地震および地殻変動データから、北海道~関東地方の沖合のプレート境界断層の広い範囲で、周期的な「スロースリップ」が発生していることを発見されました。「スロースリップ」は、人間が感じるような揺れを起こさずにゆっくりと地中の断層がずれ動く現象ですが、これまで北海道・東北地方の太平洋側では広域にわたる周期的スロースリップの発生は知られていませんでした。今回発見されたスロースリップは、地域によって異なり、1~6年の発生間隔を持ちます。その発生に同期してその地域でのM5以上の規模の大きな地震の活動が活発化しており、東北地方太平洋沖地震が発生した時期にも、三陸沖ではスリップが発生していました。このように周期的なスロースリップが発生しているときに大地震が起こりやすくなるという傾向を活用すれば、それを地震・地殻変動観測で検知することによって、大地震発生時期の予測の高度化に貢献できる可能性があります。この研究成果は、1月29日の米国の科学雑誌「Science」電子版に掲載されました。

<2016年2月7日>地震の観測~衛星を利用した地殻変動の観測について~
地震が発生すると、地震動という揺れ(動き)の他、地殻変動という変位が生じます。広い領域で小さい地殻変動(地盤の上下や水平の変化)の測定は簡単ではありません。現在、陸上では水準測量、三角測量に加えて、衛星によるGPS・GNSSの観測があります。さらに、水管傾斜計、石英管伸縮計によって長期間にわたり観測されてもいます。この地殻変動観測は、地震の活動と関係しますので活動の状況や予知、さらにはプレート運動の研究などに生かされています。ここで、GPSとGNSSの違いについて説明します。GPS(Global Positioning System;全(汎)地球測位システム)は、米軍が運用している衛星航法システムで、18~24機の衛星で構成。1973年に開発開始、1978年より実用衛星の配備を開始しています。元来は軍用で、当初より軍民共用を念頭に置いて開発されたものです。GNSS(Global Navigation Satellite System;全地球型測位システム、全世界的航法衛星システムは、民間航空航法に使用可能な性能(精度・信頼性)を持つ衛星航法システムで、より一般的な総称です。
一般には、GPS/GLONASS/Galileo/各種補強システムの総称。国土地理院が定める公共測量に係る作業規程の準則においては、従来の「GPS測量」の用語に代えて、2011年4月からは「GNSS測量」の用語を使用するように改訂されています。さて、地殻変動は地震の前段階の現象としても注目されています。とくに茂木清夫教授が1944年の東南海地震直前の水準測量データを検証し、地震の前には異常な地殻の変動が発生すると指摘してから、日本では地震予知を目的とした地殻変動観測がさかんに行われるようになりました。プレート境界では、地殻のせり上がりや沈み込みに伴う地殻歪が蓄積しやすい環境となっています。この地殻歪が臨界点を超えるような時、もしくはなんらかの原因で地殻歪が開放される時、地震が起こることが指摘されています。

<2016年1月31日>地震の観測について
地震が発生すると、地震動という揺れや地殻変動という変位が生じます。これらをどのように検知または観測するかを紹介したいと思います。揺れを観測する地震計には、強震計、高感度地震計、長周期地震計などが目的に合わせて選定され、地表または地中井戸、さらに海域には、ケーブル式常時海底地震観測システムなどが設置されています。(1)強震計(震度計):強い揺れを記録する装置です。気象庁が1991年に世界で初めて開発し、1996年4月から震度計による観測に切り替えています。また、気象庁、防災科学技術研究所、国土交通省などの国の機関や自治体、大学、民間企業が独自に地震観測を行っており、これら各機関の強震計の設置台数を総合すると全国で10,000台を超えるといわれています。(2)高感度地震計:微小地震による振幅の検出を行なう装置です。揺れを感じないいわゆる無感地震等の微小地震は数多く、これを観測することにより、地殻構造の解析や地震の中長期的な予測の参考になります。(3)長周期地震計:大地震や遠く離れた震源から伝播するゆっくりとした揺れを観測できます。おもに地球の深部構造である地殻の研究や震源メカニズムの解析に用いられています。

<2016年1月17日>千島列島沖地震について
9年前、2007年1月13日、千島列島沖で地震がありました。前年2006年11月15日に発生した地震の震源に近い沖で、わずか3ヶ月後に発生した地震でした。震源地は千島列島の新知島(シムシル島)東方沖の太平洋で、震源の深さは10km。この地震の影響で気象庁は午後1時36分、北海道から和歌山県の太平洋沿岸部、伊豆諸島の沿岸部に津波警報や津波注意報を発表しました。2006年に発生した千島列島沖地震の震源は海溝の大陸プレート側における海溝型地震(プレート境界型地震、逆断層)でしたが、この地震は大きな海溝型地震の後に発生することのある、海溝に沈み込む前の海洋プレートにおける正断層型のアウターライズ地震になります。いままで圧縮場であった状況が、逆断層地震が発生したことにより開放され、逆に引っ張り場に変化したことが主な原因とされています。めずらしい地震で、類似した地震は昭和8年の昭和三陸地震になります。特に、11月に発生した津波は、地震発生の7時間後に最大波を観測しました。これは太平洋に伝播した津波が天皇海山列で反射し、日本に戻ってきたことによるものです。

<2016年1月10日>多賀城高校の災害科学科新設について
今年4月、県立多賀城高校に、防災を専門に学ぶ「災害科学科」が新設されます。阪神大震災後の教訓を生かそうと、平成14年4月に、全国で初めて防災教育専門の学科(環境防災科)を設置したのが兵庫県立舞子高校ですが、多賀城高校は全国で2校目となります。定員は40人で、将来は大学や大学院に進んで研究を深め、医療・介護も含め各分野の専門家として地域や世界の防災リーダーとなる人材の育成を目指します。すでに、多賀城高校では、大学や研究機関と提携しながら災害関連の授業を行っています。津波被害のあった地域と通学区域をまとめた通学防災マップを作成。また、実際に津波が来た高さを示す標識「津波波高標識」を作成、生徒たち自らが電柱の管理者や行政、地元住民に説明して許可を得て、通学路にある100本以上の電柱に取り付けました。最近でも以下のような活動に参加しています。□多賀城市総合防災訓練□第1回ハイスクール世界サミットin福島□被災地案内「第3回続キズナ・プロジェクト」□千年希望の丘植樹祭 2015 □JICA東北国際協力実体験プログラム□国連防災世界会議パブリックフォーラムなど。新設される災害科学科では、外部講師、校外学習、調査研究発表、課題発見・解決型学習、国際理解・国際交流など、関係機関との交流もはかりながら教育活動が行われていきます。東日本大震災の経験を糧に、地域だけではなく世界で防災・減災の知識を生かせる人材の育成に期待が高まります。

<2016年1月3日>2016年を迎えて
東日本大震災の発生から5年を迎える今年、さまざまな活動・行事やイベントが企画されています。
1月11日 「東日本大震災アーカイブ・シンポジウム」(於;東北大学)。特別講演として、インドネシア、バンダ・アチェ市の津波博物館長トミー・ムリア・ハサン氏を招き、海外における震災アーカイブの実例をご紹介します。
1月22日「21世紀文明シンポジウム~東日本大震災から5年~」(東北大学萩ホール)
3月6日「第4回東日本大震災アーカイブ 語り部シンポジウム「かたりつぎ」~朗読と音楽の夕べ~ (於;宮城学院女子大学)
3月12日 仙台防災未来フォーラム(於;仙台国際センター) 昨年3月の国連防災世界会議)から1年後のキックオフ・イベントです。
3月13日 「東北大学災害科学国際研究所大震災メモリアルシンポジウム」
4月 多賀城高校に災害科学科開設。全国で2校目となる防災を専門的に学ぶ「災害科学科」が県立多賀城高校に新設されます。定員は40人で、将来は、医療・介護、研究者、技術者ら各分野の専門家として、地域や世界の防災リーダーとなる人材の育成を目指します。
6月15日(旧暦5月5日)明治三陸大津波から120年
11月5日 津波防災の日が、今年から「世界津波の日」になります。
昨年12月22日、日本を含む142か国が共同提案国となった「世界津波の日」を定める決議が国連で採択されました。津波の脅威と対策について理解と関心を深めることを目的としています。