<12月30日>2012年を振り返って
2012年は。東日本大震災からの復興元年の年でした。今年は。多くの復旧・復興活動が行われましたが、地域での本格的な暮らしの復興については。これからになります。この1年を振り返りたいと思います。1月11日東日本大震災アーカイブについての国際会議、3月11日東日本大震災から1周年。東北大学では国際フォーラムを開催、4月1日東北大学災害科学国際研究所が発足、4月中旬NY国連本部での震災に関するスピーチ、5月12日天皇・皇后両陛下への御進講、5月23日東北大学災害科学国際研究所開所式、7月上旬仙台において国際ハイ・レベル会議開催、8月中旬ハワイ大学訪問、10月中旬スリランカ訪問、11月仙台市などで津波避難施設などについての検討委員会、12月7日アウターライズ地震発生、津波警報も発令された。

<12月23日>安政の東海地震について
嘉永7年11月4日、新暦の1854年12月23日、駿河湾から遠州灘、紀伊半島南東沖一帯を震源とするM8.4という巨大地震が起きました。その32時間後には、安政南海地震津波も発生しました。地震発生約2時間後に、大阪・堺に津波が来襲し、大きな被害が出ました。この地震が発生した年の年号は嘉永ですが、安政という名前が付けられているのは、地震・津波の被害が余りにも甚大であったために、その年の11月27日に年号を「嘉永」から「安政」に改元したのです。それほどに、歴史的な地震だったということになります。まず、揺れによる被害が大きく、沼津から天竜川河口に至る東海沿岸地域で、町全体が全滅した場所もありました。また、江戸、甲府、松本、松代、などでも多くの家屋が倒壊、そして、地震発生から数分後には大津波が発生し、東海沿岸地方を襲いました。駿河湾を中心に、遠州灘、伊勢、志摩、熊野灘沿岸に、さらには、伊豆下田にも被害が出ました。伊豆下田では推定6~7mの津波が押し寄せ、900戸以上の家屋が流失し、122人が溺死したという記録も残っています。

<12月16日>簡易ソナーを使ったがれき調査について
津波によるがれきの状況を如何に把握し、早く対応(処分)できるか?という研究について、先日の土木学会・海岸工学講演会で発表された首都大学東京の横山勝英先生の成果をご紹介します。東日本大震災では海の環境破壊と生物への影響が懸念されました。実は、約1年半が経過して牡蠣の成長がとても早いことも報告されています。横山先生たちは気仙沼の海を震災直後からモニタリングして、海の中で何が起こったのか、津波と海底がれきの実態、水質、底質、生物の変化、牡蠣養殖の推移について調査を実施しています。震災直後、陸上も海面もがれきに覆われて物資輸送の妨げとなりました。また、海のがれきは時間と共に漂流・沈降するため、底引き網漁、定置網漁、養殖漁業の支障になりました。各種工場から石油や化学物質が流出したと推測され、これらによる生物への影響も懸念されおり、がれき分布の把握や海底からの撤去方策について検討されています。その中で、横山先生は、「簡易ソナー」を用いて、震災後いち早く気仙沼市舞根湾(湾幅200m、湾軸長800m)で、がれき堆積状況を調査されました。得られたソナーのデータから、がれきの座標、形状、材質を分析し、がれきの体積を推定するという画期的な方法を提案されています。

<12月9日>12月7日に発生した地震・津波について
7日午後5時18分ごろ、宮城県三陸沖を震源とする地震がありました。これは、昨年3月11日の東北地方太平洋沖地震の余震とみられ、いわゆるアウターライズ地震でした。震源地が三陸沖240キロ付近と沖合だったため、東北から関東の広い範囲で震度5弱を観測しました。宮城県沿岸に津波警報が出され、地震発生から30分以上経過した後、石巻で1メートルの津波を観測しました。メディアなどでは、強い口調で避難を呼びかけ、住民も迅速に避難するなど、東日本大震災の教訓が生かされた部分もありました。しかし、自治体から出される避難指示・勧告が不統一だったこと、車で避難した方も多く、渋滞に巻き込まれたり、避難場所が車であふれるなど、課題も浮かび上がりました。今後も強い余震の可能性がありますので、十分な注意が必要です。

<11月25日>東北大学災害復興新生研究機構について
東北大学では、2011年4月に「災害復興新生研究機構」を創設し、研究・教育・社会貢献に総力を挙げて取り組んでいます。あわせて8つのプロジェクトがあり、100の復興アクションを実施しています。以下がそのプロジェクトです。
(1)災害科学国際研究推進プロジェクト
(2)地域医療再構築プロジェクト
(3)環境エネルギープロジェクト
(4)情報通信再構築プロジェクト
(5)東北マリンサイエンスプロジェクト
(6)放射性物質汚染対策プロジェクト
(7)地域産業復興支援プロジェクト
(8)復興産学連携推進プロジェクト。
詳細はHPで。

>>災害復興新生研究機構

<11月18日>神戸大学震災復興支援・災害科学研究推進シンポジウムについて
昨年10月22日、東北大学と神戸大学は、包括協定を締結しました。その後、今年1月神戸大学は「震災復興支援・災害科学研究推進室」を設置して、東日本大震災の復興支援活動や災害科学研究を行うグループへの支援等の活動を開始しています。そして、先日11月3日、神戸市で、防災・減災・復興対策等について、広く一般市民を対象としたシンポジウムを、東北大学と共催で開催しました。両大学が東日本大震災からの復興に向けて、被災地域で行っている支援活動の取り組みや、これらの活動の中で得られた教訓・課題について紹介し、今、そしてこれから何ができるのか、また何をすべきなのかを、議論しました。

>> 神戸大学創立110周年記念事業 震災復興支援・災害科学研究推進室 シンポジウム

<11月11日>東日本大震災ビッグデータ・ワークショップについて
今回の大震災で、ソーシャル・ネットワークでの情報・データが大量に活用されたこともあり、それらの「ビッグデータ」を、将来の防災に向けてどう役立てることが出来るのかについての取り組みが始まりました。東日本大震災で得られたメディア情報やツイート情報、GPS情報などを集め、情報伝達の効果や行動分析を行う取り組みです。これは、震災の発生直後から、テレビや新聞、インターネットを通じて流れた大量の情報がどのように発信され、流通したのかを、実際のデータを用いて検証するものです。当時の事象の発生、情報の伝達、それに伴う人々のアクションを分析することで、次の災害に向けて適切な情報流通施策に関する提言や、各種サービスの開発につなげる目的で開設されました。情報量で最も多いのがツイート情報で、1.8憶ツイート、30GBにおよびました。そのデータ分析を行うのはそう簡単なことではありません。分析には、まず、データの可視化が重要です。ワークショップには、専門の研究者だけでなく、社会学者やIT技術者などさまざまな人に参加していただきました。多岐にわたる分野の人が共に研究して成果を導き出すことは、一連の流れを今後広げていくことに繋がっていくと思います。これまで、地震や津波のデータに比べて、人の動きや社会現象を理解するデータは十分でありませんでした。その意味でも、ビッグテータを有効に活用してゆくことは、今後の減災に役立つと思っています。

<11月4日>スリランカでのセミナーと現地調査について
JICA(国際協力機構)の草の根技術支援運動を行っているスリランカを訪問し、現地主催のセミナーへの参加とインド洋大津波からの復興を現地調査させていただきました。セミナーは、スリランカ政府とJICA主催でコロンボで開催されました。東日本大震災の経験を防災体制の整備に役立ててもらおうというもので、日本の3人の専門家が講演し、大震災の実態と教訓を紹介しました。その後、復興の状況を沿岸で視察しましたが、ほとんどその爪痕は残っていない状況まで回復していました。その中で、個人で運営している津波写真博物館がありました。大津波の数千点に及ぶ写真が展示され、直後の様子や被害の状況、1年後の復興の様子などが紹介されています。また、被災後に描かれた子どもたちの絵も展示されています。ただ、個人運営であるだけに、継続には支援が必要と感じました。また、当時の津波来襲のポイントを示す津波サインは南西海岸でわずか3か所程度しかなく、このままだと消失してしまう可能性があります。一方、津波警報タワー(Tsunami & Multi-disasters)の建設が進み、以前は、全国で50か所ほど設置されていましたが、75か所に増えていました。

<10月28日>宮城県での「3.11伝承・減災プロジェクト
東日本大震災の際に、ハードによる対策の限界を経験しました。また、今後の災害に強い地域づくりを進めるためには、住民への津波防災に対する啓発活動や避難体制の充実などをこれまで以上に推し進める必要があります。その中では、ソフトによる対策を組み合わせた総合的な「多重型の防災対策」の構築が重要です。そこで、宮城県では、「3.11伝承・減災プロジェクト
を開始しています。これまで進めてきた「津波防災月間」等の取り組みの充実に加え、津波の痕跡を現地に表示するなど、被災事実を後世に伝承し、迅速な避難行動につながる様々な試みに積極的に取り組むことを柱としています。そのひとつが、「津波浸水標示板の設置です。今回の津波の浸水区域や浸水の高さを標識で表示することにより、まさに「実物大のハザードマップとして、住民の避難への備えを促し、防災啓発を図っていくことができます。また、地域住民だけでなく、地域事情に不案内な観光客等にも注意喚起が行えることになり、いざという時に、避難行動を起こすきっかけに結びつきます。さらに、東日本大震災の津波の記憶を風化させず、後世に伝える「しるべ」にもなり、まさに「命を守るプロジェクトとなると思います。あわせて、津波防災意識の啓発や防災教育の充実を図ってゆくことになっています。

<10月21日>長周期地震動と予測地図
長周期地震に対する高層ビル等での対応が課題になっています。地震に強いとされてきた既設の超高層ビルに対しても影響を受けることが考えられます。このため、最近の高層建築物においては、これまでの制震構造や免震構造技術に加えて、長周期地震動への対策が行われ始めています。また、文科省などでは、長周期地震動の予測図の作成に取り組んでいます。分布図(地図)、揺れの状況(速度・加速度)、代表地点での速度の時刻歴・応答スペクトルなどの情報に加えて、予測には、震源モデルと地下構造モデルが必要です。震源モデルとは、地震の発生過程をモデル化し、地震動を予測するものです。地下構造モデルは、浅い地盤構造か深い地盤構造かの情報、さらに深い、地震基盤以深の地殻の情報モデル、層厚、P波速度、S波速度、密度、動的変形特性曲線などがあります。

<10月14日>建設材料の深刻問題
復興事業のためには、まず計画、人材、そして、建設材料が必要です。その建設材料の中でも生コンクリートは「なまもの」ですので、他の地域から持ってくることが難しいものです。復興関連工事が本格化しており、需要は大幅に増加していますが、旺盛な需要に対して地元の骨材の供給不足から、北海道函館から骨材輸送が開始されています。そのため、生コン製造コストは大幅に上昇しています。また、生コン工場の大半には同一産地の砂を使用していることから、生コン需要の増加に伴い、コンクリート用砂の供給状況も逼迫しています。対応策の1つとして、現地で生コンを作るのではなく、他の地域であらかじめコンクリートのブロックにしたものを輸送し、建設材料とする方法などが考えられていますが、今後の復興のスケジュールや予算への影響が懸念されています。

<10月7日>変動地形と地震・津波活動について
「変動地形とは、隆起や沈降のプロセスです。地形を取り扱う自然地理学の一分野でもあり、地球科学の一分野でもあります。地球の表面上を構成するあらゆる地形の記載・分類・成因・由来・歴史を研究し、その特徴・成因・発達などを明らかにする学問です。地形に変化をもたらすのは、大きく分けて二つの作用があります。一つは「内作用」で、地殻運動(隆起運動-沈降運動-断層運動-褶曲運動-曲動運動)や火山活動があります。もう一つが、「外作用」で、風化作用-削剥作用-浸食作用-運搬作用-堆積作用があります。今回のような巨大地震の場合にも地形に大きな変動が生じました。これを調べることによりサイクル(周期性)が推定できるかもしれません。三陸北部や福島県沿岸部では、85万年にわたって広域に隆起しているそうです。海岸などで段丘が多く存在しており、この85万年の間に300mも隆起しているそうです。例えば、青森県九戸郡洋野町では、12万年前の海成段丘が発達しています。一方、三陸南部や仙台平野になると、その隆起量が極めて少なくなります。例えば、陸前高田市などは、主に平野部であり、10万年間隆起が認められていません。このような違いが生じるメカニズムを解明してゆくことで、断層運動のサイクルを推定できる可能性があります。

<9月30日>日本映画大学での集中講義について
昨年、日本映画大学で集中講義を行ったことを紹介させていただきました。この日本映画大学の源流は1975(昭和50)年に創設された横浜放送映画専門学院にさかのぼります。昨年の2011年4月、大震災の直後でしたが、新制大学として開設(学)されました。昨年は、初めての講義であり、以下のような内容を実施しました。
・我が国の災害の特徴と対策(基礎講座編)
・災害を観る(可視化編)
・災害の発生・伝播特性と可視化
・ハザード・災害情報の収集(作業編)
・情報をマップ上のリスク認知(マップ)
・グループ発表
今年は、東日本大震災の実態、教訓の内容を充実化させ、起源の古い神社は被害が少なかったこと、屋敷林(いぐね)などの役割を紹介しました。さらに、サバメシの活動も紹介し、関心を持ってもらいました。その中で、ユニークなグループ研究がありました。
2011年の震災当時の様子を振り返るグループ
具体的な備蓄品として防災グッズを100円ショップで購入して持参したグループ
自分の学校での避難体制を検証し,改善策を提案したグループ
認知マップの説明とかけ声などの行動が大切であることを寸劇で紹介したグループなどがありました。

<9月23日>津波エネルギー減衰ワークショップ開催について
9月10日~12日にわたり、「第1回沖合津波エネルギー散逸と最大波高軽減に関する国際イノベーションワークショップを開催しました。このワークショップは、津波に対する様々な対策について議論することを目的とし、津波専門家だけでなく、海洋学、構造力学、材料科学、数学、地理学などさまざまな異分野の専門家が集まり、学際的な議論を行う事が出来ました。参加者は、海外から、米国カリフォルニア州立大学、ユネスコ、フランス・リヨン大学、インドネシア・シャクハラ大学など、国内からは、東北大学に加えて、北海道大学、岩手大学、防衛大、東北電力などが研究発表を行い、エネルギー減衰、津波被害軽減に向けての討論を行いました。参加者は、リヨン大学の学生も含めて約120名になりました。主な話題としては、洋上構造物(メガフロート)の効果、流れや渦の発生による減衰、油圧・水圧シリンダーなどの活用、耐震ダンパー(構造物の基礎に設置)の津波への応用、さらには、地域や都市での集中と分散などについても話題は広がりました。今回を皮切りに、今後2年間で、津波エネルギー減災についての議論を深めていきたいと思います。

<9月16日>岩沼での津波避難訓練「カケアガレ!日本」について
9月1日防災の日に、岩沼で津波避難訓練「カケアガレ!日本」(岩沼市主催、東北大学災害科学国際研究所共催)が行われました。津波の場合、安全な場所は高台・建物の上などで、駆け上がることが大切であることから、この名称がつけられました。住民約4,700人が対象です。東日本大震災から間もなく1年半の時期であり、前日の夜には、フィリピン沖の地震で津波注意報が出され、警察や消防が沿岸部の警戒に当たったばかりでした。「避難場所はより高い場所に」が原則で、体育館や校庭ではなく、建物や高台へ避難しました。住民らは予期せぬ津波襲来に備え、気を引き締めて訓練に臨んでいただきました。訓練は「宮城県沖を震源とする震度6強の地震を観測し大津波警報が発令された」との想定で行われました。サイレンを合図に、住民は同市玉浦中学校など5カ所の避難場所を目指しました。家族単位での移動、非常持ち出し袋、携帯ラジオ)、長靴、ヘルメット・帽子、など装備の準備は良かったと思います。移動中の住民や、消防団員からの声かけなども有効です。町内会での確認ボードに記入後に、階段で高速道路の上部に移動しました。訓練のあと、避難についてのアンケート調査を行いましたが、アンケートは、東北大学の協力で分析し、本年度中に地域防災計画の見直しを行う方針です。

<9月9日>堤防について
今日は、「堤防」について、あらためてご紹介します。「堤防とは、河川や海の水が浸入しないように、河岸や海岸に沿って土砂を盛り上げた治水構造物です。防波堤、防潮堤、河川堤防などがあり、主に、海岸と河川に分かれて設置されます。構造的には、土堤(何層)、コンクリート堤などがあります。災害に対する構造物ですので、コンクリートの構造物を想像されると思いますが、河川や海岸での堤防の多くは、土砂の構造を持ちます。これは、整備費だけでなく、維持管理費や、被害を受けた時の修復力、復旧にかかる時間とその経費の問題があります。河川などで破堤した場合、土嚢などを積んで対応できます。通常の堤防は越水が起こると土砂が削られ、破堤につながり甚大な被害を招くことがあります。そのために、万一の越水でも急速な崩壊を招かぬよう、緩やかな勾配としたものを高規格堤防といいます。実は、「スーパー堤防とも呼ばれる高規格堤防事業は100年から200年に一度の大洪水を安全に流すことを考えています。一方、東日本大震災での津波により沿岸部での堤防も大きな影響を受けました。沿岸部の堤防は、津波や高潮、高波の被害を防ぐために、海岸に沿って設けられ、海岸堤防、防潮堤と呼ばれます。また、防波堤という構造物もあります。津波防波堤の場合には、湾口部に建設され、湾内への津波の浸入量を減少させたり、湾の強震特性を変化させて、津波の高さを減少させる効果があります。釜石の湾口防波堤がよく知られています。

<9月2日>減災風呂敷ニューヴァージョンのご紹介
今日は、減災風呂敷を考案された東北大学災害科学国際研究所の保田真理さんにお越し頂きました。東日本大震災を受けて、災害時の被害を少しでも軽減するために、普段の生活の中で、防災や減災に特に高い意識を持たない人にも、興味を引く何かが必要だと強く感じました。普段持ち歩いて、使えて、なおかつ減災意識を向上させることができるもの・・・、古来から使われてきた風呂敷にそのアイデアを入れることが役立つのではとひらめいたのです。たためばコンパクトにまとまり、広げれば体にまとうこともでき、包めば様々なものも運べる。この機能をフルに活用し、さまざまな減災のアイデアを盛り込みました。今回は、減災に感心の薄い若い世代や外国の人々にも受け入れられやすくデザインを一新、また、様々なアドバイスや個人情報は人に見られないように、免許証入れや定期入れ、お財布などに入れられるサイズの冊子も付けています。日常的にエコバッグとして、またテーブルクロスとしても活用できます。自然災害の発生は防ぐことはできませんが、各自が災害の知識を持ち、備えれば確実に被害を小さくすることができます。。風呂敷を「結んで活用する、家族の絆を「結ぶ」、社会の絆を「結ぶ」…。そんな願いを込めて、新たな減災風呂敷には、「結」という名をつけました。

>> 減災風呂敷-結-

<8月26日>岩沼市での集団移転先の起工式について
岩沼市は、8月5日、被災地の集団移転のトップを切って、玉浦西地区の造成工事の起工式が行われました。被災地の中では、一番早い対応であり、初めての起工式になります。同市では昨年8月に復興計画を策定し、さらに、ことし3月末には全国で初めて国が整備計画に同意していました。このように、復興のペースが速いのは、市長のリーダーシップ、地域でのコミュニケーション、住民と市民の合意形成、周辺での支援があったからであると思います。岩沼市の計画では、沿岸6地区の対象471戸のうち348戸が、約3キロ内陸の玉浦西地区に移転する予定です。沿岸部から離れるだけでなく、この移転先では、地盤かさ上げなどを行い、地域での津波に対する安全性を高めます。工事を来年7月までに終え、2014年3月末の入居開始を目指しているということです。また、一戸建てに加えて災害公営住宅も整備されることになっています。

<8月19日>地震・津波の被害想定について
先週、地震や津波などの自然災害に対する安全レベルのお話をいたしました。この議論をする際に大切なのは、そのような規模の地震津波により、どのような影響・被害が生じるかを知ることです。従来は、地震による揺れ、または津波の高さなど(これらはハザード(自然外力)と呼ばれます)の推定を行っていましたが、これだけではどのくらいの被害がでるか分かりません。私たちは、地域での防災対策や備えを行っていますが、ハザードが備えのレベルを超えたときに、被害や影響が出ます。これらを地域でしっかり把握しようというのが、被害想定になります。今年、中央防災会議などは、今後の南海トラフ地震と首都直下地震の津波高や震度分布、被害想定などを順次公表しました。今年3月には、10県で震度7の恐れがあるとの推計を示し、想定津波高は高知県で最大34.4メートルなど、計6都県で20メートル超に及ぶとしました。これを踏まえて、それぞれの被害想定を行う予定で、さらに、その結果を踏まえて、地震対策を今年冬と来年春にまとめるという三段階にわたる検討が行われます。この8月下旬に、想定津波高のより詳細な推計結果を発表するとともに、死傷者数や建物倒壊など直接被害の想定を出し、秋には経済被害の想定を公表する予定です。従来、国は2003年に最大マグニチュード8.7の地震で、死者約2万8千人、経済損失約81兆円に達するとしていましたが、想定の見直しにより、前回を大きく上回る被害想定が示されることになります。皆さんは、このような被害想定の公表を、どのように受け止めるでしょうか?

<8月12日>安全のレベルについて
津波を対象とした安全レベルの設定が重要になっています。地震や津波などの発生間隔・頻度および規模や影響を考慮し、地域、集落ごとの個別の生活条件・地形条件などから、安全レベルを設定します。レベルは数字が大きいほど、対象規模が大きくなるのが一般的です。地震のレベル=地震力は、稀に発生する地震動「レベル1」と、極めて稀に発生する地震動「レベル2」。ハリケーンの場合は、レベルではなくカテゴリーという言葉で5つに分類しています。東日本大震災を受けて、津波でもこの規模別「レベルという考え方が提案されました。「レベル1」・・・沿岸での津波防護レベル。「レベル2」・・・津波減災レベルになります。もう少し詳しく述べますと、「レベル1」は、海岸管理者が設定し、発生頻度は比較的高く、津波高は低いものの大きな被害をもらたす津波で、海岸線の津波防護レベルや施設の設計で用いる津波の高さになり、数十年から百数十年に1度の津波を対象とし、人命及び資産、国土を守るレベルとなります。「レベル2」は、発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波で、レベル1をはるかに上回り、構造物対策の適用限界を超過する津波に対して、人命を守るために必要な最大限の措置を行うレベルです。対象津波は、貞観津波クラスの巨大津波で、発生頻度は500年から1000年に1度と考えられます。今回の復興に向けたまちづくりは、この「レベル1」と「レベル2」を視点に議論されています。

<8月5日>七ヶ浜型ボランティア活動について
先日、七ヶ浜町でのボランティア活動を視察させていただきました。拠点となっているのは、「浜を元気に!七ヶ浜町復興支援ボランティアセンター」です。当日は、代表の遠藤ひさかずさん、コーディネーターの柴田信敏さん。アドバイザーの高橋勇さんと名倉隆さんにご同行いただきました。まずは、ボランティアセンターをご紹介いただき、菖蒲田浜海浜公園の整備の状況、次に、吉田浜を経て多聞山へ移動し、早期除塩の水田や塩に強い大豆畑などをご紹介頂きました。個人、団体を問わずボランティアに参加できることもあり、現在でも週末には、200人から300人規模の参加があります。首都圏からバスでかけつけるボランティアもいて、リピーターも多いそうです。たとえば、【ボランティア大募集】津波で98%の田んぼが被害を受けました。瓦礫撤去のため多くのボランティアが必要です。連絡お待ちしています。【親子でボランティア!】畑や田んぼのガレキ拾いは子どもでもできる作業です。保護者と一緒に参加してみませんか。といった募集が精力的に行われています。

<7月29日>復興大学について
「復興大学」は、大震災直後、学都仙台コンソーシアムの仙台学長会議で実施案を立案し、文部科学省から承認されたもので、毎週土曜日、AER7階で開講しています。復興大学事業代表は、学都仙台コンソーシアム運営委員長で東北工業大学学長の沢田康次先生です。「復興大学」は、(1)復興人材育成教育コース(2)教育復興支援(3)地域復興支援ワンストップサービス・プラットフォーム(4)災害ボランティアステーションの4事業からなります。この中で、復興人材育成教育コースでは以下の講義を行っています。*復興の政治学(前期・集中講義)復興の思想(前期)復興のための生活構築学(前期)復興の科学技術(前期)復興の経済学(後期)復興の社会学(後期)。生活構築学では、災害前や災害時にとるべき行動、災害後の生活の変化を学ぶ、また、避難生活において健康を維持するために役立つ知識・技術を習得することができます。あわせて、被災地に宿泊し、災害時の活動を想起できるような現場演習も交えます。復興の科学技術では、東日本大震災と東京電力原子力発電所の大事故に対して、科学はどこまで理解が進んでいるか、現代技術は科学的知識をどの程度理解しているか、現代技術はどのような安全基準で実用化しているのかを学びます。現在約40名の大学生が受講されています。

<7月22日>東日本大震災の教訓と今後の備えについてのワークショップ
先日、高知県南国市と共催した津波防災に関するワークショップを実施しました。南海トラフでの地震津波が懸念される中、今年3月31日に内閣府から南海トラフでの地震および津波の最大クラスの推定結果が発表されました。対象地域では最大の関心事として地震特に津波に対する取組が精力的に検討されています。その中、東日本大震災の被害実態および被災地での経験と教訓を紹介した上で、各地域での津波対策についてさらに議論を深めるWSを開催しました。南国市の会場には沿岸部の自主防災組織の代表者などおよそ50人が集まっていただきました。まず始めに、東日本大震災の地震津波のメカニズムや被害実態を紹介させていただきました。次に、NHKによる東日本大震災証言アーカイブでの動画を見ていただきました。その後、各グループで話合いをし、最後は発表を行って、検討された成果を共有しました。今年の3月から、NHKは東日本大震災アーカイブ(証言WEBドキュメント)を開設し、震災にかかわる映像や人々の証言を公開しています。地域ワークショップでの活用は今回が初めてであり、被害実態の理解や教訓の共有化さらには、地域での防災取組の支援に大変効果的であることが分かりました。

<7月15日>世界防災閣僚会議in東北について
7月3日・4日の二日間、「世界防災閣僚会議in東北」が、仙台を中心に開催されました。全体会合が仙台市で、また分科会が、岩手県一関市、宮城県石巻市、福島県福島市で行われました。外務省、内閣府、復興庁、国土交通省、国際協力機構(JICA)が主催し、国連開発計画(UNDP)、国連国際防災戦略(UNISDR)、国連人道問題調整事務所(OCHA)、岩手県、宮城県、福島県、仙台市、一関市、石巻市、福島市が共催した会議になります。また、会議と並行して、官・民・学による多くのサイドイベントが開催され、東北大学災害科学国際研究所も展示等で参加させていただきました。会議では、昨年の東日本大震災を始めとした各地での大きな災害を経験する中で、防災の重要性を国際的に再確認し、防災の「主流化と強靱な社会の構築に向けたコミットメントが表明されました。2015年に、防災分野の国際指針である「兵庫行動枠組(HFA)」が期限を迎える中、「ポストHFAを策定していくという国際社会の努力の方向性が議論されました。私は、岩手分科会にコメンテーターとして参加し、防災教育・啓発のさらなる重要性を示し、東日本大震災の経験や教訓をアーカイブとして残しながら、新しい防災文化の提案の必要性を述べさせていただきました。

<7月8日>「3・11震災伝承研究会」について
3.11の大津波では多くの方が犠牲になり、また、たくさんの建物などが被災しました。そして、今回の災害を体験した私たちには津波による被害を二度と出してはならないという重い責務が課せられていると考えます。一方で災害から1年が経過し、被災した建物類はすでに瓦礫として扱われ、処分されつつあります。しかし、津波の脅威を災害文化として後世に伝えるためには、これら被災建物などはなくてはならないものです。各被災自治体は、これらに歴史的価値があることを認識しながらも、その保存方法に苦慮しているところです。このような課題を踏まえ、災害を伝承するという立場からこれら災害遺構の保存について一定の指針を見いだすために、この研究会が設置されました。

<7月1日>津波からの避難に役立った横断歩道橋について
被災地の浸水域に、68箇所の横断歩道橋がありました。津波来襲時に、この横断歩道橋の上に上がり、津波からの逃れた方が数多くいることがわかりました。その要因として、歩道橋が町の中心エリアにあること、柱が中心の構造(ピロティータイプ)は、津波に対して比較的強度があること、階段が数カ所あり、上がりやすいことなどが挙げられます。当時の体験談として、「津波が車や船を巻き込んで一気に押し寄せ、間一髪だったが、歩道橋の上に上がり助かった。」「歩道橋には50人ほどが避難していた。」「国道45号は渋滞。何とか車を乗り入れると、多くの人が歩道橋に駆け上がっていました。」「歩道橋の上から『津波が来る!高いところに逃げろ!』と叫ぶ声が聞こえました。」などが報告されています。しかし、今回の現地調査から、歩道橋の高さを超える津波浸水があると歩道橋自体に被害が生じることも分かりました。やはり、橋脚までの浸水では抵抗を余り受けないのですが、橋の本体まで達すると津波の大きな影響を受けるようです。現在、静岡県などでは、津波避難を視野に入れた、幹線道路への横断歩道橋の設置が検討されています。また、インドネシアのパダン市でも、同様の検討が始まったようです。

<6月24日>古川黎明高校のSSHの活動について
2011年春、古川黎明高等学校は男女共学、併設型の中高一貫教育校として開校7年目を迎えました。そして、今年度、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に応募され、みごと採択されました。SSHとは文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度のことです。この制度は、平成14年度に開始されましたが、平成22年度、平成23年度予算で予算配分も増額傾向にあり、活動が高く評価されているようです。宮城県内では、仙台三高、仙台一高でも活動を始めています。古川黎明高校・中学でのSSH活動のテーマは「連携」です。「連携による科学技術イノベーションを担う科学技術系人材の育成、復興を目指す学校との「連携」、併設中学校との「連携」、大学や研究施設との「連携」、理科と他教科との「連携」、世界の国々との「連携」により、身近な生活から宇宙にまで広がる科学への興味・関心を高め、科学的な技能及び領域横断的な広い科学的思考力を育成することを目的としています。さらに、自らの経験と発想を新たな科学知見と技術の枠組みに変え、世界へ科学を発信できるグローバルな科学コミュニケーション力を育成することを目的とします。古川黎明高校では、すでに東北地方大平洋沖地震の断層を掘削中の地球深部探査船「ちきゅう」とのSkype交信や金環日食の観察眼鏡の製作と提供などを行っています。アドバイザーでもある浅島誠先生を中心に、地震・津波研究の特別講義を受講するなど、スタートダッシュの活動が始まっています。将来ノーベル賞を受賞するような科学者が育っていってほしいものですね。

<6月17日>「大すべり域」と津波の発生について
津波を引き起こす断層のすべりは、震源断層面に一様に発生するのではなく、特定の領域が大きくすべることで大きな津波が発生することが知られています。この領域を「大すべり域」及び「超大すべり域」と言います。そのため、南海トラフでの最大クラスの津波高を推計する津波断層モデルについては、「大すべり域」及び「超大すべり域」を考慮しています。しかし、どのようにこのすべり域を設定するかが大きなテーマになります。2011年東北地方太平洋沖地震や世界のM9以上の巨大地震の特徴から、「大すべり域は、おおよそ全体の2割ほどであることがわかりました。この「大すべり域の中で、プレート境界の付近(浅部)では津波地震などを起こしやすいことから、特別にすべり量を大きくした「超大すべり域」を設定しています。南海トラフでは、「大すべり域と「超大すべり域を11ケース設定することとし、それぞれのケースについて、まずは、50mメッシュ単位で津波高を推計しました。防災対策の前提とすべき最大クラスの津波高は、これら11ケースの津波高の最大値を重ね合わることとしました。

<6月10日>地震サイクルとカップリング(率)について
現在、東日本大震災の地震発生メカニズムの解明や南海トラフ。首都直下地震などの地震の発生評価が行われています。その際に、重要なキーワードとなるのが、「地震サイクルと「カップリング率(固着率)」です。大地震が起きる海洋と陸側のプレート境界は通常固着しており、プレート間のずれは生じないと考えられています。この2つのプレートは、実はそれぞれの速度で運動しているため固着したプレート境界周辺でプレートが変形し、弾性エネルギー(ひずみ)が蓄積していると言われています。プレート運動の進行によってこのひずみが蓄積され、ある限界(固着限界)に達するとプレート境界面は破壊し、貯まっていたエネルギーが一気に開放されます。これが大地震の発生になります。この後、またプレート境界面では固着が回復し、プレート運動に伴って次の大地震へ向けたエネルギーの蓄積が再開され、次の限界点まで通常の状態が続きます。こうした大地震の繰り返しを「地震サイクル」と呼びます。実は、この繰り返しの中で、全てが完全に固着しておらず、海洋プレートがずるずると沈み込んでいる状況もあることが指摘されています。この固着の度合いで、この蓄積されたエネルギーがすべて地震となって開放されるとは限りません。これは「カップリング率(固着率)と呼ばれています。カップリング率が大きいところで地震性すべりが起きやすいと考えられています。宮城県沖や南海トラフではこの率が大きく。岩手県沖や千葉県東方沖は、カップリング率が小さいといわれています。

<6月3日>瓦礫について
大災害の際には、大量のがれきが生じます。阪神淡路大震災の際には、1900万トンの瓦礫が生じたと推定されています。内訳としては、不燃物が1673万トン、うちコンクリートがら943万トン、金属31万トン等、そして可燃物が285万トンと言われています。当時は、緊急的に焼却炉が34基、処理能力1780t/日が増設されました。また、神戸市は、海面埋立予定地の免許を前倒しで取得し、不燃物のリサイクル材の約97%を占めるコンクリート埋立用材として利用することができました。また、がれきの最終処分は、市町の処分場と近畿広域の自治体により設立された大阪湾広域臨海環境整備センターの尼崎沖と泉大津沖の二つの処分場で埋め立てられました。このたびの東日本大震災でのがれきは、合計1880万トンと推定され、ほぼ、阪神淡路と同じ量になります。岩手県では津波堆積物や海から引き上げられたがれきなどを新たに計上し、総量は480万トンから530万トンに増加したそうです。宮城県では、解体家屋が想定より少なく、補修して住む人が多くなったほか、相当量のがれきが海に流れ出たため、総量は1570万トンから1150万トンに減少したということです。がれきの再利用が検討されていますが、コンクリートや津波による堆積物は利用できないようです。砂には細かな木材やプラスチックなどの有機物が多く含まれ、土地をかさ上げする盛り土などへの再利用が難しい状況もあるといういうことです。これらに対しては、いわゆる「広域処理」が必要になりますが、先日の推定では、全国の自治体で受け入れる「広域処理」の必要量が、当初想定した401万トンの4割減の247万トン(宮城127万トン、岩手120万トン)になることが示されています。

<5月27日>天皇・皇后両陛下へのご説明について
天皇・皇后両陛下が、5月12日、東北新幹線で宮城県入りされました。まず、宮城県庁を訪問し、東日本大震災からの復旧状況などについて、村井宮城県知事から説明を受けられました。宮城県入りは1年ぶり。天皇陛下は2月に冠動脈バイパス手術を受けて以来、ご公務での地方訪問は初めてになります。私からは、巨大地震・津波のメカニズム、被害の特徴、神社仏閣での被害、震災アーカイブなどのご説明をさせていただきました。その際に、津波発生から到達までをコンピューターで再現した動画などをご紹介いたしました。「高齢化が進み、(津波からの)避難が難しくなりますね」、「学校での教育が大事になるのでは?」「社会がいかに助け合ったかも記録に残すのでしょうか?」、「今回の災害で、津波に対する人々の認識が改まったのではないでしょうか」などのお話がでました。30分ほどの時間でしたが、たいへん緊張致しました。

<5月20日>「とうしんろく」プロジェクト・リーダー高倉浩樹さんを招いて
東日本大震災の被災状況について東北大学に関わる学生・留学生・教職員の体験を記録し、共有するプロジェクト「とうしんろく」の記録を『聞き書き 震災体験:東北大学90人が語る3.11』(新泉社、2012年3月)として出版した。被災体験は、ほとんど被災なしのような状態から激甚被災まで多様で、被災地の体験を一定の基準で体系的に集めたものとしては貴重な資料といえる。聞き取りは100人近くにおよんだものの、10人ほどが、被災体験がまだ生々しく、過去の事として振り返ることができないとして公開を見送ることとなり、震災体験を聞き取ることの難しさを感じた。その意味では、この本は「部分的な真実」でしかないともいえるが、聞き取れなかったもう一つの「部分的な真実」が何かを想像することが、真の意味で3.11の経験を社会が共有し、伝承していくということになるのだと思う。

<5月13日>
4月28日(土)「2012ぼうさいカフェみやぎ」の会場で開催した公開録音の模様をお送りしました。

<5月6日>明和地震・津波について
明和8年3月10日(1771年4月24日)、沖縄・八重山で地震・津波が発生しました。この津波により、八重山列島・宮古島列島を中心とした地域で多大な被害を受けました。津波の高さは最大30m以上となり、なかでも石垣島で最も大きな被害を受けたと報告されています。毎年4月24日には慰霊祭も行われています。現在でも石垣島を訪れると、その痕跡を見る事が出来ます。中部の宮良湾などでは、大小様々な珊瑚の岩が、水深の非常に浅い場所や陸上に沢山あることに気づかれると思います。これらは、240年以上も前に発生した大津波によって、珊瑚礁から運ばれたものです。岩についている貝や生物の死骸から年代を測定することができ、明和時代以前のものも見つかっています。保存性が高く、高潮・高波との違いが分かりやすいことから、500-1000年に一度大きな津波が来たのではないかと推定されています。古い記録には、津波の高さが28丈2尺(85.4m)と記述されていて、かつてギネスブックにも登録されましたが、当時の測定方法の誤差が大きく、ここまでは到達していなかった可能性が高いことから、現在調査が進められています。

<4月29日>国連非公式テーマ別討論会について
先日、NYの国連本部で、「Disaster Risk Reduction, Thematic Debate」をテーマとする非公式討論会が開かれ、参加させていただきました。私からは、東日本大震災についての地震規模や事前評価、沿岸部での事前の取り組み(ハードとソフト)、ハード施設が被害を受けたが減災には貢献したこと、‘Resilience’社会に向けての要素、今後の多重防御を基本とした復興の取り組みなどを紹介しました。討論での課題は、「大都市での高まるリスクとその低減対策、「発展途上国などでの持続可能な発展と減災対策(減災対策なしでは、産業発展・生活向上は難しい)が重要であるというものでした。特に、都市域での潜在的なリスクの評価とその周知の重要性が指摘されました。現代社会が依存している技術システムの複雑さと脆弱性、グローバル化(相互依存)により、新たなリスクが表面化しています。2005年、日本で開催された国際防災会議で提唱された「兵庫行動枠組み(HFA)に対する周知は高く、各国からの発言の中で多く引用されていて、多くの国が、HFAに基づいた対策を実施し、進捗状況の自己評価を進めていることがわかりました。最後の議長スピーチでも、7月に仙台で開催される防災会議に触れていただき、周知向上に役立ちました。この討論会への参加者は200名を上回り、このテーマへの関心の高さが示されましたが、特に、日本の防災技術への評価は高く、大きな期待が寄せられました。

<4月22日>インドネシア・スマトラ島での地震・津波について
4月11日(現地時間で午後3時38分頃)、インドネシア・スマトラ島北部西方沖で、M8.6の地震が発生しました。これに伴い津波警報も発表されました。発生場所は2004年スマトラ島沖地震の発生領域のすぐ沖であり、2004年の巨大地震による「応力場
の変化にともない発生したものと考えられます。最近、世界各地での巨大地震(逆断層)の後の連動地震である「正断層地震
の発生が話題になっていますが、今回は7年後での発生であり、かつM8クラスという大規模な横ずれ断層が生じたことが注目されています。さて、この地震および津波に対しては、数分後に津波警報がインドネシアおよび環太平洋津波警報センターから発表されました。観測された津波の高さは1m10cm程度の規模(スマトラのメラボーで観測)であったこと、警報が迅速に出されたことなどにより、地震の揺れによって5名が犠牲になったものの、津波による大きな被害は殆ど報告されていません。

<4月15日>JAMSTECでの地震・津波研究について
JAMSTECの愛称で広く知られている独立行政法人海洋研究開発機構は、様々な海に関係する研究を行っている機関です。テーマとしては、・地球環境(地球環境の変動を観測・解析・予測する)・地球の内部の機構(ダイナミックス)(地球の内部を調べて「地球システム」を理解する)・海洋・極限環境生物圏領域(未知の生物圏を探り生命起源を解明する)、さらには、リーディングプロジェクト・地震津波・防災研究プロジェクトがあります。ここでは、文部科学省の委託研究「地震・津波観測監視システムの構築」、「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」を実施しており、先端的海底観測技術開発や地震予測モデルの精度向上ならびに防災・減災への貢献を目指しています。具体的には、紀伊半島沖熊野灘を中心に、稠密なリアルタイム観測を行う“海底ネットワークシステム”を構築するとともに、集中的に地震調査研究を行っています。地震・津波観測監視システム(DONET)東海・東南海・南海地震の連動性評価研究ひずみ集中帯の重点的調査観測研究リアルタイム深海観測システム、さらに、今回の大震災関連でも、地震震源海域での有人潜水調査船「しんかい6500」による潜航調査で得られた画像岩手県釜石港における東北地方太平洋沖地震の津波シミュレーションを公開東北地方太平洋沖地震による深海の化学環境および微生物生態系の変化などの結果も報告しています。

<4月8日>第2回e防災マップ・ラジオコンテストについて
先日、第2回のe防災 マップコンテストが実施されました。このコンテストでは、インターネットを使ったマップ作成システム「eコミ マップ」を利用して、地域の防災資源や危険個所、災害時の対応や日頃の防災活動の計画などの対策を描いた、地域固有の防災マップを応募しています。審査では、出来上がったマップ自体の評価だけではなく、マップ作りを通じて防災活動の見直しや災害時の対応体制の再構築など、地域のさまざまな絆が見直されたり新たに形成されたりする過程や結果も評価しました。以下が、表彰されたマップの内容です。■最優秀賞 星崎学区連絡協議会(愛知県名古屋市港区)/マップづくりの過程で様々な主体と協力し、地域に即した実践的な水害対策に資する点が高く評価されました。■優秀賞・審査員特別賞 311まるごとアーカイブス釜石事務局(岩手県釜石市)/災害アーカイブ活動と連携した東日本大震災における被災者の証言に基づいたマップで、今後の津波避難の見直しに役立つ点が高く評価されました。■優秀賞 かめやま防災ネットワーク(三重県亀山市)/社団法人東京青年会議所板橋区委員会(東京都板橋区)/流山新市街地地区安心・安全まちづくり協議会(千葉県流山市)/浜松兎亀乃会(静岡県浜松市)となっています。

<4月1日>東北大学災害科学国際研究所の創立について
このたびの東日本大震災は、巨大地震・巨大津波・原子力発電事故等の複合的な大災害であり、これまでの「科学技術システム」の弱点・限界を浮き彫りにしました。歴史的・世界的大災害を経験した総合大学となった東北大学においては、今回の経験を踏まえて従来の防災計画論では対応できない低頻度巨大災害に対応するための新たな学際的研究集団組織として「災害科学国際研究所」を、本日4月1日設立します。災害科学に関する世界最先端の学際研究を、国内外の有力研究機関とネットワークを形成し展開したいと思っています。また、被災自治体等とあらゆる面で連携を強化し歴史的な視点を重視しながら、低頻度巨大災害に対する防災・減災・復旧・復興プランを、被害の実態把握と教訓に基づきスピード感を持って提案したいと思います。研究所の各部門は以下の7つになります。
災害リスク研究部門/人間・社会対応研究部門/地域・都市再生研究部門/災害理学研究部門/災害医学研究部門/情報管理・社会連携部門/寄付研究部門(東京海上日動)

<3月25日>「とうしんろくの出版物」について
東北大学のプロジェクト「とうしんろくの出版物『聞き書き震災体験 東北大学90人が語る3.11』(新泉社)が刊行されました。私たちは東北大に関わる人々がどのような形で被災し、そして現在までの過程を経てきたのか、それぞれの個人的で主観的な体験と記憶を相互に共有し、記録していく必要があると考え、このプロジェクトを立ち上げました。震災で何が起き、どのようにその後を生き延びてきたのか、どのような活動をしたのかが記載されています.東北大学にはさまざまな人々が関わっています。地震が発生した3月11日午後2時46分、大学にいたのは、常勤および非常勤をふくめた教員や事務職員、学生や留学生、さらに大学生協などの関連施設で働く方々、加えて様々な形で東北大に関わっている業者さんや研究会などでたまたま東北大を訪問中だった方々です。さらに地震時に仙台を離れていた大学人や、外国に留学していた東北大生、地震後に避難のため仙台を離れた外国からの留学生、またこの春に東北大に入学することが決まっていた人々などが地震後の震災過程において、さまざまなかたちで考え、判断し、対応してきました。多様な震災体験の記録は次への備えにつながることと思います。是非、ご一読下さい。

<3月18日>東日本大震災での生態系への影響について
2011年3月11日の東日本大震災から1年が経ちました。この大地震と大津波が東北沿岸域の生態系にどのような影響を及ぼしたのか、大変重要なポイントです。現在、海洋・水産・生態の各専門家が調査を続けています。・南三陸から仙台湾にかけての干潟環境の変化と底生動物への影響、・蒲生干潟における地形・環境の変化と底生生物への影響評価、・万石浦、松島湾、松川浦のアサリと二枚貝の現状、・志津川湾浅海域における藻場環境の変化と再生過程などをテーマにした調査です。また、東北大学では、女川フィールドセンターを拠点とし、主に内湾域、砂浜浅海域、藻場、干潟などの特徴的な生態系の解明とそれが東北沿岸域の漁業資源の再生、復興過程にどのように関わっているかを明らかにするため、女川湾および仙台湾から三陸南部海域において調査研究を展開します。今後も注目していきたいと思います。

<3月11日>東日本大震災から1年
1.これまでの調査・研究で明らかになった3月11日の地震・津波の実態・・・M9.0の巨大地震(震源は宮城県沖)と津波、長さ500km、幅200km、破壊時間は3分以上におよびました。津波は、海域で5m程度(釜石、海底津波計)、沿岸で10m以上の規模が記録されています。特に、釜石沖での海底津波計の記録は興味深く、30分程度の押し波の成分(2m程度)の上に、5分程度の短い成分(3m程度)が重なった波形が見られました。これは、我が国での史上最大の規模であり、これに伴う災害は最悪なものとなりました。津波の浸水に伴う、沿岸構造物、防潮林、家屋・建物、インフラへの被害、浸食・堆積による地形変化、破壊された瓦礫、沖合での養殖筏・船舶などの漂流、さらには、可燃物の流出と火災、道路・鉄道(車両も含む)など交通網へと被害がおよびました。
2.今後留意すべき点・・・余震活動と連動地震です。かなり長期間にわたって続くことが予想され、かつ規模の大きなものとなる可能性もありますので、十分な注意が必要です。
3.復興の視点・・・安全で安心なまちづくり、地域の産業・くらしの復活、新しい日本の再生の姿、経験・教訓の伝承と発信、防災教育、100年以上活きる知恵、災害サイクルを意識した復興(次への備え、予防防災という視点)が重要です。
4.東北大学震災1年後報告会(本日3/11 13:00~17:00開催)について・・・平川 新 教授から、本報告会および東北大学災害科学国際研究所の設立についての趣旨説明のあと、二つの講演があります。まず、五百旗頭真さん(政府復興構想会議・議長、防衛大学校・校長)から「東日本大震災からの復興と教訓の発信 ~我が国・世界の減災に向けて~」と題した基調講演、次に招待講演として、東京工業大学総合理工学研究科教授 翠川三郎さんの「東日本大震災からの教訓~1年で明らかになったこと~」が行われ、最後に、東北大学災害科学国際研究所の教員からの報告を行うことになっています。

<3月4日>「東日本大震災 社会資本再生・復興シンポジウム」について
2月9日、宮城県庁講堂を会場にシンポジウムが行われました。東日本大震災から約1年が経過する時期に、震災における対応や教訓、復興に向けた考え方や取り組みなど、発表や講演、パネルディスカッションを通して学び、今後の災害対応や復興に役立てていくことを目的として開催されたものでした。基調講演は、「想定外を克服するために」と題して、国土交通省国土技術政策総合研究所長の西川和廣さん、次に「巨大津波の被害実態と今後の防災・減災対策について」と題して私今村が行いました。続くパネルディスカッションは、板橋さんをコーディネートに、前女川町長 安住宣孝、東松島市消防団長 阿部賢一、河北新報社震災取材班キャップ 古関良行、宮城県土木部次長 遠藤信哉の4名のパネリストで約2時間行われました。まずは、震災直後の様子、次に、当時、最も苦労した点、さらに、復旧・復興に向けての課題について議論いたしました。当時の津波来襲状況。避難の様子、救助の実態、道路の確保、自衛隊や建設業の皆さんへの感謝、事前の協定や準備が役立った点、一方、役立たなかった点などについて紹介され充実したディスカッションとなりました。

<2月26日>NZ クライストチャーチ地震から1年
昨年2月22日昼間にニュージーランド南島の中心都市クライストチャーチ市で地震が発生しました。この地震の強い揺れで建物崩壊や液状化が発生し、甚大な被害が出ました。特に、建物倒壊による死者や行方不明者が多くなりました。今回の地震は、M6.3(Mw6.1)であり、決して大きな規模ではありませんが、クライストチャーチ中心部の直下で発生し、しかも、深さがわずか5kmと浅かったため、揺れが上下に大きくなったと考えられます。郊外では、液状化や地下水の上昇で水浸しになった住宅街もあります。クライストチャーチでは2010年9月にマグニチュード7の地震があったばかりでした。ニュージーランドではクライストチャーチ地震以降、マオリ語の キアカハ Kia Kaha(Be strong/強くあれ)を合言葉に国民が一致団結して復興に励んでいます。1年が経ちましたが、立ち退きの線引きはスピーディーにやる一方で、復興計画では、じっくり時間をかけて住民の意見を聴こうとしているようです。地元から選ばれた復興庁のトップが直接住民と対話し、住民側からも議論を前向きに検討されているようです。また、観光も少しづつ戻っているようです。南半球は夏の真っ最中、夏恒例のさまざまなフェステイバルが行われています。大聖堂広場は依然としてレッドゾーン(立ち入り禁止地域)ですが、旅行ガイドブック「ロンリープラネットの最新版にも「今、必見の都市」として紹介されました。一方、CTVビルについて、同国建築住宅庁が「建設当時の建築基準を満たしていなかった」とする報告書を発表したのを受け、復興相は、声明を出し、警察が関係者の刑事責任追及に関する検討を始めるとの見通しを示しており、検討が続いています。

<2月19日>緊急津波避難情報システムの開発について
現在の津波情報のあり方に対して、今新しい方法を模索しています。それが、携帯電話などを利用した「緊急津波避難情報システムです。個人(特定)に、その位置と津波の高さを考慮した津波避難に関する情報を提供することをコンセプトとします。・特定個人の規模は200名程度とし、顔が見えるコミュニティーとする。・位置は、事前登録とするが、将来的には、端末のGPS機能により、リアルタイムの位置情報を入手することとする。タイムラインとしては、以下を考えています。
地震発生=>緊急地震速報=>津波情報=>第一報(津波避難場所の情報)=>揺れ=>第二報(安否確認)=>錯綜=>第三報(避難終了)
3月には、実証実験を行い、早期の利用開始をめざします。

<2月12日>地域・社会での脆弱性について
先日、1986年の論文を見る機会がありました。タイトルは、「災害に対する社会システムの脆弱性」(野田隆、大阪大学人間科学年報)です。それによりますと、「自然現象は、災害(被害)の引き金であり、災害そのものを規定するのはインパクトを被る社会システムの脆弱性である。従来、災害研究では被災前の社会特性について十分な考慮はされていなかった。その理由としては;(1)被災前後(通常と非常時)のシステムに連続性がない。(2)被災後の急激な混乱を追ってしまう。(3)災害前後の社会システムの比較検討が重要である。仮説としては、-災害前のコミュニティー諸組織の在り方が発災後の対応をほぼ特徴づけている。-災害後に変化するものは全て被災前にその特徴が既に認められている。-逆に求められていないものは災害後にも変化しない・自然現象の衝撃を被る社会側の脆弱性が重要」となっています。また、脆弱性を3つのパターンに分類しています。(1)類似的脆弱性・・個人、集団、組織が持つ事前防災準備・計画、防災対策(能力)のリスク認知、(2)特殊的脆弱性・・社会システム(下位)、社会・経済、文化・歴史の特色(3)一般的脆弱性・・リスク条件、地理条件、土地利用、建物の耐震性。今回の東日本大震災で浮き彫りになったさまざまな脆弱性について、25年前、四半世紀前にすでに指摘されていたのです。

<2月5日>宮城県津波対策連絡協議会の動きについて
宮城県では、震災前から、津波対策に関して、自治体や関係機関の方に集まっていただき協議会を実施しており、平成15年には、「宮城県津波対策ガイドライン」を策定していました。このほど、今回の大震災を受けて、震災後初の津波対策協議会を開催し、津波避難指針の大幅な見直しを始めました。まず、国の調査などをもとに、東日本大震災では、指定避難所の2割が被災し、1割が避難者を収容しきれなかったことなどの実態が説明されました。津波が現行のガイドラインの想定を大幅に上回ったことになります。再び巨大津波に襲われた際に人命を守るために、避難所や避難経路の選定方法などを改訂し、市や町の防災計画の見直しにも役立てる予定です。具体的には、(1)避難対象地域(2)避難困難地域(3)避難場所(4)避難路(5)避難誘導方法(6)海岸保全施設の指定や選定方法、基本的な考え方を見直し、被災市町に統一的な津波避難計画策定指針として提示します。また、県内では平野部の55%、リアス部の48%の被災者が車で避難し、このうち平野部の65%、リアス部の33%が渋滞に巻き込まれ、多くの方が犠牲になりました。避難方法は原則として「徒歩としますが、その中でも、車による避難の位置づけや、車でも安全に避難できる道路整備などもを検討していく予定です。

<1月29日>アーカイブに関する国際合同シンポジウムについて
1月11日、仙台国際センターを会場に、東日本大震災アーカイブ国際合同シンポジウム「東日本大震災アーカイブの最前線と国境・世代を超えた挑戦」を開催しました。これは、東北大学防災科学研究拠点を中心に、ハーバード大学、総務省、東北大学附属図書館の主催で行ったものです。3月11日に発生した東日本大震災の実態や、そこからの教訓を後世に伝えるために震災の記録をアーカイブしようとする試みとして、被災地はもとより、国内外・官学民で様々なプロジェクトが立ち上がっています。これら主要なアーカイブプロジェクトが一堂に会し、それぞれの最新の取組み状況を発信しました。また、最後には、発表者全員によるパネルディスカッションが行われ、収集・整理・保存、共有化、被災地の復興、今後の活動の継続、それぞれに関する課題や問題解決の提案に関する議論が活発に行われました。7時間に及ぶ長丁場でしたが、参加したおよそ250名の方々は熱心に耳を傾けて下さいました。登壇した各機関は、今後も定期的に情報交換を行い、記録保存に、共通の枠組みを設けるなどして、連携を強化していきます。

<1月22日>「気仙沼市魚町・南町内湾地区復興まちづくりコンペ(公募)」について
現在、各地で復興のまちづくりが議論されていますが、本日、ユニークな取組を紹介致します。これは、気仙沼市のコンペです。
以下、気仙沼市のHPよりの情報です。
「古くから〈屋号通り〉や〈昭和モダン〉と呼ばれる港町繁華街の雰囲気を伝える街並みが形成され、港町気仙沼の顔、中心市街地として港町文化を発信してきた魚町・南町内湾地区の復興再生に当たり、津波からの防災と減災を考慮しつつ、全国的に注目を集めるウオーターフロントのまちづくりに向け広くアイデアを募集し、より幅広い視点から検討するためコンペを開催するものです。
宮城県は湾奥に必要な堤防の高さをTP(東京湾平均海面)プラス6.2メートルと示しているが、地元には景観が失われるなどの理由で反対の声がある。堤防を造るなど津波対策を盛り込むことが条件となるが、どの場所に、どういった形で設けるか、または別の手法をとるかがポイントになりそうだ。まちづくりのコンセプト、避難計画などを盛り込む必要があるほか、国、県などの、どの事業、交付金を使って整備するかといった財源の裏付けも必要。現実的なアイデアを求める。企業や大学、個人など応募資格は問わない」
応募意向提示期限 平成24年1月27日(金)
提出書類受付 平成24年2月20日(月)~24日(金)
入選発表/表彰 平成24年3月上旬
是非、皆さんもふるってご応募下さい。

<1月15日>北淡震災記念公園について
1995年1月17日5時46分、六甲・淡路島断層帯を震源とするM7.3の直下型地震が発生しました。淡路島北部、北淡町の野島の活断層の活動が阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)のきっかけになったとされています。地震で現れた国指定天然記念物・野島断層をありのままに保存・展示し、さまざまな角度から断層を分かりやすく解説。これが、北淡震災記念公園です。平成10年(1998年)にオープンしました。
○能島断層保存館(国の天然記念物に指定)
断層保存ゾーン 断層による様々な地形の変化をカメラやパネル、案内係の解説により、詳しく観察できます。断層の断面が見られるトレンチ展示
○メモリアルハウス
活断層の真横でもほとんど壊れなかった家を「地震に強い家」として公開しました。家の塀や花壇の煉瓦がずれた様子、当時の台所も再現しています。
毎週火曜日には『震災の語りべ』が体験談を語ります。
○その他
べっちゃないロック・モニュメント鎮魂の碑
1日平均2700名、年間67万人もの入場があり、平成23年(2011年)8月22日には入館者数が800万人目を迎えました。

<1月8日>南海トラフでの最大クラスの地震津波評価について
昨年末、南海トラフでの地震津波評価についての中間取りまとめが新聞等で紹介されました。「今後、地震・津波の想定を行うにあたっては、これまでの考え方を改め、津波堆積物調査などの科学的知見をベースに、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を検討していくべきである」とされています。
今後、この考え方に基づき、南海トラフの巨大地震対策を検討する際に想定すべき最大クラスの地震・津波について検討を進めてゆきます。東南海・南海地震では、過去に発生した地震としては、過去の資料が整理されている1707年宝永地震、1854年安政海地震、1944年昭和東南海地震、1946年昭和 南海地震など18世紀以降の地震があります。これら過去の活動に加えて、古文書調査により震度分布及び津波高を抽出整理し、その再現性を評価したうえで、地震モデルを構築します。さらに、南海トラフで発生した過去の地震の特徴やフィリピン海プレートの構造等に関する特徴などの科学的知見に基づきあらゆる可能性を考慮します。
今回の巨大地震モデルの検討においては、震源断層モデルと津波断層モデルは別々に検討することとし、震源断層モデルに対応する領域を震源域、津波断層モデルに対応する領域を津波波源域として区別します。このような検討を通じて、最大クラスの評価を行う予定です。

<1月1日>2012年を迎えて
2012年は、復興の元年になります。安全の確保、住まい、きずな、産業・暮らしの再生に向けて本格的に動き出します。安全については、沿岸部での防護レベル(レベル1)の評価は行われました。今はこれを参考に、安全レベルを考慮し、ハード、ソフトの両面からまちづくりを考えてゆく必要があると思います。また、地域での早い復興への支援として、東北大学では、震災から1周年を迎える3月11日に災害科学国際研究所を立ち上げます。今月上旬には、アーカイブ(データベース)に関する国際会議を仙台で開催します。更に、今年主に計画している研究テーマは下記の3つになります。
慶長奥州地震津波の解明
脳科学による人間の危険認知に関する基礎研究
スパコン「京」を利用した高精度予測